東京オリンピック “復興五輪” 最初の競技会場 福島の人は

東京オリンピックのソフトボールの試合が、福島市で始まったことについて、JR福島駅前では歓迎する声が聞かれた一方、新型コロナウイルスの感染が拡大する中での開催に疑問を呈する声も聞かれました。

このうち、福島市内の21歳の男子大学生は「コロナの影響で盛り下がっている雰囲気をソフトボールで盛り上げてほしいと思います。試合の中継を見たいのですが授業があって見られないので結果を楽しみにしています」と話していました。

また84歳の女性は「アスリートのことを考えると無観客であっても開催してよかったと思います。ソフトボールを見るのは好きなので、金メダル獲得を期待して応援したいと思います」と話していました。

このほか、二本松市に住む58歳の会社員の男性は「前回の五輪でのソフトボールの試合を見て感動したので、福島で行われるのなら実際に試合を見たいと思っていました。無観客開催は感染拡大防止のため仕方がないと思います。テレビの中継を見て応援したいと思います」と話していました。

一方で、市内の82歳の男性は「感染拡大している状況なので、できれば開催してほしくなかったです。また、県外から観客が来ず、さみしい感じがするので『復興五輪』になっているのだろうかと疑問に感じます」と話していました。

21歳の会社員の女性は「個人的には開催すべきではないと思っていましたが、やると決まったからには選手には頑張ってほしいので、テレビで観戦します」と話していました。

チケットが当選した人たちは…

福島市での試合が無観客となったことで、チケットが当選していた人もテレビ中継で試合を観戦しました。

福島大学の准教授沼田大輔さん(43)は、学内の教員控え室に設置されたテレビで午前9時から行われたソフトボールの日本対オーストラリアの試合を見守りました。

沼田さんは、ソフトボール競技初日の観戦チケットが3枚当選していて、今月10日に結果が発表された感染拡大に伴う再抽せんでも当選していましたが、その日のうちに無観客での開催が決まり、チケットは無効になりました。

沼田さんは、「声援や拍手などライブ感があるので会場で見ることができたらよかったなと思う一方で、やはり感染するリスクも心配で無観客でよかったという思いもあり、複雑な気持ちです」と話していました。

また、沼田さんと一緒に競技会場を訪れる予定だった同僚のウィリアム・マクマイケルさん(38)も同じ部屋でテレビ観戦しました。

カナダ出身のマクマイケルさんは、24年前に日本に移り住み、東日本大震災のあとは福島の復興状況を海外へ発信し続けていて、ことし3月に県内で行われた聖火リレーではランナーを務めました。

マクマイケルさんは、聖火リレーで使用したユニフォームとトーチを傍らに置いて観戦し、「福島のことを海外に発信する機会がなくなってしまったので、無観客での開催は少し残念な気持ちもありますがオリンピックが県内で開催されたという事実を誇りに思い、これからも前向きに福島の復興を伝えたい」と話していました。

福島『復興五輪』の旗降ろさず 貫徹を

原発事故などからの福島の復興の現状を知ってもらおうと、東京オリンピックにあわせて企画していた多くの催しが中止になった福島県観光物産交流協会は、「大会後につなげるためにも『復興五輪』の旗を最後まで降ろさずに貫徹してほしい」と訴えています。

福島県観光物産交協会では大会期間に合わせて、海外メディアを対象とした被災地ツアーのほか、競技会場での農産物の販売や、首都圏を訪れてのPRイベントなどを企画していました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてこれらの催しは中止となり、海外観光客向けに制作した県内の観光地をPRする幕も見てもらえる機会が大幅に減ってしまいました。

高荒昌展理事長は「世界の人たちの応援によりここまで復興した福島の姿を、1人でも多くの人に実際に来て見ていただきながら感謝を伝えたかったが、それができず残念です」と話しています。

一方で、コロナ禍が収束したあとに再び海外からの観光客を呼び込むため、今回のオリンピックを生かしていきたいと考えていて、「東京オリンピックの原点である『復興五輪』の旗を最後まで降ろさずに貫徹していただき、それをレガシーに大会終了後も世界中の人たちが福島をはじめ東北に足を運んでいただくことが願いであり、それが実現するように頑張っていきたい」と話していました。

「復興五輪」に違和感抱きつつ応援の漁師も

福島県の漁師の中には、震災と原発事故から10年がたっても漁業の復興が進まない中で「復興五輪」を掲げることへの違和感を抱きつつ、選手は応援したいという複雑な気持ちを抱えている人もいます。

福島県新地町の漁業者、小野春雄さんは(69)ことし3月、福島の漁業の復興を世界にPRしようと聖火ランナーとして地元を走りました。

しかし、いまだに風評の懸念が残り漁業再建の見通しが立たないことに憤りを感じ、「復興五輪」という位置づけに違和感を感じているといいます。

小野さんは「オリンピックをきっかけに世界中の人に福島県産の魚を食べてもらい安全性や美味しさを実感してもらうことで漁業の復興をかみしめるはずだったのに果たすことができず、『復興五輪』のふの字も感じられません」と話していました。

それでも小野さんは、オリンピックに出場する選手たちは応援していて、21日は自宅でソフトボールの試合をテレビ観戦しました。

小野さんは「前回の東京オリンピックのときはテレビを持っている知り合いの自宅で一生懸命日本代表の選手を応援したのが今でも鮮明に記憶に残っています。今回は無観客で日本の子どもたちの記憶に残るのか疑問はありますし、この時期の開催に違和感もありますが、少しでも日本に元気が戻るよう競技に取り組む選手たちは一生懸命応援したいです」と話していました。

福島 内堀知事「復興に向かって一歩一歩歩み続ける」

ソフトボールの試合を観戦した福島県の内堀知事は、報道陣の取材に対し「東日本大震災と原発事故を経験したこの福島の地から、東京オリンピックの競技がスタートしたことは本当に感慨深い。これから感染症対策をしっかりと講じながら、安全安心な大会となるよう、関係の皆さんと力を合わせて取り組んでいく」と話しました。

また無観客での開催としたことについては「苦渋の決断で、やはりスタンドを見て、複雑な思いもあった。残念ながら我々が望んでいた形とは異なる開催となったが、試合が福島で行われる事が国内外に発信されることで、東日本大震災と原発事故から10年が経過する福島が、復興に向かって一歩一歩歩みを続けているということが伝えられることを期待している」と述べました。

会場周辺「オリンピックより命を守れ」の抗議

東京オリンピックのソフトボールの試合が行われている福島市の県営あづま球場付近ではオリンピックの中止を訴える人たちの抗議活動もみられました。

試合が行われていた午前10時ごろ、男性3人が球場の入り口近くに「オリンピックより命を守れ」などと書かれた垂れ幕や、「中止だ!東京五輪 NO OYMPICS」と書かれたパネルを掲げ、抗議活動を行いました。

そして拡声器を使って、「大会関係者の陽性も確認されている。オリンピックで新型コロナウイルスの感染者が出たら誰が責任を取るのか」などと感染状況が悪化する中での大会開催に反対を訴えました。

抗議活動の中心となっているいわき市の69歳の男性は、「感染拡大が収まらない中で大会を開催するなんておかしい」と話していました。

また、今回の大会の理念になっている「復興五輪」についても「『復興五輪』はきれい事で、福島第一原発の処理水や廃棄物の問題など課題だらけだ。聖火リレーでもきれいに整備されたところだけを走って、なにが復興だ」と不信感をあらわにしました。

周辺では警察官や警備員が警備にあたっていましたが、球場のある公園の外に出るように促し、男性たちは敷地の目の前にある公道から抗議活動を続けていました。