【詳報】菅首相会見 東京の緊急事態宣言を決定 沖縄は延長

菅総理大臣が午後7時すぎから行った記者会見の主な発言は次のとおりです。

熱海市の土石流 救助と被災者の支援に全力

「今月3日、静岡県熱海市で発生した土石流はこれまでに9人の死亡が確認されるなど甚大な被害が発生している。また、国内各地でも被害が発生している。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた方のお見舞いを申し上げる」

「熱海市では20人を超える方の安否が確認できていないとの報告を受けており、警察、消防、海上保安庁、自衛隊が2000人超える態勢で懸命に救命にあたっている。引き続き、すみやかな救助と被災者の支援に全力をあげていく」

東京都に緊急事態宣言 沖縄は延長

「先ほど新型コロナ対策本部を開催して東京都に緊急事態宣言を発出し、沖縄県の緊急事態宣言は延長して、期間をそれぞれ8月22日までとすることや、まん延防止等重点措置については、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府は8月22日まで延長し、北海道、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県は、7月11日をもって終了することを決定した」

会話の際にはマスクを着用を

「20代から50代の感染者が急増し、40代、50代では重症者も増えており、職場や家庭内の感染も顕著になっている。マスク、手洗い、『3密』の回避という基本的な感染対策を徹底し、とりわけ、会話の際にはマスクを着用するようお願いする」

デルタ株の急速な拡大を懸念

「残念ながら首都圏においては、感染者の数は明らかな増加に転じている。その要因の一つが、人流の高止まりに加えて、新たな変異株である『デルタ株』の影響であり『アルファ株』の1.5倍の感染力があるとも指摘されている。『デルタ株』が急速に拡大することが懸念される」

「感染状況には、従来とは異なる明らかな変化が見られている。東京では、重症化リスクが高いとされる高齢者のワクチン接種が70%に達する中、一時は20%を超えていた感染者に占める高齢者の割合は、5%程度まで低下している。重症者用の病床利用率も30%台で推移するなど、新規感染者数が増加する中でも、重症者数や病床利用率は低い水準にとどまっている」

飲食店への協力金を簡易な審査で速やかに支給

「東京と沖縄では飲食による感染リスクを改めて封じ込めるために、飲食店における酒類の提供を一律に停止し、まん延防止等重点措置の対象となる地域でも酒類の提供は原則停止とし、地域の状況に応じて判断をする」

「飲食店への協力金の支給の遅れもあり、営業時間の短縮や酒類提供のルールに協力いただけない店舗が増え、多くの飲食店にとって酒の提供が営業を続ける上での死活問題となっているという声も耳にする。支給の遅れが経営問題に直結することがないように、これまでの協力金を簡易な審査で速やかに支給するとともに、今後の措置に協力いただける飲食店には協力金を事前に支払うことを可能とする」

申し訳なく思うが何とぞ協力を

「各都府県において、飲食店の見回りを拡大し、対策の実効性を高めていく。酒を伴う飲食はどうしてもマスクを外す時間が長くなり、大きな声での会話も避けられない。飲食店の皆さんにはたび重なるお願いで大変申し訳なく思うが、今一度、何とぞ協力をお願い申し上げる」

ワクチン接種によってコロナとの戦いに終止符を

「昨年来、一進一退の感染対策が続き、国民の皆様にはそのたびに、ご迷惑をおかけしてきた。未知の敵とのたたかいは、私にとっても心が休まる時はない。しかし、ワクチンによって、変異株であっても、発症や重症化を大きく抑えることができ、治療薬の開発も進んでいる」

「今、必要なことは、感染を抑えながら、1人でも多くの方にワクチンを接種していただくことだ。それによって、新型コロナとのたたかいに終止符を打ち、安心できる日常を必ず取り戻すことができると信じている。皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げる」

東京起点の感染拡大は絶対に避けなければ

「東京の感染拡大は、全国に広がりうるものだ。夏休みやお盆で、多くの人が地方に移動することが予想される。ワクチン接種が大きく進み、新型コロナとのたたかいにも区切りが見えてきた中で、ここで再度、東京を起点とする感染拡大を起こすことは、絶対に避けなければならない」

「先手先手で予防的措置を講じ、東京都に緊急事態宣言を今ひとたび発出する判断をした。ワクチンの効果がさらに明らかになり、病床の状況などに改善が見られる場合には、前倒しで解除することも判断する」

