「感染が急拡大」早期の第3波超えも 都モニタリング会議

東京都のモニタリング会議で、専門家は「都内では感染が急速に拡大している」と指摘しました。現在の増加比が続くと、4週間後には、7日間平均が2400人を超え、変異ウイルスの影響などで感染拡大が加速すると、早期に、年明けの第3波を超えると強い懸念を示しました。

会議の中で専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、
▽14日時点でおよそ817人となり、
▽およそ625人だった1週間前の7月7日時点の1.31倍になりました。

新規陽性者数の増加比は継続して上昇していて、専門家は「感染が急速に拡大している」と指摘しました。

また、現在の増加比が続くと、
▽2週間後の7月28日には、7日間平均が今の1.72倍のおよそ1402人となり、
▽4週間後の8月11日には、今の2.94倍のおよそ2406人になると分析しました。

都外に住む人が、都内で行った検査で陽性になったケースを除くと、年明けの第3波のピークは1月11日のおよそ1816人で、これを大きく越えることになります。

さらに専門家は、人の流れの増加や感染力が強い変異ウイルスの影響で、増加比がさらに上昇すれば感染拡大が加速し、より早く第3波を超えるとして強い懸念を示しました。

一方、14日時点の入院患者は、1週間前の7月7日より350人増えて2023人となり、6月下旬の1200人台から、わずか3週間で2000人台に急増したと指摘しました。

重症の患者は54人で、先週から8人減ったものの、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

そのうえで、重症患者は、新規陽性者数や入院患者数の急増から遅れて増加する可能性があり、この状況が続けば、医療提供体制がひっ迫の危機に直面すると強い危機感を示しました。

都内繁華街の人出は減少 “一定の協力得られている”

モニタリング会議では、都内7か所の繁華街の人出が、緊急事態宣言の期間に入った7月12日からの3日間で、夜間は6.3%、昼間は2.3%、それぞれ減少し、一定の協力は得られていると報告されました。

これについて、会議に出席した国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は「人流が十分に下がる状況が続き、今から2週間後あたりで新規陽性者数がピークを越していくことを期待したい。今からできることはとにかく人流を下げることだ」と述べました。

東京都医師会 猪口副会長 “五輪で盛り上がり会食が心配”

モニタリング会議のあと、東京都医師会の猪口正孝副会長は、今後の医療提供体制について「感染とオリンピックとの関係で言えば、今流行しているのは若年、中年層だということで、オリンピックでみんなで盛り上がって会食したり集まったりすることで感染が広がることを心配している」と述べました。

また「梅雨があけてかなり暑くなってくると、熱中症の危険性が高まる。感染症も熱中症も医療提供体制としては『急性期』が担うところで、同時に起きると大変だ。両方とも予防できるので気をつけていただきたい」と述べました。

小池知事 “五輪 安心安全な大会にすべく準備”

都内で感染が急拡大する中、オリンピックの開幕が来週に迫っていることについて、記者団から「オリンピックを開いて大丈夫かという懸念もあるが、見解をうかがいたい」と質問された小池知事は「各国のアスリート、関係者は、安心安全な大会にすべく総合的な方法で受け入れを行っている。危機管理の観点からも、さまざまな点で準備を進めている」と述べました。

そのうえで「ワクチンの接種と感染防止対策を進めていく。この2つで対応していくということになろうかと思う。皆さんには、家で、そしていつものご家族で、オリンピックを応援していただきたい」と述べました。

都内 インドで確認「L452R」変異ウイルス 陽性率21.5%

東京都は、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスかどうかを調べるスクリーニング検査の結果、今月4日までの1週間の陽性率は21.5%となり、前の週より6.8ポイント上昇しました。陽性率は3週連続で上昇しています。

また、今月11日までの1週間では速報値ながら陽性率は27%を超えていて、さらに拡大しています。

専門家は、イギリスで見つかった「N501Y」に変異があるウイルスよりも早いペースで陽性率が20%を超えていると指摘しました。

そのうえで「陽性率の上昇ペースから見てもL452Rの変異があるウイルスが現在、市中に広がりつつある。今後もこのウイルスへの置き換わりが急速に進むことが懸念されるため十分警戒する必要がある」と指摘しました。

モニタリング会議で示された分析結果

15日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、14日時点で7日間平均が817.1人となり、1週間前の7日時点の625.4人よりおよそ191人増加しました。

