西村経済再生相「混乱招き不安を与え反省」飲食店めぐる発言で

酒の提供停止など、飲食店への要請をめぐるみずからの発言について、西村経済再生担当大臣は、記者会見で「混乱を招き、飲食店の皆さんに不安を与え反省している」と釈明しました。また、進退を問われ「感染を抑え、事業も継続できる環境を作れるよう責任を果たしたい」と辞任を否定しました。

新型コロナウイルス対策としての飲食店に対する酒の提供停止などの要請をめぐり、西村経済再生担当大臣は、金融機関に働きかけを行ってもらう考えを示しましたが、その後、政府として方針を撤回しました。

西村大臣は、記者会見で「私の発言で混乱を招き、飲食店の皆さんに不安を与えることになった。何とか感染を抑えたい、できるだけ多くの方に協力をいただきたいという強い思いからではあったが、趣旨を十分に伝えきれず反省している」と釈明しました。

そして「融資を制限する趣旨ではなかったが、さまざまな指摘を重く受け止め、金融機関への働きかけは行わないことにした」と述べるとともに、営業時間の短縮要請に応じてもらえるよう、協力金を早期に支給できる仕組みの導入を急ぐ考えを示しました。

一方で、西村大臣は、酒の販売事業者に提供を続ける飲食店との取り引きを行わないよう要請する方針は撤回しない考えを示しました。

また、野党側などから辞任を求める声が出ていることについて「反省すべきは反省しながら、感染を抑え事業も継続できる環境を作れるよう、責任を果たしていきたい」と述べ、辞任を否定しました。

さらに、金融機関への働きかけをめぐり、関係閣僚での調整があったかどうかについては「総理大臣官邸での打ち合わせで、事務方から、金融機関や卸売業者への働きかけについても触れられたが、閣僚間では議論はなかったと記憶している」と述べました。

麻生副総理・金融相「放っておけと言った」

酒の提供停止など、飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について、麻生副総理兼金融担当大臣は閣議のあとの記者会見で「海外出張中に金融機関の働きかけについて検討中だと、途中段階の報告を受けた。私は違うんじゃないかと思って『放っておけ』とだけ言った」と述べました。

その理由について麻生大臣は「『融資してください』とお願いをしているのに『融資を止めてやろう』という話をするのであれば、普通に考えればおかしいと思う」と述べたうえで「金融機関に対しては、これまでも何回にもわたって、飲食店を含む事業者の立場に立って、迅速かつ柔軟な対応で支援を行うよう要請している」と述べ、事業者の経営を下支えする政府の方針に変わりはないという考えを示しました。

梶山経済産業相「『ちょっと違うな』と思い確認を指示」

西村経済再生担当大臣の発言について、梶山経済産業大臣は閣議のあとの記者会見で今月8日に内閣官房から金融機関の働きかけについての事務連絡があったことを明らかにしたうえで「金融機関という話があったので『ちょっと違うな』と思い、丁寧に確認するよう指示した。経済産業省からは所管の金融機関に対して何ら働きかけを行っていない。翌9日に事務連絡は廃止になったが、コロナ禍で中小企業が大変厳しい状況にある中、誤解を招きかねない事務連絡を発出しないことになったことは妥当だと思う」と述べました。

そのうえで、今回の対応について梶山大臣は「政府の一員として申し訳なく思う。政府の支援が皆さんのかゆいところに手が届く形になっていないと感じており、政府全体で考えないといけない」と述べました。

田村厚生労働相「誤ったメッセージ伝わった」

酒の提供停止など飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について、田村厚生労働大臣は誤ったメッセージが伝わったとして陳謝しました。

新型コロナウイルス対策としての飲食店に対する酒の提供停止などの要請をめぐり西村経済再生担当大臣は金融機関に働きかけを行ってもらう考えを示しましたが、その後、政府として方針を撤回しました。