再び宣言でさまざまな負担 大変申し訳ない思い

「前回の宣言を解除してから3週間で再び宣言に至り、国民の皆様にさまざまな負担をかけることは、大変申し訳ない思いだ。しかし、この期間を乗り越えて、安心の日常を必ず取り戻すという決意で取り組んでいく」

東京五輪 ウイルスの国内流入を徹底して防ぐ

「東京オリンピックの開幕まで、あと2週間だ。緊急事態宣言のもとで、異例の開催となる。海外から選手団、大会関係者が順次、入国している。入国前に2回、入国時の検査に加え、入国後も選手は毎日検査を行っており、ウイルスの国内への流入を徹底して防いでいく。選手や大会関係者の多くはワクチン接種を済ませており、行動は指定されたホテルと事前に提出された外出先に限定され、一般の国民の皆さんと接触することはないように管理される」

5者会談で五輪観客の取り扱い 決める予定

「東京大会について、私はこれまで、緊急事態宣言となれば無観客も辞さないと申し上げてきた。そうした中で、このあとの組織委員会、東京都、IOC=国際オリンピック委員会などとの5者会談において、観客の取り扱いが決められる予定だ」

世界が一つになれること 東京から発信したい

「世界で40億人がテレビを通じて視聴すると言われるオリンピック・パラリンピックには、世界中の人々の心を一つにする力がある。新型コロナという、大きな困難に直面する今だからこそ、世界が一つになれること、そして、人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを、東京から発信したい」

「東京は、史上初めて、パラリンピックを2度開催する都市となる。障害のある方もない方も、お年寄りも若者も、みんなが助け合って、共に生きるという『共生社会の実現』に向けた、心のバリアフリーの精神をしっかり伝えたい。今回の大会は多くの制約があり、これまでの大会と異なるが、だからこそ、安心・安全な大会を成功させ、未来を生きる子どもたちに夢と希望を与える、歴史に残る大会を実現したい」

「先のG7サミット=主要7か国首脳会議の宣言の中に『日本だからこそ、こういう時にオリンピック・パラリンピックを開催をできる。成功を祈る』という趣旨も書き込まれている。各国の期待にもしっかり応えられる大会にしたい」

尾見会長「これからの1、2か月は重要な山場」

菅総理大臣の記者会見に同席した「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は東京都に再び緊急事態宣言を出すことについて、「きょうの分科会では政府の諮問案に全員一致で同意した。これからの1、2か月はこれまで1年半のコロナ対策の取り組みの中で最も重要な山場の1つだ。ワクチン接種の効果が高齢者を中心に見えはじめ高齢者の重症者数は抑えられてきている。ただ、感染性が強いと思われるデルタ株への置き換わりが確実に進んでいて、その影響とみられるが、40代、50代の比較的若い世代の重症者が増えてきている。このまま感染が拡大すれば、医療がひっ迫する蓋然性がかなり高いと判断しており、この期間になんとかして感染を抑えるべきだと考えている」と述べました。

菅首相 いまや世界でも最も速いスピードで接種

「ワクチン接種が加速し、自衛隊や医療関係者などの尽力により、いまや世界でも最も速いスピードで接種が行われていると言われている。1週間の接種回数は900万回を超え、累計の回数は、本格的に接種が始まってから5400万回を超えた。すでに高齢者の72%、全国民の27%が1回の接種を終えている。今のペースで進めば、今月末には希望する高齢者の2回の接種は完了し、1度でも接種した人の数は、全国民の4割に達する見通しだ」

接種が進む市町村に多く配分できるよう見直しへ

「予想を上回るペースで接種が進む中、一部の自治体などから『ワクチンが足りない』との声が聞かれる。全国の自治体には、先月までに9000万回分のファイザーのワクチンが人口に応じて配分され、そのうち4000万回が在庫となっていると見込まれる。7月から9月には、毎月2500万回分が配分されるため、在庫を合わせて活用すれば、1日120万回程度のペースで接種を続けることは可能だ」

「来月から、接種が進む市町村に多く配分できるよう見直しを行い、配分量をできるだけ早期に示すことで、接種が円滑に進むよう努めていく。企業や大学などの接種についても、受け付けた申請の精査を速やかに行い、確実に対応していく。大変なご心配をおかけしたが、十分な量が確保されており、速やかな接種に万全を尽くす」

