日本政府が無償提供のワクチン タイに到着 約105万回分

新型コロナウイルスの感染が拡大しているタイに、日本政府が無償で提供したおよそ105万回分のワクチンが到着し、タイ政府に引き渡されました。

日本政府が提供した、およそ105万回分のアストラゼネカのワクチンは、タイの首都バンコク近郊の空港に航空機で到着し、12日にタイ政府に引き渡す式典が行われました。

式典には、タイのプラユット首相が、公務の最中に感染者に接触した可能性があるとして、自主隔離中のためオンラインで出席し「日本の支援は、タイが調達したワクチンを補完し、ワクチンへのアクセスを向上させ、感染者数と死者数を減少させることに役立つ」などと述べ、感謝の意を示しました。

タイでは、ことし3月ごろから、首都を中心としたクラスターの発生などで急速に感染が拡大し、インドで確認された変異ウイルスの「デルタ株」の感染も広がり、1日の新たな感染者数が連日9000人前後となっています。

また、ワクチンの不足などから、少なくとも1回ワクチンを接種した人の割合がおよそ13%にとどまっていて、ワクチンの調達が喫緊の課題となっています。

タイ政府は、感染が急速に拡大していることを受けて、首都バンコクや周辺の地域で、12日から2週間、夜間の外出を原則禁止したほか、検問所を設けて人の移動を制限するなど、行動の制限を大幅に強化して、新たな感染者数を減少傾向に転じさせたい考えです。

中国製ワクチン シノバック接種も追加接種

日本政府は、東南アジアでは、タイやマレーシア、インドネシア、ベトナム、そしてフィリピンにアストラゼネカのワクチンを無償で提供していますが、こうした国々の多くでは、中国の製薬会社、シノバックのワクチンが広く使用されています。

このうち、タイとインドネシアでは、医療従事者に対し、主にシノバックのワクチンが使用されていますが、ワクチンの接種を完了したにもかかわらず、新型コロナウイルスに感染するケースが相次いで報告されています。

タイの保健省によりますと、これまでにシノバックのワクチンを2回接種した67万7348人の医療従事者のうち618人が感染し、1人が死亡したということです。

タイ保健省は、「シノバックは、変異ウイルスの『デルタ株』に対し、『アルファ株』と同様の効果をもたらさない可能性がある」として、免疫の効果を高めるため、2回目の接種を完了した人たちにアストラゼネカなどのワクチンを追加で接種するとしています。

またインドネシアでは現地の医師会のチームのまとめでワクチン接種を完了した医師20人が、ことし2月から6月下旬の間に感染して死亡し、このうち少なくとも10人がシノバックのワクチンを接種していたことがわかっています。

このためインドネシア保健省はすべての医療従事者を対象に、モデルナのワクチンを追加で接種するとしています。