ワクチン接種 “正しい情報で判断を” 住民たちが支え合う団地

政府は希望する高齢者のワクチン接種を今月中に完了させたいとしていて、1回目の接種を受けた高齢者は8割を超えました。

一方で、副反応への不安などから接種をためらう人もいて、都内の団地の住民たちでつくるボランティアグループは、勉強会や相談会を開いて、正確な情報を届ける取り組みを続けています。

取り組んでいるのは、東京 練馬区の光が丘団地でボランティア活動を行う住民グループです。

ワクチン接種に備え、定期的に医師や行政の関係者などを団地に招いて、勉強会を開いてきました。

また、週に数回、相談会を開き、自分で接種の予約をするのが難しいという人のために予約を代行しています。

今月15日も3人が訪れていました。

このうち70代の女性は、2年前に別の予防接種を受けた際に熱が出たため、新型コロナのワクチン接種に不安があったということですが、ボランティアグループの住民に話を聞いてもらうことで和らいだといいます。

女性は「身近な地域の人なので相談しやすく、1回目の接種を受けるときにも医師に相談するようアドバイスをもらいました。1回目は無事終わり、2回目の予約も手伝ってもらってとても助かります」と話していました。

体調が悪かったり、足が不自由だったりして勉強会や相談会に参加できない人も少なくないことから、自宅を訪問するなどしてワクチンの情報を提供する取り組みも続けています。

今月13日には、土用のうしの日を前にうなぎ料理の会を開き、集まった高齢者に区内のワクチン予約の状況について情報提供したほか、1人暮らしの高齢者の家にうなぎを届けて接種の有無を尋ねました。

ボランティアグループの会長を務める小山謙一さん(79)は「この団地はおよそ1万2000世帯のうち、3分の1ほどが高齢者世帯です。高齢者の感染は重症化するおそれがあるのでワクチンは重要だと思っています。ワクチンについて正しく理解して接種を判断してもらえるようにしたいです」と話します。

しかし、ボランティアグループのメンバーの中にも接種しないという人がいるといいます。

このうち70代の女性は、数年前に心臓の手術をしたほか、アレルギーが原因のぜんそくの持病があり、かかりつけの医師から新型コロナのワクチンを接種するのは問題ないと言われたものの不安を感じて接種を控えているといいます。

また、80代の女性は歯科医から「ワクチンは受けないほうがいい」と言われたということです。

別の70代の女性は「とにかく注射が苦手です。もし自分が感染して周囲に迷惑をかけたらどうしようという気持ちもありますが、感染予防には気をつけているので大丈夫だと思っています」と話していました。

団地では先月、ワクチンに関する誤った情報が書かれたチラシがポストに投かんされるという出来事もありました。

小山さんは団地で暮らす高齢者に不安が広がったと感じています。

小山さんは「正確な情報にアクセスするのが難しい人もいて、不安を抱え込んでしまう人も少なくありません。ワクチン接種はあくまでも本人の判断で受けるものなので、正しい情報を伝える活動を続けていくしかないと思っています」と話していました。

専門家「判断できる環境必要」

公衆衛生学が専門で、国のクラスター対策班のメンバーでもある新潟大学大学院の菖蒲川由郷特任教授は「ワクチンの影響で持病が悪化するのではないかと心配したり、副反応を不安に思ったりする高齢者は、自分が診療を行っている病院の外来にも多く訪れる。新型コロナに感染した場合、持病がある人こそ重症化のおそれがあるので接種を検討してほしいし、自己判断で接種を控えるのではなく、かかりつけの医師に相談してほしい」と話しています。

また「『デマ』などさまざまな情報があふれる中で、高齢者が正しい情報に基づいてワクチンのメリットとリスクをてんびんにかけ、接種するかどうかを判断できるような環境を作っていくことも重要だ」と話していました。