河井元法相 買収事件 現金受け取った議員ら100人全員不起訴

おととしの参議院選挙をめぐり、河井克行元法務大臣が実刑判決を受けた大規模買収事件で、東京地検特捜部は6日に、地元議員など現金を受け取った側の100人全員を不起訴にしました。元大臣側から一方的に現金を渡されたケースが多いことなどを考慮したとしています。受け取った側全員の刑事責任を問わないのは異例です。

元法務大臣の河井克行被告は、妻の案里元議員が初当選した、おととしの参議院選挙をめぐり、広島の地元議員や後援会メンバーなど100人に、およそ2900万円を配ったとして公職選挙法違反の買収の罪に問われ、東京地方裁判所は6月に、100人への現金提供をすべて買収だったと認定し、懲役3年の実刑判決を言い渡しました。

元大臣側は判決を不服として控訴しています。

この事件で、広島市の市民グループは去年9月、受け取った側が刑事処分されていないことについて「処罰の公平性に疑問が生じる」として、公職選挙法違反の疑いで告発し、東京地検特捜部は処分を検討していましたが、6日に100人全員を不起訴にしました。

1人に提供された金額は最高300万円で、50万円を超える現金を受け取った議員も多くいましたが、特捜部は、衆議院議員として政治的な影響力のあった元大臣側から、一方的に現金を渡されたケースが多いことなどを考慮したとしています。

買収事件で現金を受け取った側、全員の刑事責任を問わないのは異例です。

33人が現職の地方議員

河井克行元大臣の判決で現金を受け取ったと認定された100人のうち、40人が市長や町長、地方議員といった政治家で、また選挙スタッフだった1人がその後、選挙に当選し地方議員になりました。

一部は、現金の受け取りが発覚したあとに辞職するなどし、現在は33人が地方議員を務めています。

公職選挙法違反の罪に問われ罰金刑以上の有罪とされると失職する可能性がありましたが、起訴されなければ失職しません。

金額別に見ますと、
▽亀井静香元建設大臣の秘書が最高額の300万円、
▽広島県議会の奥原信也議員が200万円、
▽三原市の天満祥典前市長が150万円と、
100万円を超えていました。

また、50万円以上受け取った地元の政治家は16人に上っていました。

東京地検 次席検事 不起訴理由を説明

東京地方検察庁の山元裕史次席検事は、地元議員ら100人を不起訴にした理由を説明しました。

この中で、山元次席検事は「積極的に現金を求めた人はおらず、受け取りを拒んだのに無理やり渡されたり、河井元大臣とは立場に差があり、現金をやむをえず受け取った人もいるなど、酌むべき事情がある。犯行の性質、事案の本質を考えると、元大臣と案里元議員の2人を処罰することがあるべき姿と考えた」などと述べました。

元裁判官「全員不起訴に大きな疑問」

元刑事裁判官で、法政大学法科大学院の水野智幸教授は「買収の罪では、現金を渡した側だけでなく、受け取った側も当然、同じように罪に問われることが規定されている。しかし、この時期まで起訴するかどうかについて結論が先延ばしされたうえ、検察が全員を不起訴としたことには大きな疑問を感じる。受け取った側の中には、自治体のトップや議会の議員など、公職の立場にある人も多く、数十万円単位で受け取った人もいる。金額の大きさや立場を踏まえ、選挙の公正さを害した程度が大きい人については起訴すべきだったと考えられる」と指摘しています。

元検事 弁護士「一律不起訴の判断に合理性も」

元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「100人が受け取った金額は5万円単位から100万円単位までバラツキがあり、事件発覚後、責任をとって公職を辞めた人や現金を返した人など、いろいろな差がある。こうした要素をもとに起訴・不起訴の範囲を決めることもあるが、今回は人数が100人に及んでいて、一つ一つ区分けをして国民にわかるように説明するのは難しい。検察の処分の公平さを維持するためには一律不起訴という判断も合理性はあると思う」と指摘しました。

告発した市民グループ「検察の在り方 問われる」

広島の県議会議員など100人を公職選挙法違反の疑いで検察に告発していた広島市の市民グループの山根岩男事務局長は「現金をもらった側が全員不起訴になったのは検察の在り方が問われる。不起訴は不当だとして、できるだけ早く検察審査会に審査を求めたい」と話しています。