明石歩道橋事故から20年「安全と安心は風化させてはいけない」

兵庫県明石市の歩道橋で花火大会の見物客11人が亡くなった事故からきょうで20年です。当時2歳の息子を亡くした父親は「安全と安心は風化させてはいけない。皆さんにいま一度、安全について考える原点の日にしてもらいたい」と訴えています。

平成13年7月21日、兵庫県明石市の歩道橋で花火大会の見物客が混雑のなか折り重なって倒れ、子ども9人を含む11人が亡くなり、およそ250人がけがをしました。

神戸市の下村誠治さん(63)は、当時2歳の次男 智仁ちゃんを亡くしました。

下村さんは歩道橋の上が混雑していて身動きがとれず身の危険を感じたため、智仁ちゃんを手すりの奥に立たせ、みずからの体を盾にして守っていましたが、はね飛ばされて転倒してしまい、智仁ちゃんは折り重なった人の下敷きになったということです。

すぐに助け出しましたが意識はなく、救急車による病院への搬送にも、およそ1時間かかったということで、「警備計画は十分に検討されていたのか」と強い憤りを感じてきました。

この事故をめぐっては、花火大会を主催した明石市の職員や雑踏警備にあたった警察官など、合わせて5人が業務上過失致死傷の罪に問われ、有罪判決が確定しています。
下村さんはこの20年を振り返って、「裁判のなかで事故の再発防止を訴え、そのために真実を明らかにしようと取り組んできました。私の中では時が止まったままで、事故現場に子どもを置いてきているような気持ちでいます。時間がたてば社会のなかで事故は風化していくと思いますが、安全と安心は風化させてはいけない。皆さんにいま一度、安全について考える原点の日にしてもらいたい」と訴えています。

明石市 教訓伝える取り組み 全職員を対象に研修実施

兵庫県明石市の歩道橋で花火大会の見物客11人が亡くなった事故から20年となり、事故のあとに市役所に入った職員が全体の半数を超えました。

市は今月から全職員を対象にした研修を実施し、教訓を伝える取り組みを始めています。
研修は、およそ3000人いる全職員を対象にオンラインで行われ、教材は市の総合安全対策室の担当課長 上田晃司さんが作成しました。

上田さんは歩道橋事故の直前の平成13年4月に明石市役所に入り、当日は歩道橋の近くで警備にあたっていました。

事故について上田さんは「近くにいて橋の上が混雑していることに気付いていたのに、事故につながるとは思わなかった自分の力のなさを感じました。被害者、ご遺族には本当に申し訳なく思います」と振り返ります。

明石市では、同じ年の12月に人工の砂浜が陥没し、砂に埋まった当時4歳の女の子がその後、亡くなる事故も起きています。
作成した教材はおよそ60枚のスライドで、写真を使いながら2つの事故が起きたいきさつと、市職員としてどのように市民の安全を守る行動を取るべきかについてまとめています。

上田さんは、みずからコメントを考え、事故後に採用された職員に対しては、「事故は過去の職員が起こしたものと思っていませんか」と問いかけたうえで、「あなたも事故を起こした明石市の職員です」と訴えかけています。

研修を受けた新人職員のひとりは、「事故は明石市という組織が起こしたものとして、私たち自身が気をつけていかなければならないと思いました」と話していました。

上田さんは「市民の命を守る、生活を守ることが市役所職員の責任としてあることを重く受け止めてほしい」と話していました。