「ワクチンパスポート」発行テスト 26日から申請受け付け

海外に渡航する人のために新型コロナウイルスのワクチン接種を終えたことを証明する、いわゆる「ワクチンパスポート」の申請の受け付けが10日後に始まるのを前に、窓口となる自治体で発行テストが行われています。海外でワクチンの接種証明書を提示すると検疫で待機を求められる期間が短縮されることなどがあり、政府は渡航する人のために住民票がある市区町村で今月26日から申請の受け付けを始めます。

今週は全国の自治体で証明書の発行テストが行われていて、このうち東京 江東区では最終日の16日も職員たちが1つ1つ手順を確認していました。

職員たちは旅券のパスポートと接種済証などの書類を確認し、VRS=ワクチン接種記録システムと照会したうえで証明書を印刷していました。

申請は原則、郵送で受け付けますが、緊急の場合には窓口でも受け付ける予定だということです。

江東区では15日までに高齢者のおよそ7割に当たる8万5000人余りが2回の接種を済ませていて、当面は海外旅行に出かける高齢者などからの申請を想定しています。

江東区新型コロナウイルスワクチン接種推進室の根本将司課長は「証明書についての問い合わせも増えている。国内の民間施設などで利用するためのものではなく、あくまで海外渡航が目的だということをしっかり周知しながら準備を進めたい」と話しています。

「ワクチンパスポート」 導入の背景は

ワクチン接種証明書、いわゆる「ワクチンパスポート」は当面、書面で交付されますが、政府は将来的にスマートフォンなどで表示できるようにする方針です。

緊急の場合は窓口で申請すれば、その日のうちに発行することを検討している自治体もあるということです。

今回、政府が導入を決めた背景には入国する人が提示した場合に検疫での措置を緩和する国などが増えていることがあります。

例えば、EUでは今月から域内共通の電子証明書の運用が本格的に始まり、提示した人は隔離や検査が原則、免除されます。

日本政府は今回の証明書は海外に渡航する人のためのものだとしていて、申請時には旅券のパスポートの提示を求めたうえで、渡航で必要とする人以外からの申請は原則、受け付けない方針です。

一方、経済界からは経済の立て直しのために活用を求める声も出ています。

経団連は先月下旬、政府に対し証明書を提示した人の飲食代や利用料を割り引きしたり、イベントの人数制限を緩和したりすることなどを提言しました。

また、海外ではイスラエルなどがスポーツジムやイベント会場での提示を求めています。

一方、渡航目的以外で使用することについては接種証明書を持っていない人への差別や偏見につながりかねないと懸念する声が出ています。

アメリカは接種を受けなかった人が不利益を受けるおそれがあるとして、連邦政府としての証明書の導入に否定的な考えを示しています。

厚生労働省は「ワクチン接種はあくまで希望する人が対象で、そもそもアレルギーなどを理由に接種を受けられない人もいる。現時点で接種証明書を経済活動に利用することは検討していない」としています。

官房長官「国内利用は想定していない」

加藤官房長官は午後の記者会見で「今回、発行する接種証明書はわが国から海外に渡航する際に防疫措置の緩和などを受けることを目的とするものであり、市区町村においてもこうした目的に沿ったものであるかどうか確認のうえ発行することになっている。現時点で、接種証明書の国内利用は想定はしていない」と述べました。

そのうえで「ワクチンは、国民の皆さんがみずからの判断で接種していただくもので、接種の強制や接種の有無により不当な差別的扱いを行うのは適切ではないということはこれまで申し上げてきた」と述べました。

そして「ワクチンの感染予防効果については、海外では一定の効果を示す報告が見られるが、引き続き情報収集をしている段階だ。接種を受けた事実をどのように考えていくかは、こうしたことを踏まえた検討が必要だ」と述べました。