田村厚生労働大臣は記者会見で「飲食店の皆さんに誤ったメッセージが伝わり、おわび申し上げたい」と陳謝しました。

そのうえで「決して変な圧力ではなく、理解をいただきたい。たび重なる時短営業や営業停止の中で、資金繰りも含め飲食店が大変な状況だということは認識している」と述べ、理解を求めました。

また、田村大臣は東京の緊急事態宣言について「4回目ということで、効果が弱まることも当然あるが、緊急事態措置を出さないよりも滞留人口をある程度抑えられると思う。特に夜間の繁華街での滞留人口を抑えるためメッセージを出していきたい」と述べました。

小池都知事「協力いただける工夫をしたい」

東京都の小池知事は、飲食店に対する酒の提供停止などの要請をめぐって酒類販売の業界団体から反発が出ていることについて「会食などを通じて家庭内での感染が広がっていることも事実で、ぜひ皆さんに協力いただけるような工夫をしたい」と述べ、理解を求めました。

東京都は12日からの緊急事態宣言で酒を提供する飲食店に休業を要請していますが、酒の提供停止などの要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言を受けて、酒類販売の業界団体から反発が出ています。

これについて、記者団から「どのように協力を求めていくのか」と聞かれた小池知事は「本当に長くご協力いただいている。一方で、会食などを通じて家庭内での感染が広がっていることも事実だ」と述べました。

そのうえで「ぜひ皆さんに協力いただけるような工夫をしたい。先に協力金をお渡しするなど、今、国と連携してやっているところだ」と述べ、理解を求めました。

自民 二階幹事長「誤解受けることがないよう慎重に」

自民党の二階幹事長は党の総務会で「自民党は、飲食店の皆さんに営業自粛という無理なお願いをし、一丸となってこの国難を乗り越えようと努力している。誤解を受けることがないよう、今後は事前に党に相談してもらい、発言には慎重を尽くしてもらいたい」と苦言を呈しました。

また、佐藤総務会長は記者会見で「一刻も早く新型コロナを撲滅したいという思いが、あのような発言になってしまったのではないか。西村大臣から、けさ電話をもらい『反省し気を付けたい』とのことだったので、今後に期待したい」と述べました。

立民 枝野代表「政権全体の体質の問題だ」

立憲民主党の枝野代表は党の常任幹事会で「西村大臣の発言のみにとどまらず、政権全体の体質の問題だ。この問題は補償もないままに長期にわたって協力を迫るという、無理を重ねてきたことに大きな原因がある。われわれは当初から自粛と補償はセットだと言ってきた。臨時国会を召集し、事業者が協力してもらえる状況を作るために努力していく」と述べました。

国民 玉木代表「酒販売業者への要請撤回を」

国民民主党の玉木代表は記者会見で「酒の販売業者に対して出されている要請は筋が悪く、速やかな撤回を求める。経済的な支援と補償を万全にする必要があり、政府には臨時国会を召集し、消費税の一時的な減税を含めた30兆円の補正予算案の編成を求めていきたい」と述べました。

経済同友会 櫻田代表幹事「大きな混乱を生んだ」

酒の提供停止など、飲食店への要請をめぐる西村経済再生担当大臣の発言について、経済同友会の櫻田代表幹事は、13日の定例会見で「大きな混乱を生んだのは間違いない」と述べたうえで、政府に対する国民の信頼が損なわれているとして、丁寧な対応を求めました。

この中で櫻田代表幹事は「どういう意思決定のプロセスであの発言につながったのかは分からないが、大きな混乱を生んだのは間違いない。要請の内容が法的な根拠がないとすると、昔の裁量行政を想起させるようなもので大変まずい」と述べました。

そのうえで「なぜ4回目の緊急事態宣言が出たのかや、新型コロナのワクチンが突然足りなくなったことに対し、明快な説明が出ていない中で、この発言が出てきた。政府は本当のことを伝えているのかという疑問を持たれてもしかたのない現象が続いている」と述べ、政府に対する国民の信頼が損なわれているとして、丁寧な対応を求めました。