京都市「副業人材」2人を初採用 高い専門性を行政の仕事に

京都市は、高い専門性を持つ人たちに企業などに籍を置いたまま行政の仕事をしてもらう「副業人材」として、首都圏に住む2人を初めて採用しました。厳しい財政を立て直すため、企業の誘致などを担ってもらうことにしています。

1648人の応募の中から京都市が「副業人材」として採用したのは、広告代理店勤務の木村元紀さんと、金融ベンチャー取締役の新色顕一郎さんの2人です。

12日は、京都市役所と東京事務所などをオンラインで結び、副業人材として採用した2人に門川市長から委嘱状が交付されました。

京都市では危機的な財政の立て直しに向けて新たな収入源を確保するため、全国からの企業の誘致や新たな産業の創出などが課題になっています。

木村さんは「都市ブランディングアドバイザー」として、新色さんは「企業連携営業アドバイサー」として、来年3月末まで首都圏での企業誘致や企業向けのふるさと納税の寄付の呼びかけなどを担当します。

民間企業で培った人脈やノウハウを生かして企画の提案などを手がけてもらい、1日当たり2万5000円の報酬を支払いますが、京都市は常勤の職員を採用する場合と比べ人件費は低く抑えられるとしています。

京都市が「副業人材」を採用するのは初めてで、門川市長は「改革を進めている中で心から頼りにしている。私は一切口は出さないので、独創的なアイデアをいただき、可能なかぎり実現していきたい」と期待を伝えました。

木村さんは「ビジネス都市としての京都の利点を伝え、新たな事業の提案をともに考えていきたい」と抱負を述べました。

また、新色さんは「本業とは別の形で地域貢献していきたい」と話していました。

採用された2人は

京都市に新たに採用された2人は、これまでのキャリアを地域に生かしたいと意気込んでいます。

京都市が「副業人材」を募集したところ、10代から70代までの1600人余りから応募があり、書類選考と面接を経て、2人が選ばれました。

このうち、企業の誘致活動に取り組むことになったのは、金融系のベンチャー企業で役員を務める東京都在住の新色顕一郎さん(35)です。

新色さんは、メガバンクに勤務していたときにロンドンのビジネススクールでMBA=経営学修士を取得したあと、複数のコンサルタント会社やベンチャー企業で事業の立ち上げや法人営業のノウハウを学びました。

そして、ビジネス都市としての京都の魅力を高める活動に取り組むのは、都内在住の会社員、木村元紀さん(40)です。

木村さんは、大手広告代理店のクリエイティブディレクターとして企業広告の制作や商品開発を手がけてきたほか、官公庁が行うさまざまな啓発プロジェクトに携わってきました。

2人は東京 千代田区にある京都市の事務所で今月9日、初めての打ち合わせを行い、市が進めようとしている財政状況の改善に向けた取り組みについてや、本業の仕事とのバランスを取った業務の進め方などについて、担当者と意見を交わしました。

新色さんは「すごく楽しみであると同時に、たくさんの応募者の中から選ばれたということに大きなプレッシャーを感じています。地方自治体で地域貢献がしたいと考えていたんですが、副業という方法であれば、あくまで主軸を今の仕事にしながら貢献することができます。任せてよかったと言ってもらえるように、きっちり目に見える着実な成果を出したいです」と話していました。

また、木村さんは「人生の時間を有意義に使っているという実感を、京都市での副業で得られるのではないかと考えています。民間企業での仕事だと、商品を受け取った一人一人の顔が見えないのですが、この街に暮らしている人たちに貢献できたかもしれないという手応えが分かるというのがうれしい点です。『京都でしかできない』とか、『京都でやるからおもしろい』ということを意識してやっていきたいです」と話しています。

京都市東京事務所の逢坂剛史次長は「多くの人から応募してもらい、優秀な人材に出会えたという点で、副業という採用の方法は地方自治体にとって非常に有効だと思いました。今回のプロジェクトを成功させて、市のほかの部署でも広がればと考えています」と話しています。

京都市の財政の現状は

京都市では歳出が歳入を大幅に上回り、去年11月の試算では今後も毎年500億円から600億円程度の財源不足が続く見通しです。

足りない分は将来の借金返済のために積み立てている「公債償還基金」を取り崩して補っています。

京都市は先月、行財政改革の計画案をまとめ、令和6年度にも基金が枯渇し、国の管理下で財政再建を目指す「財政再生団体」になるおそれがあるとして、歳出の大幅な見直しを進める方針です。

具体的には、5年間で市の職員を550人以上減らすことや、高齢者が市バスや地下鉄に一定額で自由に乗れる、「敬老乗車証」の対象年齢を引き上げることなどを検討します。

合わせて新たな収入源を確保する必要があるとして、観光客など京都市以外に住む人たちへの課税や働きかけを強めています。

3年前に導入し、令和元年度には42億円の税収増につながった「宿泊税」に続く新税として、別荘や空き家などへの課税の検討を始めています。

また、ふるさと納税による昨年度の住民税の「流出」は40億円余りに上ったことから、「過度な返礼品競争にはくみしない」としていた方針を転換し、返礼品の充実やPRの強化などに乗り出しています。

行財政改革の計画案では、さらに歴史や伝統文化が息づく古都の魅力や、「大学のまち」に集まる学生や研究者など優れた人材を生かすとして、今後、規制緩和や産官学のネットワークづくりなどを通じて企業の誘致を進めることを打ち出しています。

「副業人材」採用の取り組み広がる

地方自治体が、専門性を持った人に企業などで働きながら副業として行政の仕事をしてもらう取り組みは広がっています。

人材サービス会社によりますと、行政サービスの改善や財政の健全化のために、本業の仕事をしながら副業で働いてもらう「副業人材」を募集した自治体はこれまでに少なくとも12あります。

地方自治体が企業で働く人など外部の人材を採用するには、これまでは任期が1年で週5日、1日8時間程度働く常勤職員を募集するケースが多くありました。

この場合、自治体で働くためには仕事を辞める必要があるため若い世代からの応募が少なく、地方自治体で不足しているITスキルの高い人材の確保が難しいことが課題でした。

これに対して「副業人材」であれば企業などで働き続けることができるため多くの応募が見込まれ、人件費も常勤の職員を採用する場合と比べ抑えられます。

一方、民間企業では、国が働き方改革の一環として副業や兼業を促すためのガイドラインをおととし策定したことなどから、従業員の副業を認める動きは広がり始めました。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大の影響でテレワークが広がったことなどから、副業を希望する人が増えたとみられています。

「行政の仕事をしたい」という働く人の希望と、専門性のある人材を活用したいという自治体側のニーズがマッチしたため、人材サービス会社では「副業人材」の活用はさらに増えるとみています。

人材サービス会社「エン・ジャパン」は「副業人材を募集した地方自治体には想定より多くの応募があり、本業を続けながらみずからのスキルを地域社会に生かしたいという働き手のニーズは高い。テレワークの普及で、住んでいる場所から離れた地方自治体の仕事も副業の選択肢となるので、今後、副業人材の活用はさらに広がっていくとみている」と話しています。