【ここに注目】野球

野球は開催都市が提案できる追加競技として2008年の北京大会以来、3大会ぶりに行われます。日本は稲葉篤紀監督のもと悲願の金メダルを目指します。

トーナメント形式は変則的

東京オリンピックの野球。出場するのは開催国枠の日本、予選を勝ち抜いたアメリカ、韓国、メキシコ、ドミニカ共和国、イスラエルのあわせて6チームです。
これまでの大会とは異なり、敗者復活が組み込まれた変則的なトーナメント形式で争われます。予選リーグは世界ランキングによって3チームずつが2つのグループに分けられ、総当たり戦で順位を決めます。
決勝トーナメントにはすべてのチームが進み、最初に予選リーグの同じ順位のチームどうしが対戦します。1位どうしの対戦で勝てば準決勝へ進み、2位どうしの対戦の勝者と3位どうしの対戦の勝者は準々決勝で対戦し、勝ったほうが準決勝へ進みます。
一方、予選リーグを1位か2位で通過して決勝トーナメントの初戦で敗れたチームや、準々決勝や準決勝で敗れたチームは敗者復活にまわり、そこから勝ち上がれば決勝に進むことができます。
すべて順調に勝ち進んで試合数が最も少ない場合は初戦から決勝まで11日間で5試合となります。また敗者復活にまわって試合数が最も多い場合は、初戦から決勝まで11日間で6連戦を含む8試合の過密日程となります。
東京オリンピックでは引き分けがなく、延長10回以降は「タイブレーク制」が採用され、ノーアウト一塁二塁から攻撃が始まることになります。そして判定に異議がある場合、監督がリプレー映像による検証を要求できます。
さらに、試合時間短縮のためのルールが採用され、ランナーがいない場合のピッチャーの投球間隔は20秒以内、監督や投手コーチがタイムを取ってマウンドに行く場合は30秒以内、ピッチャーの交代とイニング間の攻守交代は90秒以内に制限されます。このため、選手やベンチから見える場所に時計が設置されます。
試合は5回以降に15点差、7回以降に10点差がついた時点で「コールドゲーム」となりますが、決勝と3位決定戦では適用されません。
また、指名打者制が採用されることになりました。

日本代表の顔ぶれ

【投手】
田中将大(楽天)/山本由伸(オリックス)/平良海馬(西武)/岩崎優(阪神)/青柳晃洋(阪神)/大野雄大(中日)/森下暢仁(広島)/栗林良吏(広島)/山崎康晃(DeNA)/千賀滉大(ソフトバンク)/伊藤大海(日本ハム)
【キャッチャー】
甲斐拓也(ソフトバンク)/梅野隆太郎(阪神)
【内野手】
浅村栄斗(楽天)/源田壮亮(西武)/坂本勇人(巨人)/山田哲人(ヤクルト)/村上宗隆(ヤクルト)/菊池涼介(広島)
【外野手】
柳田悠岐(ソフトバンク)/栗原陵矢(ソフトバンク)/吉田正尚(オリックス)/近藤健介(日本ハム)/鈴木誠也(広島)

経験と若さの融合

稲葉監督は4年前に就任してから東京オリンピックに向けて「スピード&パワー」と「守り勝つ野球」をチーム作りのテーマに掲げてきました。
視察と会議を重ねて選び抜いた24人は、国際大会の経験が豊富な選手を土台にしながら、勢いのある若手を融合した布陣になっています。

