五輪 約4万人の都市ボランティア “無観客”で対応は?

東京や福島など6つの都道県の会場で、無観客での開催が決まった東京オリンピック。
観客を案内する予定だったおよそ4万人の都市ボランティアの活動をどうするのか、採用した自治体では活動中止の周知や、新たな役割の確保など対応に追われています。

東京オリンピックは再び感染が拡大している影響で、今月8日に無観客開催が決まった東京など1都3県に加え、9日に北海道で、10日に福島県でも一転して無観客での開催が決まりました。

各自治体によりますと会場周辺では、観客を案内する都市ボランティア、合わせておよそ4万人が活動する見込みでしたが、無観客開催の決定を受け、多くのボランティアが予定していた活動の場を失う事態となっています。

都市ボランティアを採用した自治体では対応に追われていて、このうち神奈川県では、まだ観客が入る可能性があるパラリンピックの会場がないことから、横浜市と藤沢市はすでに都市ボランティアに街頭での活動中止を伝えたということです。

一方で、パラリンピックの会場がある東京都や千葉県は、パラリンピックの際に活動に参加できるよう、受け付けるとともに、オンラインで地域の魅力を発信する取り組みを進めようと参加を呼びかけています。

また埼玉県は、都市ボランティアに大会を盛り上げてもらう機会を新たに設けようと検討していて、感染状況をみながら今後、具体的な取り組みを示したいとしています。

多くの都市ボランティアは研修などで準備を重ねてきましたが、開会まで2週間を切る中で予定していた活動の場が失われる事態に、各自治体では少しでも役割を確保しようと対応を急いでいます。

千葉 成田 “無観客”決定後も研修会

6つの都道県で東京オリンピックの無観客開催が決まる中、千葉県成田市では、パラリンピックで活動することも想定して10日、都市ボランティアの研修会が開かれました。
10人ほどの参加者は市の職員とともに、交通や観光の案内を行う予定のJR成田駅前や成田山新勝寺の参道を見て回り、トイレや休憩所のある場所などを確認していました。
そして市役所に戻ると、活動の注意点や熱中症対策などの説明を受けたあと、ボランティアのユニフォームを受け取っていました。

オリンピック期間中のみ活動を予定していた50代の女性は、無観客が決まったあとでユニフォームを手渡されたことに戸惑いつつも、「この状況での活動に葛藤もあったので、無観客でほっとした面もあり、複雑な思いです。1回でも何か携われたらという思いもあり、パラリンピック期間中に参加できたらと思っています」と話していました。

また、オリンピックとパラリンピックの両方で活動する予定の千葉県酒々井町の主婦、杉松由香さん(53)は海外の観客を案内できるよう、中国語の勉強に取り組んでいましたが、ことし3月に受け入れが見送られ、複雑な思いで準備を進めてきたところ、オリンピックの無観客も決まり、落胆したと言います。

杉松さんは「望みが一つずつ消えるようでショックでした。おもてなしをできる場がなくなるのはつらいですが、最悪なのはコロナウイルスで人が亡くなることです。今は感染者を出さずに、最大限、大会を応援することが務めだと思います。パラリンピックを含めて、何かしらの活動の場を作ってほしいと思いますし、大会に関わると決めた以上、最後までやり抜きたいです」と語っていました。

成田市スポーツ振興課の安部健太郎さんは「日々、情報が変わり、急に無観客での開催となり、われわれもバタバタとして、この先、どうしようかと考えています。都市ボランティアの皆さんが熱心に研修を受ける姿を見てきたので、機会があれば活躍してもらいたい」と話していました。

オリンピックは無観客となった千葉県では、まだ観客の扱いが決まっていないパラリンピックの会場があることから、再度、希望日を聞いて日程を調整することにしています。

神奈川 藤沢 都市ボランティア 街頭での活動中止

6つの都道県で東京オリンピックの無観客での開催が決まったことを受け、セーリングの競技会場がある神奈川県藤沢市では都市ボランティアの街頭での活動を中止するなど、対応に追われています。

神奈川県藤沢市では江の島がオリンピックのセーリングの競技会場となっていて、今月25日から来月4日までの競技期間中は、島内にある湘南港の一角に大型のスクリーンを設置して、1日に3600人が競技を観戦する予定でした。

しかし、神奈川県ではすべての競技会場が無観客になることから、藤沢市は9日、会場周辺で観客を案内する予定だったおよそ800人の都市ボランティアについて、街頭での活動をすべて中止することを決めました。

これを受け、市の東京オリンピック・パラリンピック開催準備室では、都市ボランティアに対し、一斉にメールを送って街頭での活動の中止を伝えました。

また、無観客の決定を受け、準備室にはボランティアや大会関係者からの問い合わせの電話が相次ぎ、職員が対応に追われていました。

藤沢市の東京オリンピック・パラリンピック開催準備室の赤坂政徳室長は「2年以上にわたって実習や研修などを重ね、準備をしていただいてきたので、大会2週間前での中止は本当に申し訳なく、悔しい気持ちでいっぱいです」と話していました。

藤沢市では今後、都市ボランティアにインターネット上での情報発信などを手伝ってもらいたいとしています。