オウム真理教松本智津夫元死刑囚遺骨 次女引き取り確定 最高裁

オウム真理教元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫元死刑囚の遺骨を遺族の誰が引き取るかが争われた審判で、最高裁判所は、海に散骨する意向を示していた四女などの特別抗告を退ける決定をし、次女が引き取ることが確定しました。

平成30年に松本智津夫元死刑囚に死刑が執行されたあと、法務省は遺骨について、松本元死刑囚本人が執行前に示した意向に基づいて、教団と関係を絶ったとされる四女に引き渡す方向で検討し、四女側も信者の信仰の対象にならないよう、遺骨を引き取って海に散骨する意向を示しました。

これに対し、元死刑囚の妻と4人のほかの子どもが「元死刑囚の精神状態から、特定の人を指定することはありえない」として引き取りを要望し、遺骨は受取人が決まらないまま、東京拘置所で保管されてきました。

このため次女と四女が受取人を確定させる審判をそれぞれ申し立てたのに対し、東京家庭裁判所は去年、四女ではなく、次女を受取人とする決定をしました。

非公開の審理のため理由は明らかにされていませんが、元死刑囚本人が刑の執行前に四女を引き取り先とする意向を示したとされたことについて、裁判所は有効なものと認めなかったとみられます。

東京高等裁判所もことし3月に次女を受取人とする決定をし、四女のほか、妻と次男もこれを不服として特別抗告していました。

これについて、最高裁判所第3小法廷の戸倉三郎裁判長は5日までに退ける決定をし、次女を遺骨の受取人とする決定が確定しました。

松本元死刑囚の遺骨をめぐっては、公安当局がオウム真理教から名前を変えた「アレフ」の信者などの崇拝の対象になりかねないと懸念していて、今後、次女が遺骨を引き取ったあと、どのように取り扱われるかが焦点となります。

遺骨をめぐる経緯

オウム真理教の元代表の麻原彰晃、本名・松本智津夫元死刑囚は3年前の平成30年7月、教団のほかの元幹部とともに死刑が執行されました。

関係者によりますと、松本元死刑囚は刑が執行される前、みずからの遺体を四女に引き渡したいとする意向を示したとされ、法務省も当初、教団や親との関係を絶ったと表明した四女に遺骨を引き渡す方向で調整を進めていました。

これを受けて、四女の代理人を務める弁護士は刑の執行後に記者会見を開き、四女が遺骨を引き取ったうえで「元死刑囚に帰依する者が存在する以上、遺骨を埋めるとその場所が聖地になるおそれがある」として、太平洋に散骨したいという考えを示していました。

一方、元死刑囚の妻と次女、三女、長男、それに次男の合わせて5人は法務省宛てに要望書を提出し、遺体は妻に引き渡すよう求めたうえで「元死刑囚の精神状態からすれば、特定の人を引き取り人として指定することはありえない」などと主張。

遺骨は引き渡し先が決まらないまま、東京拘置所で保管され続ける事態となっていました。

平成30年12月、四女は遺骨の受取人を確定させる「祭祀承継」と呼ばれる審判を東京家庭裁判所に申し立て、次女も同様の審判を申し立てました。

「祭祀承継」の審判は、遺骨や墓、位はいなどを誰が引き継ぐのかが親族の間で争われて決まらない場合に、裁判所が受取人を決める手続きです。

家庭裁判所の審判は、途中の審理や決定の内容もすべて非公開とされるため、申し立ての内容や審理の経過は明らかにされませんでしたが、法定相続人となる妻と6人の子どものうち、誰を受取人とするかが争われました。

その結果、東京家庭裁判所は去年9月、四女ではなく次女を受取人とする決定を出し、東京高等裁判所もことし3月、同様の決定をしました。

決定の理由は明らかにされていませんが、元死刑囚本人が刑の執行前に四女を引き取り先とする意向を示したとされたことについて、家庭裁判所も高等裁判所も有効なものとは認めなかったとみられます。

高等裁判所の決定を不服として、四女のほか、妻と次男も最高裁判所に特別抗告していました。

公安調査庁によりますと、オウム真理教から名前を変えた「アレフ」などの団体は、今も元死刑囚の写真を掲げるなど、元死刑囚への帰依を深める活動を継続しているということです。

四女の代理人がコメント「極めて遺憾」

四女の代理人を務める滝本太郎弁護士は5日夜、コメントを出しました。

この中で滝本弁護士は「東京家庭裁判所と東京高等裁判所の決定は『松本元死刑囚が“四女”とか、四女の名前を述べたとしても、この言動だけで、元死刑囚が生存していれば四女を受取人に指定しただろうと推定することは困難だ』としている。元死刑囚が執行の直前に受取人を四女と指定する趣旨で述べたにもかかわらず、その重要な自己決定権の行使を尊重していないもので、極めて遺憾だ」と批判しています。

そのうえで、最高裁判所の決定について「元死刑囚の自己決定権を侵害した高裁の判断を認めていて、適正ではない」としています。

江川紹子さん「治安上 大変なリスク」

オウム真理教による一連の事件を発生当初から取材してきた、ジャーナリストで神奈川大学国際日本学部の江川紹子特任教授は「大変驚がくした。遺骨を海に散骨する考えを示していた四女ではなく、どのように取り扱うかが分からない家族に引き取られてしまうと、いずれかの場所に埋葬されて『聖地』となるおそれがあるほか、分骨されて教団の手にわたる可能性もある。松本元死刑囚は今も教団の信者らの信仰の対象になっているので、遺骨が信者の手にわたると、帰依を強めることにつながり、治安上、大変なリスクだ」と指摘しています。

そのうえで「司法判断が出たとはいえ、すぐに引き渡すことは大きなリスクがあるので、遺骨を管理している法務省は、どのような対応がとれるのか検討を尽くすべきだ」と話しています。

公安当局「遺骨の扱いがどうなるか注視」

今回の最高裁判所の決定について、公安当局の関係者は「次女が本当に遺骨を引き取るのかどうかなど、遺骨の扱いがどうなるかについて今後注視する必要がある。後継団体の信者にとって遺骨が信仰の対象とならないか、警戒が必要だ」と指摘しています。

公安調査庁「引き続き活動状況を明らかにしていく」

公安調査庁は「報道については承知しているが、公安調査庁としてコメントする立場にない。引き続き、観察処分を適切かつ厳格に実施し、当該団体の活動状況を明らかにしていく」とコメントしています。