社会

ワクチン接種 不安あおる誤情報やデマ どう対処する?

新型コロナウイルスのワクチン接種が進む一方、ワクチンを打つことに不安感や疑問を持つ人も少なくありません。
SNSを中心に、根拠のない情報やデマが見られ、拡散されています。こうした誤った情報に対処するにはどうしたらいいのか。
15日、対策について考えるシンポジウムがオンラインで開かれました。
大手インターネット事業者が、誤った情報を否定し、科学的根拠のある情報を提供するために行っている対策などを紹介しました。

“ツイッター投稿数 この4か月で8倍に”

シンポジウムでは、国際大学の山口真一准教授がワクチンに関するツイッターの投稿数はことし4月から今月にかけて8倍に急増し、デマや根拠のない情報も増えていると指摘しました。

ワクチンを打つことで「不妊になる」とか「遺伝情報が書き換えられる」などといったデマが広がっている一方、メディアが真偽を検証するファクトチェックを行った記事を発信することでデマを否定する情報が広がったケースを紹介し、正しい情報を一元的にまとめた発信が重要だと強調しました。

続いてインターネット事業者が取っている対策を紹介し、ツイッターの担当者は新型コロナに関して誤解を招く投稿には「ラベル」と呼ばれる目印をつけ、返信やリツイート、「いいね」ができなくなる仕組みを導入していると紹介しました。

また、LINEの担当者は国や自治体の公式アカウントからの情報を利用者に直接送り、正確な情報に触れられるようにしていると報告していました。

忽那教授「厚生労働省など正しい情報源から情報を」

ワクチンの情報について、感染症が専門でネットでの情報発信をしている大阪大学の忽那賢志教授は「厚生労働省など、正しい情報源から情報を見てもらうことが大事で、根拠があやふやなツイートなどを見て、デマを信じ込む人が少しでも減るようにしていきたい」と話していました。

河野大臣「若い方々の誤解 過度な不安を大変危惧」

河野規制改革担当大臣は、シンポジウムにビデオメッセージを寄せ「ワクチンに関する誤った情報がインターネットを中心に飛び交っている。若い方々が誤解したり、過度に不安を抱いたりすることを大変危惧している。明らかに誤った情報に対してはしっかりと否定し、正しい情報を発信していくことが重要だ」と述べました。

そのうえで「誤った情報は、情報を発信した人の役職を実際よりハイクラスに書いたり、『製薬会社の秘密文書を秘密裏に入手』などと書いたりして、より不安をあおることもある。正しい情報に基づいて、検討の上、接種していただければありがたい」と述べました。

“デマ”の事例

新型コロナウイルスのワクチン接種が進められる中、インターネットを中心に根拠のない誤った情報やデマが見られています。

〈デマ1 “ワクチンで不妊”〉
多く出回っているのが「ワクチンを接種すると不妊になる」といった誤った情報です。
ワクチンで作られた抗体が胎盤に悪影響を与えるとするものですが、新型コロナのワクチンに詳しい専門家は、抗体は胎盤に関わるたんぱく質を攻撃しないことが分かっていて、誤った情報だとしています。
また、ワクチンについて担当している河野規制改革担当大臣も今回のワクチンで不妊が起きるという科学的根拠は全くないと強調しています。

〈デマ2 “ワクチンで流産”〉
「妊娠中にワクチンを打つと流産する」といった誤った情報も出ています。
これについて厚生労働省は新型コロナのワクチンに関する情報をまとめたウェブサイトで「接種を受けた方に流産は増えていません」と示しています。
アメリカのCDC=疾病対策センターのグループの研究結果では、ワクチン接種を受けた3万5000人余りの妊婦について流産や死産になった割合や生まれた赤ちゃんが早産や低体重だった割合は、新型コロナウイルスが感染拡大する以前の出産で報告されていた割合と差がありませんでした。

〈デマ3 “遺伝情報書き換え”〉
「ワクチンを打つと体内に長期間成分が残り、遺伝情報が書き換えられる」という誤った情報もあります。
現在、日本国内で接種が行われているファイザーとモデルナのメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンについて、厚生労働省はウェブサイトで「注射するmRNAは短期間で分解され人の遺伝情報に組み込まれるものではない」として、遺伝情報が書き換えられるという情報を否定しています。

