【南アフリカ 大規模暴動 背景は】コロナ感染拡大で経済格差

南アフリカで1週間余りにわたって続いた大規模な暴動で、政府は収束に向かっているとしたうえで、被害が大きい地区に対し食料などの支援を進める方針です。暴動の背景には新型コロナウイルスの感染が拡大する中、貧困層の暮らしが一層困窮していることもあり、根深い経済格差が浮き彫りとなっています。

南アフリカでは今月7日、ズマ前大統領が在任中の汚職疑惑に関連して収監されたことに対する抗議デモが起き、その際、参加者の一部が暴徒化し、これをきっかけに商店での略奪行為や倉庫への放火などが各地に広がりました。

ラマポーザ大統領は16日、国民向けの演説で、これまでに212人が死亡したほか、ショッピングモール161か所、倉庫と工場合わせて19か所などが被害にあったと明らかにしました。

そのうえで、事態は収束に向かっているとして、被害が大きい地区に対し、食料などの緊急支援を進める方針を示しました。

今回の暴動は、南アフリカで少数の白人が大多数の黒人を支配したアパルトヘイト=人種隔離政策が撤廃され、1994年に民主化を成し遂げて以降最大規模とされています。

ラマポーザ大統領は暴動は組織的に計画されたものだとの認識を示し、扇動した者に対する徹底した捜査を行うとしています。

一方で、暴動が拡大した背景には新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、外出制限で仕事ができなくなるなど国民の半数近い貧困層の生活が一層困窮していることも指摘されていて、民主化以降も続く世界最悪レベルの経済格差が浮き彫りとなっています。

暴動で医薬品 食料 ガソリン供給の不安

暴動の影響は市民生活にも及んでいて、被害の大きかった地区では食料や医薬品と共に、ガソリンの供給不安も起きています。

ヨハネスブルクの北東部にあり、略奪が特に激しかった地区では多くのガソリンスタンドも略奪の被害にあい、中には、依然、再開のめどが立っていないところもあります。

また、暴動が激しかった南東部のダーバン近郊にある国内最大の製油所は、周辺の道路が封鎖され、必要な原材料が途絶えたことから今月13日、操業を一時停止すると発表し、供給も不足しています。

こうしたことから、営業を続けているガソリンスタンドも一部で、給油量を制限するなどの対応をとっていて、長い行列ができるなど影響が出ています。

ワクチン接種会場 破壊され閉鎖

南アフリカは、アフリカで最も新型コロナウイルスの感染が深刻で、6月以降は第3波が広がっています。

政府は7月に入って、ワクチンの接種対象を50歳以上の国民に広げて接種を急いでいますが、暴動によって、多くの接種会場が破壊されたほか、スタッフの安全が確保できないなどとして閉鎖されていて、ラマポーザ大統領は接種計画に深刻な影響が出ているとしています。

このうち政府と共に接種を進めている国内の大手薬局チェーンは106か所の会場が閉鎖されたと発表しています。

ヨハネスブルク南部のソウェト地区にある大型ショッピングモールの中にも接種会場が設けられていましたが、7月12日にショッピングモールが群衆の略奪にあい、会場は大きな被害を受けました。

会場では、ワクチン接種に使われた注射器が放置されたまま残されていて、再開のめどは立っていません。