EU 2035年にガソリン車などの新車販売 禁止方針

EU=ヨーロッパ連合は包括的な気候変動対策として2035年にガソリン車などの新車販売を事実上、禁止するほか、脱炭素への取り組みが不十分な国からの一部の輸入品に事実上の関税をかける措置を導入する方針を明らかにしました。日本企業などに影響が及ぶ可能性がありますが、加盟国の間でも意見に違いがあり今後、曲折も予想されます。

EUは2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年と比べて55%削減し、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げていて14日、EUの執行機関、ヨーロッパ委員会が実現に向けた包括的な気候変動対策の案を発表しました。

この中では、2035年以降の新車販売を排気ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするとし、ハイブリッド車を含むガソリン車やディーゼル車の販売を事実上、禁止する方針を盛り込みました。

また、脱炭素の取り組みが不十分な国からの輸入品などに対して事実上の関税を課す「炭素国境調整措置」と呼ばれる措置を導入するとしています。

この措置は2年後から暫定的に運用を始め、鉄鋼やアルミニウム、セメントなど5品目を対象にするということです。

今回の案の実行にはEU加盟国やヨーロッパ議会の承認が必要です。

案が実行されれば日本企業などに影響が及ぶ可能性がありますが「炭素国境調整措置」に対しては「保護主義的だ」といった指摘があり、EU域外の国からの反発は避けられない見込みです。

また、加盟国の間でも意見の違いがあるほか自動車業界などからの反対の声もあり今後、曲折も予想されます。

「ヨーロッパがこうした対策をリード」

気候変動対策の案を発表したヨーロッパ委員会のフォンデアライエン委員長は「脱炭素はわれわれに課された使命だ。われわれの世代だけでなく子どもや孫の世代の幸福に関わっている。ヨーロッパがこうした対策をリードしていく準備はできている」と述べ、今回の案の意義を強調するとともに世界的に脱炭素の取り組みが加速することに期待を示しました。

懐疑的な声も

EUが打ち出した「炭素国境調整措置」に対しては懐疑的な声も上がっています。

ブリュッセルのシンクタンクのゲオルク・ツァハマン上級研究員は「輸入品が生産される過程でどれだけの温室効果ガスが排出され、どれだけ課税できるのか判断するのは極めて難しい」と述べ、実際の運用は容易ではないと指摘しました。

そして「この措置は保護主義的に見える。EUは気候変動対策として世界のほかの国々が追随することを望んでいるが、行き過ぎた規則とみなされるだろう」と述べ、国際的な貿易ルールにのっとっていないとしてEU域外の国からの反発を招くとの見通しを示しました。

欧州自動車工業会は反対姿勢

EUの方針をめぐって、ヨーロッパ自動車工業会は電気自動車などの普及には国ごとのばらつきが大きいとして反対の姿勢を示しています。

ヨーロッパ自動車工業会が今月6日に発表した調査によりますと、去年のEU域内での新車販売台数に占める電気自動車とプラグインハイブリッド車の割合は全体の10.5%でしたが、東ヨーロッパなどの国では2%以下にとどまり充電施設の普及も遅れているとしています。

このためヨーロッパ自動車工業会は、電気自動車などの普及率は各国の経済規模によるとして「EUは、取り残されている国や市民がいないかどうか今すぐ確認すべきだ」としています。

そのうえで、こうした国々に対する長期的な販売促進策などを求めていくとしています。

世界各国の目標は?

脱炭素社会に向けた機運が高まる中、世界ではガソリン車やディーゼル車の新車販売を禁止する計画の発表が相次いでいます。

このうちイギリスは、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止するとしています。

また、アメリカでは、カリフォルニア州が2035年までにガソリン車などの新車販売を禁止する目標を掲げているほか、カナダも先月、ガソリン車などの新車販売を2035年までに禁止すると発表しました。

こうした動きに合わせて欧米の大手自動車メーカー各社も自動車の電動化を急ぐ方針を相次いで打ち出してきましたが、EUの新たな方針なども踏まえ戦略をさらに加速させる必要に迫られる可能性もあります。

日本の自動車メーカーは…?

日本の自動車メーカーは、EUの今回の方針について加盟国からの同意を取り付けることができるかなど今後の状況を注視したいとしていますが、仮に実行された場合は戦略の一部見直しを迫られる可能性もあります。

世界で脱炭素の機運が高まる中、日本の自動車メーカー各社はことしに入って車の電動化に関する新たな目標を相次いで打ち出しています。

ヨーロッパ市場については
▽トヨタ自動車が2030年に販売するすべての新車を電動車にして、このうち40%をEV=電気自動車や、FCV=燃料電池車にする計画です。電動車にはガソリンエンジンも搭載したハイブリッド車を含めています。

▽日産自動車もヨーロッパ市場を含めて主要市場に投入する新型車は2030年代の早い時期にすべて電動車にするとしていますが、ハイブリッド車を含めています。

また
▽ホンダは2040年にヨーロッパを含めた世界全体で新車のすべてをEVとFCVとする方針です。

日本のメーカーは、EUの今回の方針について加盟国からの同意を取り付けることができるかなど今後の状況を注視したいとしています。ただ、仮に実行された場合はEVやFCVの開発を早めたり投資の計画を前倒ししたりするなど、戦略の一部見直しを迫られる可能性もあります。

加藤官房長官「議論の動向を注視」

加藤官房長官は午前の記者会見で「立法化に向けた欧州議会での議論はこれからということで、政府としてコメントは差し控えたいが、日系自動車メーカーにとって、欧州は年間販売台数のおよそ1割を占める市場だ。欧州議会での議論の動向は高い関心を持って注視していきたい」と述べました。

また「炭素国境調整措置」と呼ばれる措置について「既存の国際枠組みとの整合性の確保や恣意的(しいてき)な運用の防止など、多くの課題があると承知しており、EUに対し透明性を持った情報提供や説明がなされるよう求めていくとともに、関連する国際的な議論や動向も十分注視していきたい」と述べました。