〈デマ4 “接種によって感染”〉
「ワクチンによって高齢者が新型コロナに感染し、高齢者施設で相次いで亡くなった」という誤った情報も見られました。
接種が行われているワクチンにはウイルスそのものが含まれておらず、ワクチンから新型コロナウイルスに感染することはありません。
厚生労働省は「ワクチン接種が原因で何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません」としています。
厚生労働省は、国に報告されるワクチンを接種したあとに死亡したケースについて、ワクチンの接種とは無関係に発生するものを含むにもかかわらず、SNSなどでは「接種を原因とする死亡」と広がっているケースがあるとして注意を促しています。

〈デマ5 “ワクチンにマイクロチップ”〉
「ワクチンにマイクロチップが入っていて、人々を管理する」という陰謀論もSNSなどで出ています。
ワクチンの成分は厚生労働省やアメリカのFDA=医薬食品局など各国の保健当局や会社のウェブサイトでも公開されていて、マイクロチップが含まれていないことは明らかです。

〈デマ6 “磁石くっつく”〉
「ワクチンを打つと、磁石がくっつくようになる」というデマもSNSで出ています。
アメリカのCDC=疾病対策センターはウェブサイトで、ワクチンには磁気を帯びさせるような物質は含まれていないと明確に否定しています。

ネット事業者の対策は

インターネット事業者各社は利用者が誤った情報やデマに惑わされないよう対応を進めています。
このうち、「ヤフー」は、多くの人が閲覧する「トピックス」と呼ばれるニュースのトップページに
▽ワクチンについての誤った情報やデマについて検証する記事や
▽医療の専門家の見解や医学的な解説をまとめた記事を積極的に掲載し、
デマを直接打ち消すための情報の発信を進めています。
また、検索したときに公的機関が発信している情報や科学的根拠がある情報が上位に表示されるようにしているということで、たとえば「ワクチン」と合わせて「死者」や「副反応」というキーワードで検索した場合、厚生労働省のQ&Aのサイトやヤフーが独自に複数の医療の専門家と共同で接種後の体調不良をどう考えればよいか映像付きで解説した記事などが上位に表示されます。

ほかにも、「ワクチン」をキーワードに自治体の名前と合わせて検索すると、自治体ごとのワクチン接種のスケジュールや接種会場などの詳しい情報をまとめた特設サイトが表示されるようにするなど、科学的な根拠がある情報や自治体が発信する情報につながりやすいようにする仕組みを作っているとしています。

ヤフー「信頼が置ける情報をわかりやすく伝える」

ヤフーの執行役員の片岡裕メディア統括本部長は「接種が本格化するにつれてワクチンへの関心がどんどん高まっていることが検索キーワードやサイトの閲覧数からも見えてきている。一般のユーザーにとってワクチンの情報について何が正しいのか判断するのは非常に難しい。信頼が置ける情報をしっかりまとめて、正しい情報をわかりやすく伝えることがものすごく大事で、多くの人の悩みや不安、疑問を解決できるよう対応を続けていきたい」と話しています。

ワクチン接種 高齢者全体の約8割 1回目終える

ワクチンの接種は、ことし2月から医療従事者などを対象に始まり、4月からは今年度中に65歳以上になる高齢者への接種も進められています。

政府が15日に公表した14日時点の最新の状況によりますと、1回目の接種を受けた高齢者は全国で2813万4893人で、高齢者全体の79.28%となりました。

2回目の接種も終えた高齢者は1853万7353人で、52.24%です。

また、医療従事者や64歳以下の人も含めた接種状況は、1回目の接種を受けた人が14日時点で全人口の31.59%、2回目の接種も終えた人は19.68%となっています。

全人口にはワクチン接種の対象年齢に満たない子どもも含みます。
これらのデータは各地域からシステムに入力された人数に基づくもので、実際はこれ以上に接種が進んでいる可能性があり、今後、増加することがあります。