【投手】
稲葉監督は夏場の暑さによる体力の消耗を考慮すると、早めの交代が必要だとして、ピッチャーの人数は2008年の北京大会より1人多い11人を選びました。
その北京大会の唯一の経験者で大リーグから復帰して8年ぶりに日本代表でプレーする田中投手が先発陣を引っ張り、22歳の山本投手が投手陣の軸となることが期待されます。
さらに21歳の平良投手、2年目の森下投手、ルーキーでただ1人選ばれた栗林投手といった急成長を遂げた若手が初めて選出されました。
こうした新戦力が短期決戦となるオリンピックの独特の緊張感の中で、田中投手などの経験豊富なピッチャーからの助言を受けながら、シーズン中と同じようなピッチングをできるかが大きなポイントとなります。
また、2017年のWBC(=ワールド・ベースボール・クラシック)で好投を見せた千賀投手は左足首のじん帯損傷から1軍復帰を果たせていない中で追加招集が決まりました。シーズンで本調子とは言えないピッチャーが大会本番までにどれほど調子を整えられるかも注目です。
2年前の国際大会「プレミア12」は盤石なリリーフ陣が日本を初優勝に導きましたが、今回は勝ち上がり方によって試合数や試合日程が変わる複雑な大会方式のため稲葉監督がどのように11人を起用するのか、その手腕が問われます。
【野手】
野手は鈴木選手、坂本選手、菊池選手など「プレミア12」の優勝メンバーが中心で、ここに2018年の日米野球で大リーガー相手に活躍した柳田選手や強打者に成長した21歳の村上選手などが加わりました。
一方、「プレミア12」ではソフトバンクの周東佑京選手が代走で大きな役割を果たしましたが、オリンピックのメンバー数は4人少ない24人のため、“足のスペシャリスト”は選出されませんでした。
「プレミア12」で日本の打線は初対戦となった外国人ピッチャーが投げる手元で小さく変化する速球に苦しみましたが、バントや足を絡めて着実に1点を奪いにいく攻撃が功を奏しました。
また今回のメイン会場の横浜スタジアムは比較的ホームランが出やすいとされ、ひと振りで試合の流れが大きく変わることも予想されます。
稲葉監督が「“スピード&パワー”を具現化してくれる選手たち」と胸を張ったメンバーで組む打線がどのように機能するか注目です。

日本のライバルは

<韓国>
日本が連覇した2006年と2009年のWBCなど、国際大会でたびたび対戦している長年のライバルです。2008年の北京大会では準決勝で日本に勝ち9戦全勝で金メダルを獲得しました。「プレミア12」は決勝で日本に敗れ準優勝でした。北京オリンピックで指揮を執ったキム・ギョンムン監督が今回もチームを率います。
<アメリカ>
監督は2018年までの19年間大リーグ・エンジェルスを率い、大谷翔平選手の入団時の監督だったマイク・ソーシア氏が務めます。大リーグで実績を残したベテランやマイナーリーグでプレーする若手で編成される見込みです。公開競技として行われた1988年のソウル大会で金メダルを獲得し、正式競技となったあとも2000年のシドニー大会で金メダルを獲得しています。
<メキシコ>
「プレミア12」でアメリカを破って3位に入り、出場権を獲得しました。WBCには4回すべて出場していますが、オリンピックは初出場です。国内のリーグでプレーする選手を中心に編成され、元阪神のナバーロ選手や元オリックスのメネセス選手、それに大リーグで通算317本のホームランを打っているエイドリアン・ゴンザレス選手もメンバー入りしました。
<ドミニカ共和国>
6月の最終予選は大リーグ経験者やマイナーリーグでプレーする選手たちで編成され、打線が強力でした。決勝でホームランを打ったメルキー・カブレーラ選手は大リーグ通算1962安打の実績を誇り、メンバーに入りました。大リーグで344本のホームランを打っているホセ・ボティースタ選手や日本のプロ野球でプレーする巨人のメルセデス投手とサンチェス投手も選ばれました。オリンピックには公開競技として行われた1984年ロサンゼルス大会と、初めて正式競技として行われた1992年のバルセロナ大会に出場していますが、いずれもメダル逃しています。
<イスラエル>
アメリカ出身でイスラエル国籍を持つユダヤ系選手などで編成され、アメリカのマイナーリーグでプレーする選手や元大リーガーなどで構成される見込みです。2017年のWBCでは、韓国やキューバを破って旋風を巻き起こしました。オリンピックは初出場でヨーロッパ・アフリカ予選ではオリンピック4回出場のオランダやイタリアなどを破りました。

日本 五輪正式競技となって以降は「銀」が最高

▽1984年ロサンゼルス:金メダル(公開競技)
▽1988年ソウル:銀メダル(公開競技)
▽1992年バルセロナ:銅メダル
▽1996年アトランタ:銀メダル
▽2000年シドニー:4位(史上初のプロ・アマ合同チーム)
▽2004年アテネ:銅メダル(初の全員プロ)
▽2008年北京:4位

野球は世界的な人気に欠けることや球場の建設費が高いことなどから、2012年のロンドン大会からソフトボールとともに正式競技から外れ、前回2016年のリオデジャネイロ大会でも実施されませんでした。
さらに次の2024年のパリ大会でも実施されないことが決まっています。
日本は正式競技になって以降、大きな期待を受けながら金メダルを逃し続けてきました。自国開催で復活した大会でプロ野球のスター選手たちがその重圧に打ち勝ち、新たな歴史を刻むことができるのか注目です。