静岡 熱海の土石流 死者3人 所在不明住民は80人 確認急ぐ

静岡県熱海市の伊豆山地区で起きた土石流で、救助された人のうち高齢の女性1人の死亡が確認され、亡くなった人は3人となりました。
市は住民基本台帳を基にした被害地域の調査で所在のわかっていない人たちの名前を公表して確認を急ぐことにしています。

熱海市の現場では5日も警察や消防、自衛隊が早朝から捜索や救助に当たっていて、天候をにらみながらの活動が続いています。

熱海市の斉藤栄市長は5日朝に開いた災害対策本部のあと記者会見し、4日までに救助された23人のうちけがをしていた高齢の女性1人が死亡したと明らかにしました。

市によりますと、女性は倒壊した住宅から救助され病院に搬送されましたが、4日午後1時45分ごろ死亡が確認されたということで、今回の土石流による被害で亡くなった人は3人となりました。

また、市は住民基本台帳に基づいて被害を受けた地域に住んでいたとみられる人の所在の確認を進めていて、これまでに避難所の名簿の照合などを行った結果、まだ確認できていない人はこれまでの113人から80人になったと発表しました。

県と市では引き続き確認作業を進めていますが、所在がわかっていない人については、土石流の被害を受けたのか転居などで連絡がとれないのかが判断できないとして、情報の収集を急ぐため名前や住所を公表することを決めました。

県では人命救助を最優先に進めることが重要だとしていて、県と市は名簿の準備ができしだい公表し、所在の確認を急ぐことにしています。

「安否の連絡を」静岡県が呼びかけ

静岡県は、今回の土石流の救助活動を速やかに進めるため、被害にあった地域に住んでいる人や住宅などを所有している人に対して、自分や家族などの安否を自治会の役員など、ふだんから連絡をとっている地域の人に知らせるよう呼びかけています。

県は、熱海市は別荘の利用者が多いことから居住の実態が把握しにくく、安否の確認に時間がかかっているとしています。

熱海市内の小中学校 臨時休校

静岡県熱海市の伊豆山地区で土石流が発生したことを受けて、市の教育委員会は、依然、土砂災害のおそれがあるとして、5日、市内の小中学校を臨時休校にしました。

熱海市の伊豆山地区で土石流が起きてから3日目となりましたが、熱海市には今も土砂災害警戒情報が出されています。

これを受けて市の教育委員会は、土砂災害の危険に加えて通学路が寸断されていたり安全の確認ができなかったりすることから、市内の11の小中学校を臨時休校にすることを決めました。

6日以降については、対応を検討しているということです。

また各校には、被災した児童・生徒の心のケアに努めるよう指示したということで、中でも土石流の現場に近い小中学校には、スクールカウンセラーを派遣するよう県の教育委員会に依頼したということです。

主要道路の通行止め続くも電車は平常どおり

静岡県熱海市で土石流が発生して3日目となりますが、隣接する神奈川県とを結ぶ有料道路や国道などの主要な道路は通行止めが続いています。

一方、JR熱海駅は新幹線、在来線とも平常どおりの運転に戻っていて、朝から通勤や通学で利用する多くの人の姿が見られました。

熱海市と神奈川県の湯河原町の6キロ余りを結ぶ有料道路「熱海ビーチライン」は3日、熱海市伊豆山地区で発生した土石流の影響で通行止めとなっています。

5日の朝も熱海市側の入り口は通行止めと書かれたゲートで閉ざされ、道路の復旧作業にあたる工事車両などを除く一般車両の通行はできなくなっています。

また、熱海市の中心部を通る国道135号線も市内の一部の区間で通行止めが続いていて、警察官などが通行止めの区間に住んでいる住民などを除き、通行しないよう誘導していました。

