「黒い雨」訴訟 勝訴の住民ら “広島市は上告断念を”申し入れ

広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所が14日、原告全員を法律で定める被爆者と認める判決を出したことを受けて、住民らは15日、広島市に対し最高裁判所に上告しないよう申し入れました。

原爆が投下された直後に降ったいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと広島市や周辺自治体に住む76歳から97歳の住民やその遺族84人が訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所は14日、1審に続いて全員を被爆者と認め、広島市や広島県に対し被爆者健康手帳を交付するよう命じました。

これを受けて、原告の住民や弁護士らが15日、広島市の原爆被害対策部の河野一二部長に、最高裁判所に上告しないよう求める市長宛ての申し入れ書を手渡しました。

原告団の竹森雅泰弁護士は「被爆地広島の首長として上告せず『黒い雨』被爆者を救済すべきだ」と述べました。

これに対し、河野部長は「原告住民の声をしっかりと国に伝え協議していきたい」と応じました。

要望のあと、高野正明原告団長は「市が上告しないことこそが私たちの願いであり、判決を受け入れてほしい」と話していました。

広島県 湯崎知事「県としては『上告したくない』と思っている」

広島高裁の判決について、広島県の湯崎知事は14日「今回の判決は黒い雨を体験して苦しんでいる方々の切実な思いが第2審でも認められたものと受け止めている。すべての黒い雨体験者を救済するという観点で、厚生労働省と広島市など関係機関と協議しながら判断したい。県としては『上告したくない』と思っているので、まずは厚生労働省に考えを伝えていきたいし、それを踏まえて市と国と協議しながら最終的な対応を決めていきたい」と述べました。

広島市 松井市長「黒い雨地域の拡大目指す思いで協議に」

広島高裁の判決について広島市の松井市長は14日「心身に苦しみを抱えて来られた黒い雨体験者の方々の長年の切なる思いが、第1審に続き認知いただけたものと受け止めている。今後の対応については、県や厚生労働省と決めていくことになるが、本市としては、体験者の方々の長年の切なる思いと、黒い雨降雨地域の拡大を目指す本市の思いを訴える立場で、今後の協議に臨みたい」というコメントを出しています。

日本被団協「判決に従う政治的決断を求める」

全国の被爆者団体で作る日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会は、談話を発表しました。

この中で、判決について「私たち被爆者が求めてきた『ふたたび被爆者をつくるな』の願いに応えるものだ」と評価したうえで、菅総理大臣と田村厚生労働大臣に対し「事務方に任せず、判決に従う政治的決断をすることを求める」として、上告しないよう求めています。

そのうえで「核兵器禁止条約が国際法として発効したいま、国・厚生労働省は被爆者援護施策の抜本的見直しを迫られている。『原爆被害を狭く、小さく、軽く』見ることをやめ、原爆被害の実相に応える施策へと変えるべきだ」と訴えています。