埼玉 ワクチン1回接種後に「デルタ株」感染したケースも

新型コロナウイルスの感染が再び広がる中、重症患者の治療にあたる病院ではインドで広がる変異ウイルス「デルタ株」の患者がみられるようになり、ワクチンを1回接種したあとに感染したケースも確認されたということです。

医師は「ワクチンが十分に行き渡らない中、1か月後には多くの患者が『デルタ株』に置き換わり、病床がひっ迫するおそれがある」と危機感を募らせています。

埼玉県川越市にある、埼玉医科大学総合医療センターでは、主に重症患者の治療にあたっていて、ことし5月の第4波では重症患者用のベッドが埋まり、一部の患者は中等症患者のベッドで対応にあたるなど、病床がひっ迫しました。

その後、入院患者は少しずつ減っていましたが、先週から再び増え始め、取材を行った7日は、20代から80代の男女5人が入院していました。

感染症科の岡秀昭教授によりますと、5人のうち、3人はイギリスで確認された「アルファ株」でしたが、2人はインドで広がった「L452R」の変異があるいわゆる「デルタ株」への感染が確認されたということです。

「デルタ株」に感染したのは、80代の夫婦で、いずれも先月(6月)中旬に1回目のワクチン接種を終えていましたが、その2週間後に発熱などがみられ、感染が確認されたということです。

このうち80代の妻は、入院する際には人工呼吸器をつけないと酸素を十分に取り込めないほど症状が悪化していたということです。

岡教授は「L452Rの変異のあるウイルスが出てきたところなので、今後、1週間ごとに増えていって全部、デルタ株に置き換わり、ベッドが埋まっていくことが心配される。ワクチン接種が1回しか進んでいない現状でデルタ株が増えてくると、1回接種した高齢者も安心できない状況だ」と危機感を募らせています。

「デルタ株」感染した夫婦は

インドで広がる変異ウイルス「デルタ株」に感染した80代の夫婦は、いずれも6月中旬に1回目のワクチン接種を終え、7月に2度目の接種が予定されていました。

しかし、接種からおよそ2週間後、発熱などの症状がみられ、その3日後にいわゆる「デルタ株」に感染していることが確認されました。

80代の妻が入院する際には、人工呼吸器をつけないと酸素を十分に取り込めないほど、症状が悪化していたということです。

肺のCT画像では、両側の肺に肺炎が起きていることを示す、白い影が広がっていて、炎症が肺の全体に及んでいることが確認できました。

感染経路は分かっていないということです。

治療にあたっている岡秀昭医師は「女性の肺の画像は、すりガラスのような影が広がっていて、厳しい状況になっていた。ワクチンは2回接種して2週間がたった段階でワクチンを終えたことになるので、それが進んでいない現状では、依然として高齢者が重症化して入院するケースが起きるのではないか」と警戒を強めています。

そのうえで、開幕が近づく東京オリンピックについて、医療の現場を担う立場として「この時期に開催するということであれば、やはり高齢者の重症者がそれなりに発生するという覚悟で、私たちは五輪の開催を受け入れないといけない」と話していました。