静岡県などによりますと、いずれの道路も通行止め解除の見通しは立っていないということです。

またJR熱海駅は新幹線と在来線ともに平常どおりの運転に戻っていて、5日朝は通勤や通学で利用する多くの人の姿が見られました。

横浜から通勤のため在来線を利用したという50代の男性は「電車が平常どおり運行しているのか心配になり、きょうは念のため早めに家を出てきました」と話していました。

伊豆山地区で約1100戸が断水(4日午後5時)

静岡県によりますと、4日午後5時の時点で、土石流が起きた熱海市伊豆山地区の全域で、およそ1100戸が断水しているということです。

熱海市は、簡易水槽や給水タンクを設置し、6か所で給水を行っていて、給水を受ける際は容器を持参するよう呼びかけています。

最新の情報は、市の公式ウェブサイトとツイッターにも掲載しています。

また県によりますと、ガスの供給についても伊豆山地区と海光町地区の一部、392戸で停止しているということです。

一方、東京電力は、土石流の被害を受けたおよそ370軒以外については現時点で、停電は復旧しているとしています。

自宅に残る人の生活にも大きな影響

土石流が起きた静岡県熱海市伊豆山地区では、今も断水が続いているほか、避難先に空きがないため、自宅に残っている高齢者などもいるということで、生活に大きな影響が出ています。

熱海市の伊豆山地区では、5日も断水が続いているほか、一部の住宅ではガスも使えない状況が続いています。

地区の仲道公民館の前に設けられた給水所には、5日朝早くから多くの人たちが訪れていました。

町内会の関係者によりますと、地区では避難所に空きがないため、自宅で過ごしている高齢者などがいるということです。

仲道町内会の高橋照幸副会長は「断水やトイレなどが使えない状況が続き、今、自宅に残っている人たちの生活にも影響が出ています。行政には自宅に残っている人たちも気にかけてほしいです」と話していました。

避難所の住民たちの証言

自宅が被害を受けた人などは市内のホテルで避難生活を続けています。

伊豆山地区に住む中田好保さん(72)は「数年前の台風で自宅の裏山が少し崩れたこともあり、周辺が土砂災害警戒地域となっていることは知っていた。ただ当時の斜面は崩れたあとに舗装されたので、まさかこんなことが起こるとは思わなかった」と話していました。

伊豆山地区に自宅がある草柳孝幸さん(49)は「土石流が来たことがわかって、すぐに隣の家に住む母のもとへ向かおうとしましたが、すでに土砂が流れ込んでいて、今も行方がわかりません。避難を促すアラームが携帯から鳴っていることには気付いていたので、そのときに避難を始めていればよかった」と話していました。

また後藤光雄さん(75)は「自宅の目の前の少し低い土地にあった家はとても大きなゴーという音とともに一瞬にして流されてしまい、地獄を見ているようでした。会えば、あいさつをしたり回覧板を回し合ったりする近所の2人の行方がわかっていないので、とても心配です」と話していました。

日銀など金融機関に要請“被災者に柔軟な対応を”

日銀と東海財務局は金融機関に対して、今回の大雨で災害救助法が適用された静岡県熱海市の被災者が、預金の払い戻しなどを求める場合は、柔軟に対応するよう要請しました。

このうち、銀行や信用金庫などの金融機関に対しては、被災した人が預金通帳やはんこをなくした場合でも本人だと確認できれば預金の払い戻しに応じること、また、期限がくる前でも定期預金の払い戻しに応じることなどを求めています。

さらに、急ぎの資金を必要としている人に対しては、融資の審査手続きをできるだけ簡単にするなど、迅速に対応するよう要請しています。

また、損害保険会社や生命保険会社に対してもできるかぎり保険金を迅速に支払うよう求めています。

宅配便や郵便物 影響続く

大雨の影響で静岡県内では、引き続き宅配便や郵便物の配達に影響が出ています。

このうちヤマト運輸は、静岡県熱海市の一部で荷物の配達や預かりを取りやめています。

また、静岡県熱海市や沼津市が宛先になっている荷物については、利用者から預かる際に「配送に遅れが出るおそれがある」と断ったうえで受け付けているということです。

佐川急便も静岡県熱海市では、荷物の配達や預かりを取りやめているほか、静岡県沼津市、富士市、富士宮市、それに静岡市清水区の一部で配達などに遅れが出ているということです。

