カブトムシの謎に迫る!

カブトムシの謎に迫る!
人気の昆虫、カブトムシ。夏休みの自由研究のテーマにする人もいると思います。
謎がたくさんあって、それを解き明かそうと、観察に熱中している人がいます。

問題に挑戦!

まず、問題はこちら。
問題
図は、角を除いた日本のカブトムシのオスです。角を描き加えて、カブトムシのオスの姿を完成させなさい。
(早稲田大学高等学院中学部 2015年 改題)
答えを教えてもらうのは、2021年4月に、権威ある生態学の国際専門誌に掲載された、カブトムシについての論文を書いた人です。
書いたのはこの2人で…教えてもらうのは左の人、小学6年生!論文の第1著者です。
どんな研究をしているのか、話を聞きました。
埼玉県の小学6年生、柴田亮さん。
幼稚園のころから、カブトムシをとりに行ったり、自宅で育てたりしているそうです。

柴田さんに、問題のオスの角を、描き加えてもらいました。
柴田さん
「2本の角が生えていて、1本は短いです。もう1本は、えさ場やメスを取り合うときにほかのオスと戦うのに使う武器みたいなものです。長い角を持つと、すごく暴れて飛ぼうとします。短い角をつかんであげると、おとなしいです」

シマトネリコには昼間もカブトムシが…なぜ?

柴田さんの研究のテーマは、シマトネリコという木ではカブトムシが昼間も活動することについて。
実はこれ、常識を覆すことなんです。

一般的に、カブトムシは夜行性。
昼間は落ち葉や木の下に隠れていて、日が沈むと動き出します。
主な住みかは、クヌギやコナラといった雑木林です。

一方、東南アジア原産のシマトネリコは、近年、街路樹や庭木として日本各地で増えています。

柴田さんは、自宅の庭にあるその木で昼間、カブトムシを見つけました。
柴田さん
「やっぱり、すごい不思議でしたね。カブトムシは夜行性だと知っている人ならたぶん、あの光景を見たら、すごい不思議に思うんじゃないかと思います」
柴田さんは、それを数えて、記録を取りました。
なぜ、そうしようと思ったのでしょうか。
柴田さん
「最初は、インターネットなどで、シマトネリコには昼間も集まる理由を調べていたんですけど、まだわかっていないことらしくて。やっぱりこの謎を解き明かすためには、自分で調べるしかないと思って、観察を始めました」
こちらが観察1年目の記録です。
日時と天気、オス・メスの数、それにカブトムシの様子がメモしてあります。

記録を取ってみて、何がわかりましたか?
柴田さん
「夜に集まったカブトムシが、シマトネリコだと昼間も半数近く残っていたことです」
半数近くというのは、柴田さんにとっては、思ったより多かったですか?
柴田さん
「何もわかっていなかったので、純粋にデータがわかって、『半数近くも残っているんだ』と」

研究者に尋ね、観察を深める

しかし、昼間もいる「理由」はわからなかった柴田さん。
カブトムシの研究者に、メールで質問することにしました。
それが、論文の共同著者になっている、山口大学の小島渉さんです。
2021年4月に発表された論文は、柴田さんが行った、2019年と2020年の観察をまとめたものです。

昼間も活動するカブトムシがいることは、一部では知られていましたが、柴田さんがすごいのは、記録を取って、そこから読み解いていることだといいます。
小島さんからのアドバイスも受け、2020年の夏は、162匹のカブトムシに印でナンバリングして、個体の動きを把握することを目指しました。
毎日、シマトネリコに来たかどうかを、1匹1匹チェック。
動きのパターンがわかれば、昼間に活動する理由に迫れるかもしれないと考えたのです。
柴田さん
「例えばオスの1番は、まず左から4つ、7月25日から28日まで点が打ってあります。『いた』ということです。その後1回、間が空いているのは、カブトムシが来て、どこかに行って、戻って来た、ということです」
さらに、思いがけず「死」にも直面したといいます。
柴田さん
「1回個体が確認されて、次の日に見たらカラスに食べられていて、死体が確認されたということがありました。本来、夜行性だったら食べられなかったはずのカブトムシが、シマトネリコが生えていることによって、カラスに食べられてしまうということもわかりました。それが、人間が、そこにもともとなかった木を植えると、生き物の生態を変化させてしまうんじゃないか、という考えのきっかけになっています」
「記録を取っていくと、その記録から、さらに疑問がわいてくることもあります。観察のなかで気になったことを、もっと調べてみたいです」

ただ知りたい!研究は続く

柴田さん、2021年は、新たな観察計画を立てています。
柴田さん
「庭のシマトネリコに集まるカブトムシは、最初の1匹がメス。そのほかのカブトムシはシマトネリコのにおいで来ているのか、1匹目のメスが仲間をフェロモンで呼んでいるのか、気になるので確かめたい」
そういうの、自分で考えるんですか?
柴田さん
「自分で思いついたことです」
最後にこの質問。
柴田さんの目標は何ですか?
柴田さん
「やっぱり、どうしてシマトネリコには昼間もカブトムシが集まっているのかを調べて、実際に『こうだから』と証明したい。僕が、ただ知りたいだけです」
柴田さんは、毎日観察して、結局わからなかったのに、「もっと疑問がわいてきた」とも話していました。
諦めるどころか、謎を解き明かしてみせようと、自分で手法を考えて、観察して、記録するその姿勢、本物の科学者のようですよね。

柴田さんの研究は、まだまだ続きそうです。
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