「黒い雨」浴びた住民 2審も被爆者と認める 住民勝訴 広島高裁

広島に原爆が投下された直後に放射性物質を含むいわゆる「黒い雨」を浴びて健康被害を受けたと住民などが訴えた裁判で、2審の広島高等裁判所は1審に続いて原告全員を法律で定める被爆者と認めました。
判決は、国が指定した区域の外にも「黒い雨」による健康被害が及んでいたと判断し、区域の範囲を検証している国の検討会の議論にも影響を与える可能性があります。

広島市や周辺自治体に住む76歳から97歳の住民やその遺族84人は、昭和20年、原爆が投下された直後に降ったいわゆる「黒い雨」を浴び、健康被害を受けたと訴えて広島市や広島県に法律で定める被爆者と認めるよう求めていました。

原告の住民たちは無料で健康診断が受けられる国が指定する援護区域の外にいて、被爆者と認定されていませんでしたが、1審判決は去年7月、原告の訴えを全面的に認めました。

14日の2審の判決で広島高等裁判所の西井和徒裁判長は、1審に続いて原告の住民全員を法律で定める被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付するよう広島市などに命じました。

判決では国が援護区域の範囲を指定する根拠となった当時の気象台による黒い雨の調査について、「調査は限られた人数と期間で行われ、資料が薄かったり、ばらついたりする地域もあった。この調査よりも広い範囲で黒い雨が降ったと推定するのが妥当だ」と指摘しました。

そのうえで「原告の住民たちはいずれも、黒い雨が降った地域に所在し、雨に遭ったと認められる」として、援護区域の外にも「黒い雨」による健康被害が及んでいたと判断しました。

国は1審判決のあと、援護区域の範囲が妥当かどうかを検証する検討会を設置していて、判決は今後の議論に影響を与える可能性があります。

原告団長 高野正明さん「上告断念するよう要望したい」

判決の言い渡しのあと、原告の弁護士が裁判所の前で、「全面勝訴」と書いた紙を掲げると、集まった支援者たちから拍手や歓声があがりました。

原告団長の高野正明さんは「裁判によって私たちはうそをついておらず、真実を話したと認めていただいた。広島市や県が最高裁判所への上告を断念するよう今後要望したい」と話していました。

弁護団「裁判所が立派な判決 うれしく思う」

判決のあと原告団と弁護団が記者会見し、原告の高東征二さん(80)は「国にはもう1日たりとも結論を伸ばしてほしくない。これまでたくさんの人が苦しみながら亡くなっているので一刻も早く原告以外の被害者も含め被爆者健康手帳を出してほしい」と話していました。

また、竹森雅泰弁護士は、「裁判所が立派な判決を出してくれたことをうれしく思う。提訴のあと亡くなった原告も多く体調崩している方もいるので県や市、国は上告せず判決を受け入れてほしい」と話していました。

加藤官房長官「判決の内容を十分精査し、対応」

加藤官房長官は午後の記者会見で「国側の主張が認められなかったと聞いている。今後の対応については、関係省庁において判決の内容を十分精査し、広島県や広島市と協議したうえで対応していくことになる」と述べました。

そのうえで「いわゆる黒い雨地域と呼ばれる区域の設定については、地域の拡大も視野に入れた再検討を行うため、去年11月から検証作業が進められている。検証には一定の時間を要するものも含まれていると聞いているが、 被爆から75年がたち、関係者の方も高齢化し、さらなる科学的知見の調査のための糸口となる記憶も薄れつつあるという状況の中で、厚生労働省においては、スピード感を持って取り組んでいただきたい」と述べました。

厚生労働省「今後の対応協議したい」

厚生労働省は「国側の主張が認められなかったと認識している。現在、判決の内容を精査しているところで、今後の対応については、関係省庁や広島県、広島市と協議したい」とコメントしています。