前々回のモニタリング会議では専門家が「今月14日には1日およそ724人となる」と予測しましたが、その予測をおよそ90人上回っています。

増加比は前の週のおよそ131%で、前回よりも7ポイント上昇し、専門家は「感染が急速に拡大している」と指摘しています。

今月12日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、
▽20代が30.9%でした。
20代は、前の週に続いて30%を超え、最も多くなりました。
次いで、
▽30代が20.4%、
▽40代が18.3%、
▽50代が12.1%、
▽10代が6.8%、
▽10歳未満が4.3%、
▽60代が4.2%、
▽70代が1.9%、
▽80代が0.9%、
▽90代以上が0.2%でした。
50代以下で全体のおよそ90%を占めています。
中でも20代はことし5月以降、30%前後を推移しています。
一方、65歳以上の高齢者は、今週は213人で前の週より11人減り、割合も1.4ポイント減って4.1%でほぼ横ばいでした。

感染経路が分かっている人では、
▽同居する人からの感染が53.4%と最も多く、
次いで、
▽職場が20.1%、
▽会食は7.2%、
▽高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が6.2%でした。
今週は、職場での感染が前の週から1.7ポイント増えました。
また、会食での感染は今週も50代以下のそれぞれの世代で発生していて、専門家は「連休や夏休み、それにオリンピック観戦などでの飲み会は、オンラインを活用するなどの工夫が求められる。特に、ふだん会っていない人との会食は避ける必要がある」と指摘しています。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路が分からない人の7日間平均は、14日時点で502.0人で、前の週からおよそ118人増え、5週連続して増加しています。

また、増加比は、14日時点で130.8%と前回から3.2ポイント上昇し、6週連続して増加しました。

専門家は「第3波では増加比が120%を超えたあと急激に感染が再拡大しており、今後の動向に十分警戒する必要がある」と分析しました。

そのうえで「さらなる感染の拡大を防ぐためには感染経路が分からない人の増加比をさらに低下させる必要がある。人の流れの増加を抑制するとともに、感染防止対策を徹底することが必要だ」と警戒を呼びかけました。

感染経路が分からない人の割合はおよそ62%と、前の週と比べて横ばいでした。

年代別では、20代から40代、そして60代で60%を超えています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査でいつ、どこで感染したのか分からないとする陽性者が増加している。速やかに濃厚接触者の検査を行う体制を強化することが必要である」と指摘しています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は14日時点で7.2%となり、前の週の今月7日時点から1.1ポイント上昇しました。

入院患者は、14日時点で2023人と今月7日の時点より350人増加しました。

専門家は「医療機関はおよそ1年半にわたり新型コロナウイルスの患者の治療に追われている。現在はワクチン接種にも多くの人材を充てており、さらに負担が増している」と指摘しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ85%を占めていて、専門家は「およそ1か月前の65%前後から上昇傾向だ」と分析しています。
年代別で最も多いのは50代でおよそ21%、次いで40代のおよそ20%でした。
また、30代以下も全体のおよそ33%を占めています。

専門家は「6月以降、若年、中年層を中心とした新規陽性者数の急速な増加に伴い、入院患者も急増している。この状況が続けば若年・中年層の中等症患者が増加し、遅れて重症患者が増加する可能性がある。このことを踏まえた入院医療体制の強化が必要だ」と呼びかけています。

都の基準で集計した14日時点の重症患者は今月7日時点より8人減って54人でした。男女別では、男性41人、女性13人です。

また年代別では、
▽70代が17人と最も多く、
次いで、
▽60代が13人、
▽50代が12人、
▽40代が6人、
▽80代と20代がそれぞれ2人、
▽30代と10歳未満がそれぞれ1人でした。

専門家は「今週は10歳未満と20代、30代でも新たな重症例が発生している。肥満や喫煙歴がある人は若年であっても重症化リスクが高い」と指摘しました。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は14日時点で183人で、7日時点と同じでした。
14日時点で陽性となった人の療養状況を今月7日時点と比べると、
▽自宅で療養している人は658人増えて1841人、
▽都が確保したホテルなどで療養している人は241人増えて1696人、
▽医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は255人増えて1304人と、
すべて増加しています。

「療養が必要な人」全体の数は1504人増えて14日時点で6864人となりました。

専門家は「依然として高い水準で推移している。感染性の高い変異株の影響や新規陽性者の年齢構成などを踏まえて、急速な感染拡大に応じた入院医療のほか、ホテルや自宅での療養の危機管理体制の準備が必要だ」と指摘しています。

また、今月12日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した16人が亡くなりました。このうち11人は70代以上でした。