国の“酒類の取り引き停止要請” 業界内で波紋広がる

国が酒類の販売事業者に対し「緊急事態宣言」の対象地域などでは、酒の提供を続ける飲食店と取り引きしないよう要請したことをめぐっては、業界の中で波紋が広がっています。

このうち、酒類販売の業界団体の1つ、全国小売酒販組合中央会は今月9日、国税庁などに対し「補償もない中で、きぜんとした対応をとることは商慣習の常識から言っても困難だ」などとする抗議文を提出したほか、12日は、団体の幹部が自民党本部で下村政務調査会長と面会し、丁寧な説明を求めました。

また、全国の地ビールメーカーなど、およそ120社が加盟する「全国地ビール醸造者協議会」は、今回の要請について、会員の意見を集約する作業を進めています。

これまでのところ、要請を肯定的に受け止める意見はないということで、取り引きを停止すると飲食店との間にあつれきが生じ、今後、ビジネスができなくなってしまうのではないかといった不安の声や、コロナで販売先がなく厳しい状況なのに、国は現場のことを理解していないのではないかといった意見が寄せられているということです。

協議会では意見を集約した段階で、国税庁などに提出することにしています。

加藤官房長官 “一般的なお願いで不利益は生じない”

加藤官房長官は、酒の販売事業者に対し、緊急事態宣言の対象地域などでは酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請していることについて、要請に応じなくても不利益は生じず、営業の自由を阻害するものでもないと説明しました。

新型コロナウイルス対策をめぐり、政府は、酒の販売事業者に対し緊急事態宣言の対象地域などでは、酒の提供停止に応じない飲食店との取り引きを行わないよう要請しています。

加藤官房長官は、閣議のあとの記者会見で「一般的なお願いであり、要請に応じないから酒類販売事業者の免許を取り消すといった不利益が生じるようなことを前提としているものでは全くない。憲法が保障する営業の自由を阻害する趣旨のものでもない」と説明しました。

そのうえで、今後、事業者に対し、丁寧に趣旨を説明するとともに、支援策を検討するなど、協力が得られる環境の整備に努める考えを示しました。