使用済み漁網 企業連携で再生を 海洋プラごみ削減へ30社参画

環境汚染を引き起こす海のプラスチックごみの削減につなげようと、これまで一部しかリサイクルされてこなかった使用済みの漁網を企業連携によってかばんなどに再生しようという取り組みが始まることになりました。

この取り組みは海のプラスチックごみの問題の解決を目指して去年、設立され、製造から販売、リサイクルまでプラスチックに関わる企業およそ30社が参画している一般社団法人「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」と日本財団が始めます。

漁網はロープと合わせて国内の海岸に漂着するプラスチックごみのうち重量比で4割を占める一方、団体によりますと埋め立てた方がコストが安いことなどからリサイクルされるものは一部にとどまり放置されて海に流出するケースもあるということです。

今回の取り組みでは、北海道にある会社が近隣の漁協などから集めた使い終わった漁網を東京のリサイクル会社が高品質の「ペレット」に加工し、これを材料にして別の会社が布やボタンをつくります。

20日都内で開かれたイベントでは、この布やボタンを使って兵庫県の工業組合がつくったかばんがお披露目され小泉環境大臣など出席者が出来栄えを確認していました。

来年以降は北海道全域から使用済みの漁網を回収し、道内で廃棄されている量の半分以上にあたる年間1300トン分をリサイクルしたいとしていて、「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」の堀口瑞穂代表は「漁網を繊維以外のものにも再生し、活用することを目指したい」と話していました。

「漁具の幽霊」生態系への深刻な影響も

環境省が平成28年度に全国の10地点で海岸に漂着したプラスチックごみを調べたところ「漁網・ロープ」が全体の42%を占め、「その他の漁具」と合わせると45%にのぼります。

海に流出した漁網などは長期間、海を漂い続けることから「漁具の幽霊」を意味する「ゴーストギア」と呼ばれ、ウミガメなどが体に絡まって身動きが取れなくなったり、呼吸ができなくなったりして死んでしまうおそれがあります。

環境NGOの「WWF」=世界自然保護基金は、世界の海では7種すべてのウミガメ類と海洋哺乳類のうち66%の種、それに海鳥の50%の種が「ゴーストギア」など、海のプラスチックごみの被害を受けているという研究結果を紹介しています。

「WWFジャパン」気候エネルギー・海洋水産室の浅井総一郎オフィサーは「『ゴーストギア』が海の生態系に与える悪影響は非常に大きいにもかかわらず、まだ重大な問題だととらえられていない。海への流出を防ぐとともに、使い終わった漁具を資源として再利用するなど適切に処理することが必要だ」と話していました。
プラスチックごみはいったん海に流出すると回収するのは難しく、クジラやウミガメなどが誤って飲み込んでしまい死んでしまうおそれが指摘されています。

また、長期間、海に漂うと波の力や紫外線の影響などで細かく砕けて大きさが5ミリ以下の「マイクロプラスチック」になります。

「マイクロプラスチック」は有害物質が付着しやすいうえ、魚や貝などの体内に入ってしまう事例も確認されていて生態系への深刻な影響が懸念されています。

5年前に開かれた世界経済フォーラムの年次総会で、イギリスの財団は世界全体で年間に少なくともおよそ800万トンのプラスチックごみが海に流出していると報告しました。

そして、何も対策を取らなければ2050年には海の中のプラスチックの重さが魚の重さを超えるという試算も合わせて出されました。

海のプラスチックごみを減らすにはプラスチックの生産・使用量を減らすとともにいかにリサイクルを進められるかがカギを握ります。

企業連携で漁網を再生へ

漁網は重くかさばるため運搬コストがかかることや、さまざまな素材のものがあり、分別が難しいことなどが課題となってリサイクルが進んでいないとされています。

例えば漁業が盛んな北海道では、去年3月までの1年間にはおよそ1980トンの漁網がごみとして出されましたが、道によりますとこのうちリサイクルされたのは16%ほどだったということです。

こうした中でも、北海道厚岸町の会社は近隣の漁業者から使い終わったプラスチック製の漁網を回収し「ペレット」と呼ばれる粒状の素材に加工して販売してきました。

しかし、漁で使っているうちに付着してしまう細かい物質を完全に取り除くのが技術的に難しく、ペレットの強度や品質にどうしてもばらつきが出てしまうため販売先が限られていたといいます。

今回の取り組みではその課題を企業連携=アライアンスによって解決しようとしています。

取り組みに参加している東京のリサイクル会社は特殊な洗浄方法を開発したうえで、一般的なものより目の細かいフィルターを使い、それほど時間をかけずに漁網から付着物を取り除く技術を確立。高品質のペレットに加工することに成功しました。

そして、団体の紹介でリサイクル素材の利用に関心を持っていた大阪の繊維関連企業などとつながり、今回のかばんづくりが実現しました。

来年には、札幌市のリサイクル企業もこの取り組みに参画することになっていて、北海道全域での漁網の回収、そしてリサイクルに取り組むことになっています。

東京のリサイクル会社「リファインバース」の玉城吾郎高機能樹脂事業部長は「使い終わったものをすぐに回収できる体制を構築できれば海に漂う漁網や漁具を減らせると思います。どんどん事業を広げて、いつか日本の漁網をすべてリサイクルできるように取り組んでいきたい」と話していました。