ヤングケアラーの実態調査 都道府県などの7割“予定なし”

家族の介護やケアを担う子どもたち、いわゆる「ヤングケアラー」を支援するため、国は都道府県や政令指定都市に実態調査を行うよう促しています。こうした中、NHKが自治体に取材したところ、7割が調査の予定がないと回答し、自治体ごとに対応の差が出ていることがわかりました。

家族の介護や心のケアなどを担っている子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれ、昨年度国が行った調査では中学生の17人に1人に上ることが明らかになり、国はより具体的な支援を行うため、詳しい実態調査を行うよう、都道府県や政令指定都市に促しています。

これについて、NHKが先月から今月にかけて全国の47都道府県と20の政令市に取材したところ、70%にあたる合わせて47の自治体が「調査の予定がない」か「調査したいが具体的に決まっていない」と回答しました。

調査の予定がない理由として、ほとんどの自治体が、ヤングケアラーの問題が福祉や教育など複数の分野にまたがるため調整が進んでいないと答えたほか、予算の問題だと回答した自治体もありました。

一方、埼玉県やさいたま市、大阪府など20の自治体は「すでに実施」または「今年度中に実施予定」と回答していて、自治体ごとの対応の差が浮き彫りになっています。

担当決められず「どう調整したらいいか」

「ヤングケアラー」の実態調査の予定がないと回答した自治体のほとんどが課題としてあげたのが、組織の縦割りによる調整の難しさです。

「ヤングケアラー」の支援はさまざまな観点から行う必要があり、多くの自治体では管轄する部局が複数にまたがります。

例えば、子どもの支援は福祉の観点から福祉部局が行うことが欠かせないほか、子どもが通う学校でも目配りするため、教育委員会も関係する必要があります。

さらに子どものケアを受ける家族への支援も、介護が必要な場合と医療が必要な場合では担当が分かれるうえ、さらに介護が必要な場合でも、高齢者と障害者ではさらに担当が細分化されています。

このため、多くの自治体が担当を決められないまま足踏みしていて、中には「どう調整したらいいかわからず何も決まらない」といった声も聞かれました。

支援進む自治体は

こうした中、縦割りを越えて「ヤングケアラー」の支援を始めたのが神戸市です。

今年度から支援を一元的に行うため「こども・若者ケアラー支援担当課長」というポストを新たに設けたうえで、全国で初めてヤングケアラー問題に特化した専用の相談窓口を開設しました。

神戸市でも実態調査の予定については具体的に決まっていないということですが、複数の分野にまたがった課題を解消するための取り組みが成果をあげるか注目されています。

また、ヤングケアラーの実態調査を終え、具体的な支援に向けた取り組みを進めているのが、埼玉県です。

県は、今年度から介護の現場で活動しているケアマネージャーを対象にした研修会を開いているほか、秋には「ヤングケアラー」が悩みをオンラインで共有できる場を設けることにしています。

厚労省「来年度には調査検討を」

「ヤングケアラー」を所管している省庁のうち、厚生労働省は「問題を明らかにするためにも、まずは調査することが大切だ。調査の予定がない自治体も、来年度には調査を検討してほしい」と話しています。

専門家「自治体は最優先で実態調査を 国は支援の法制化を」

「ヤングケアラー」の問題に詳しい大阪歯科大学の濱島淑恵教授は「調査に積極的かどうかで、子どもたちに対する支援に差が出てくるのではないかと非常に懸念している。児童福祉のさまざまな問題の予防にもつながるため、自治体には部署の縦割りなどの課題を乗り越えて、最優先で実態調査をしてほしい」と述べました。

そのうえで調査にあたっては「必ずしも全数調査の必要はなく、きちんと無作為抽出すれば、欲しい情報は手に入るので、専門家に相談しながら進めてほしい」としています。

また、国の役割については「制度的な裏付けを作っていくのが国のこれからの役目だ。『ヤングケアラー』の支援を制度化することで、各自治体はかなり動きやすくなるので、国には法制化を急いでほしい」と話していました。