赤ちゃんとの避難 災害のとき どうすれば?

赤ちゃんとの避難 災害のとき どうすれば?
「赤ちゃん連れて避難どうしたらいいの」
「避難所の状況も分からないとほんとに行きづらいな…」

連日の大雨のニュースにSNS上では子どもを抱える親たちから、避難への不安を訴える切実な声が相次いでいます。
いざ、小さな子を連れて避難しなければならなくなったそのとき、どう判断し、どう行動しますか?
(ネットワーク報道部 記者 目見田健 藤島新也 芋野達郎 大分局 記者 片山晏友子)

6か月の娘が心配で

私(芋野)は、生まれて6か月の娘がいる親の1人です。

今はほぼ毎日、深夜の娘の夜泣きで目が覚める日々です。

今月、北海道から東京に引っ越してきたばかりの私たち家族。

娘は新しい環境に慣れていないのでしょう、夜泣きをする回数が増えた気がします。

そんな中、連日の大雨による被害のニュース。

ミルクを飲ませてようやく眠った娘を見ていたとき、避難所での生活に耐えられるだろうか、周囲に迷惑をかけてしまわないか、心配になり、取材を始めました。

避難の決断 どうしたら…

「災害発生したらどこにいたらいいかわからんくなる。うちの場合、小さい子達連れて大雨の中、避難する決断がちゃんとできるやろうか?必要最小限のものでも、子連れなら持ち物も増えちゃうし、家にいた方がって思っちゃうかも…」

SNS上にこんな投稿をした大阪に住む33歳の母親に話を伺うことができました。

この母親は3歳半と7か月の2人の子どもの子育て中。

子どもを連れての避難に、さまざまな局面で不安を抱えていました。

日常での外出でも小さな子どもを連れて外に出るのは勇気が必要な場合があるといいます。
母親
「最近では予測しにくい局所的な大雨もあり、具体的にどのタイミングで避難すべきなのか。そのとき、すでに危険な状況ではないのか。子どもの命がかかっているという大きな責任がある反面、判断が鈍ってしまいそうです」
このため、この母親は自治体からの避難情報などを調べて行動しようと考えています。
「自分で判断するよりも自治体に指示してもらったほうが自分の判断や行動に迷いが消えると思います」
夫が仕事で家に居なかった場合は、母親1人で2人の子どもを連れて避難することになります。1人は抱っこひもでだっこして、もう1人は歩かせて。

さらに、着替えやおむつ、お尻ふき、離乳食など、子どもたちのための荷物を持って安全に避難所に向かうことができるのか、不安を感じています。
「準備している物を全部持って行きたいと思うのですが、避難のタイミングが夜でさらに大雨だった場合、持って行く物を減らさないといけないかもしれない。そうすると不安になると思います」
そして、避難所での生活についても。
「子どもたちはふだんと違う環境に大きなストレスを感じると思います。避難所生活が長引くとさらにストレスは大きくなると思います」。
子どもたちが夜泣きをしたり、避難所で騒いでしまうかもしれない。

そのとき、同じように不安やストレスを抱えながら避難所に避難している人たちがそんな子どもたちを理解してくれるのだろうか。

最後に母親はこう話しました。
「たくさんの不安がある中で危険が迫っていても子どもを連れて避難する一歩が踏み出せるだろうか…。大人が身一つで避難するよりもずっとずっと決断に重みが必要になります」

夕方までに避難を

こんな場合、どうしたらいいのか。

防災に関する本を出版し、ご自身も子育て中の防災士・奥村奈津美さんに話を聞きました。
「家を出ようと思ったら子どもがウンチをしてしまいおむつを替えないといけないとか、靴を嫌がって履かせるのに手間取るとか、ふだんからありますよね。こうした“プチハプニング”はつきものなので、子どもがいる家庭では避難するまでに時間がかかると考えておくことが大事なんです」
奥村さんが強調していたのはいざ避難しようと思っても子どもをつれて逃げるのは「想像以上に大変で時間がかかる」ということ。
そこで奥村さんが提案しているのは、
▽「避難指示」では遅いので「高齢者等避難」が出たら避難を始める
▽夕方までに友人や親戚の家、ホテルなどに避難する
という2つです。
「『高齢者等避難』という名前に『高齢者』が入っているので自分たちとは関係ないと思っている方も多いかもしれないですが、子どもがいる家庭はこの情報が出た時が避難のタイミングです。また、夜に子どもを連れて逃げるのは大変だし危険です。寝ていれば起こすのも大変。不安があれば、夕方までに友だちの家に行くなど避難しておいた方が安心です」

友達や親族の家に

避難所に行くのが不安だという声についても、奥村さんに対策を聞いてみました。
「確かに避難所は、まだまだ環境が整っていないことが多いです。子どもも眠れないことがあるので、友達の家や親族の家など、避難所以外の選択肢を考えておくことをおすすめします。お金はかかりますが、思い切ってホテルを予約して、避難してもよいかもしれません」
また、奥村さん自身が実践している準備も教えてくれました。
「“ママバッグ”は災害時にも役立ちます。ふだんはお出かけ前に中身を準備する方が多いと思いますが、おすすめは帰宅後に整えておくこと。そうするといざという時にもパッと持って避難できます」
「いつもと違う場所だと子どもも緊張するので、リラックスできるように食べ慣れているお菓子や音が出ないおもちゃを持っておくとよいです。わが家は100円ショップでも売っているシールを貼れる本『シールブック』を入れています」

避難所に女性職員を

小さな子どもを抱えた母親も不安なく避難所で生活できるよう、運営方法を見直す自治体も出てきています。

大分県の宇佐市と玖珠町は、今年度からすべての指定避難所にあらかじめ1人以上の女性職員を配置する取り組みを始めました。

このうち、玖珠町では、去年、避難所にいた女性職員が、白い布で四方を囲んで、女性が着替えたり、授乳したりできるようなスペースを作ったケースもあったということで、母親も安心して避難できるような取り組みも広げたいということです。
玖珠町基地・防災対策課の幸野弘靖主査
「豪雨災害など規模が大きくなるほど避難者のニーズも多様化するので、小さな子どもを抱える母親も安心して過ごせる避難所にしていきたい」

安心して避難するために

私が今回取材して改めて感じたのは、小さな子どもを抱える親にとって、避難することのハードルの高さです。

妻は「避難所に行って迷惑をかけるぐらいなら、ぎりぎりまで自宅にいようと思ってしまうかも」と考え込んでいました。

もちろん、避難は早めにするのが鉄則です。

そのためには、いかに避難することのハードルを下げるか。

それぞれの親がふだんから準備をしっかりするとともに、不安なく避難所に行くことができる行政のサポートも大切だと感じました。