“想定”下回る接種予約 働き盛りや若い世代の考えは

一方で、働き盛りや若い世代の予約が想定を大きく下回っている自治体もあります。
高知県土佐市では、19歳から64歳の接種について、すでに始まっている個別接種に加えて、今月24日から集団接種を行う予定で、先月末から予約の受け付けを始めています。
ところが、集団接種では合わせて5200人の枠があるのに対し、予約が埋まっているのは、およそ1700人分、率にして全体の33%にとどまっていることが市のまとめでわかりました。
集団接種を予約している人にすでに個別接種を終えた人を加えると、人口に対する割合は、今月9日の時点で
▽60歳から64歳が55%、
▽50代が47.5%、
▽40代が33%、
▽30代が24%、
▽19歳と20代は19.2%と、
若くなるほど割合が低くなっているということです。
また、高知県仁淀川町でも14日から12歳から59歳までの町民を対象にした集団接種を始めましたが、1100人分の枠に対し、予約はおよそ650人と58%にとどまっているということです。
高知県は、高齢者に比べ若い世代は
▽副反応を心配する人や
▽感染しても軽症で済むと考えている人がいるのではないかと、
分析しています。

高知県「同年代で接種した人が少ない状況 様子見の人も」

高知県ワクチン接種推進室の小野哲郎室長は「同年代で接種した人がまだ少ない状況で様子を見ている人もいると思う。接種するかどうかは本人の判断になるが、まずはワクチンの正しい情報を知ってもらうことが重要だ」としています。

「モデルナ」ワクチン 接種対象 12歳以上へ

アメリカの製薬会社モデルナが開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、厚生労働省は接種が可能な年齢を週明けにも現在の18歳以上から12歳以上に引き下げる方針を固めました。

厚生労働省はことし5月にモデルナのワクチンを承認した際、有効性や安全性に関して17歳以下のデータが不足していたことなどから、接種が可能な年齢を18歳以上に限っています。

その後、モデルナが、アメリカで12歳から17歳のおよそ3700人を対象に行った治験で有効性と安全性を確認したとして、追加で厚生労働省にデータを提出していました。

関係者によりますと、審査は終了し、厚生労働省は今月19日にも専門家部会に報告したうえで、公的な予防接種の対象に追加し、希望する12歳以上のワクチン接種に使用することにしています。
国内ではファイザーのワクチンも、ことし5月、接種対象が16歳以上から12歳以上に引き下げられています。

都内の感染者 2日連続で1000人超え

今月12日から4度目の緊急事態宣言の期間に入った首都 東京では新規陽性者数の増加比は継続して上昇していて、専門家は「感染が急速に拡大している」と指摘しています。

15日に発表された都内での新たな感染確認者は1308人となり、2日連続で1000人を超えました。

1週間前の木曜日より412人多くなっていて、15日までの7日間平均は882.1人となり、前の週の132.9%となりました。

“4週間後 7日間平均で2400人超” 専門家が分析

15日開かれた東京都のモニタリング会議で専門家は、現在の増加比が続くと、4週間後の来月11日には今の2.94倍のおよそ2406人になると分析しました。

そのうえで、変異ウイルスの影響などで感染拡大が加速すると、早期に、年明けの第3波を超えると強い懸念を示しています。

「高齢者は重症者数も含めて抑えられている」都知事

これについて小池知事は15日、都庁で記者団に対し、「特に20代と30代の陽性者数が飛び抜けて多い。逆に、高齢の方々は重症者数も含めて抑えられていて、ワクチンの効果だと思う」と述べました。

“接種進むとクラスター件数 さらに減少へ”京大が試算

また、京都大学の西浦博教授らのグループは、去年11月からことし6月までの期間について、全国の感染状況や、ことし2月から始まった医療従事者へのワクチンの接種状況などのデータを分析し、医療従事者へのワクチン接種が5人以上のクラスターの発生件数にどう影響したかを試算しました。

その結果、
▽医療従事者へのワクチン接種が無かった場合は、医療機関で1060件、高齢者施設で1631件のクラスターが発生したとみられるのに対し、
▽ワクチンを接種した場合は医療機関で896件、高齢者施設で1476件と推定されたということで
合わせて319件、少ないという計算結果になりました。

グループによりますと、今回の試算では、その後始まった高齢者への優先接種や職域での接種の効果は含まれていないということで、西浦教授は「高齢者や一般の人への接種が進むとクラスターの件数は今後さらに減っていくはずだ。ワクチンの効果のたまもので、感染状況が厳しい中、明るいニュースだ」と話しています。

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