日韓関係厳しいが大統領訪日の場合は丁寧に対応

菅総理大臣は、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領が、東京大会に合わせて日本を訪れた場合、首脳会談を行う考えはあるか、問われたのに対し「開会式への韓国からの出席者はまだ決定していないと承知している」と述べました。

そのうえで「現在の日韓関係は、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題などによって、非常に厳しい状況にある。日韓両国のこうした懸案を解決するためには、韓国が責任を持って対応していくことが重要だ。引き続き、韓国側に適切な対応を強く求めていくという立場に変わりはない」と述べました。

一方で「大統領が日本を訪れる場合は、外交上、丁寧に対応することは当然のことだと認識している」と述べました。

衆院選までの内閣改造「コロナ対策を最優先」

菅総理大臣は、記者会見で、記者団から、「先の東京都議会議員選挙を受けて、次の衆議院選挙までに内閣改造を行う考えがあるか」と問われたのに対し、「党内にいろんな声があることは承知している。私は常に、コロナ対策を最優先に取り組んでいきたいと考えている。私の自民党総裁としての任期、さらに、政治家としての衆議院議員の任期も間近にくるわけであり、そうした全体を考えながら、政策として、さまざまなことをめぐらせながら取り組んでいきたい」と述べました。

コロナ影響受けている方を支えることが最優先

菅総理大臣は、記者会見で、記者団が「与党内から、この夏にも経済対策の骨格をまとめるべきだとの声があるが、月内にも編成を指示する考えはあるか」と質問したのに対し、「新型コロナの影響を受けている方をしっかり支えることが最優先だ。資金繰りの支援や、雇用調整助成金による人件費の支援、飲食店の協力金は、早急にやっていきたい」と述べました。

そのうえで「新型コロナが国民の日常の生活に影響することに十分目配りしながら、当然、強い経済を大きな目標に掲げているので、強い経済をつくり、成長できるような国にしたい。経済の状況を見ながら、臨機応変にそこはしっかり対応する中で、常に経済対策は頭の中に入れながら、取り組んでいる」と述べました。

アストラゼネカ「諸外国の状況などを踏まえながら検討」

菅総理大臣は、記者会見で、記者団が「国内で承認されているものの使われていないアストラゼネカのワクチンを、接種の選択肢に入れる考えはあるか」と質問したのに対し「アストラゼネカのワクチンを接種で使用することについて、厚生労働省の審議会で、諸外国の状況などを踏まえながら検討されているところで、まだ結論は出ていない」と述べました。

そのうえで「専門家による議論の動向を注視しながら、まずは9月までに、ファイザーとモデルナの2億2000万回分を用意しているので、そこを使い切っていきたい。アストラゼネカのワクチンについては厚生労働省の審議会の結論を見る中で考えたいが、海外では、60歳以上という条件があるようなので、厚生労働省の中でも、しっかり海外の情報を集める中で、これから審議するということだろう」と述べました。

ロックイベント中止は残念

菅総理大臣は、記者会見で、記者団が、来月、茨城県で開催される予定だった、国内最大規模の屋外のロックイベントなどが中止となる中、東京大会を開催することへの疑問にどうこたえるか、質問したのに対し「ご指摘のイベントは、野外音楽フェスとしては最大級で、若い方を中心に大変楽しみにされていたと承知しており、中止となったことは大変残念に思う」と述べました。

そのうえで「イベントの開催制限については、東京オリンピック・パラリンピックも同様の取り扱いで、緊急事態宣言のもとでは、午後9時以降は無観客での開催をお願いすることになっているので、こうした点はご理解をいただきたい」と述べました。

感染拡大につながることは絶対避けなければ

菅総理大臣は、記者会見で、記者団から、「どのような状況を実現すれば、安心安全な東京大会が開催できたと言えるのか」と質問されたのに対し、「選手や大会関係者の徹底した検査や行動管理によって、ウイルスの国内への流入をまずは防ぎたい。国内の感染状況に影響が及ぶことがないようにしたい」と述べました。

その上で、「今回の東京大会が人流を引き起こし、感染拡大につながることは、絶対、避けなければならない。テレワークや交通量の規制により、大会の時の人流は、現在よりも極めて抑えられるという見通しの中で行うことになっている。それによって、ウイルスに侵入されず、感染拡大を阻止したという結果は大事だ」と述べました。