各社は最新の状況をホームページなどで確認してほしいとしています。

また、日本郵便も大雨の影響で、熱海市では熱海郵便局や網代郵便局など、市内8つの郵便局すべてで窓口業務を休止しています。

また、東海地方を中心に郵便物やゆうパックなどの配送に遅れが出ていて、今後の大雨の状況によってはほかの地域でも遅れが発生するおそれがあるとしています。

宿泊事業者に電話相談窓口 観光庁

観光庁は、今回の大雨で被害を受けたホテルや旅館などの宿泊事業者向けに支援策を紹介する電話相談の窓口を設置しました。

窓口は、名古屋市にある中部運輸局観光企画課に5日から設置されました。

番号は052-952-8045で、平日の午前9時から午後5時45分まで受け付けます。

窓口では被害の状況を聞き取ったうえで
▽設備の復旧などに関する低金利の融資制度や
▽従業員の雇用を維持した場合に、休業手当の一部を助成する雇用調整助成金など
さまざまな支援策を紹介することにしています。

観光庁は「新型コロナウイルスの影響で利用者が落ち込む中で起きた災害なので、困りごとがあればどんなことでも相談してほしい」と呼びかけています。

天皇皇后両陛下 お見舞いの気持ち伝えられる

天皇皇后両陛下は、土石流による災害で被害が出ている静岡県の川勝知事に、側近を通じてお見舞いの気持ちなどを伝えられました。

宮内庁によりますと、両陛下は、熱海市で起きた土石流で犠牲者が出たことや多くの人の所在が不明となっていることに深く心を痛められているということです。

そして、犠牲となった人たちを悼み、被害を受けた人たちへのお見舞いの気持ちとともに、災害対策のために尽力している人たちをねぎらう思いをあらわされました。

こうしたお気持ちは、5日、側近を通じて静岡県の川勝知事に伝えられました。

菅首相「1人でも多く 救出に全力で取り組む」

静岡県熱海市の伊豆山地区で起きた土石流について、菅総理大臣は5日午前、総理大臣官邸で記者団に対し、行方不明者の確認を進めると同時に、1人でも多くの人をできるだけ早く救出するため全力で取り組む考えを強調しました。

この中で菅総理大臣は「災害発生以来、連日、関係閣僚会議などを開き対応している。行方不明者については家屋が喪失されているので、熱海市長から、もう一度、台帳などを精査して何人であるかを確認したいという報告も受けている」と述べました。

そのうえで「地方自治体と一体となって行方不明者の方を明確にすると同時に、土砂の中に埋まって助けを求めていると思われる方を1人でも多くできるだけ早く救出するため、警察、自衛隊、消防、海上保安庁などが全力で取り組んでいる」と説明しました。

そして菅総理大臣は、政府として新型コロナウイルス対策やワクチン接種と同時に、災害対策にも全力で取り組む考えを強調しました。

政府 非常災害対策本部を設置

今回の大雨被害を受けて政府は5日午前、菅総理大臣を本部長とする非常災害対策本部を設置し、総理大臣官邸で初会合を開きました。

この中で菅総理大臣は「熱海市の調査に基づき100人を超える方について安否確認を実施中だ。土砂の中で助けを待っている方を一刻も早く救出すべく、警察、消防、海上保安庁、自衛隊の捜索体制をさらにそれぞれ増強し、1500名を超える体制で被害状況の把握と人命救助にあたっている」と説明しました。

そのうえで「何よりも人命第一で、地方自治体とも緊密に連携し引き続き2次災害にも注意して1人でも多くの命を救い、暮らしを守るため速やかな救命救助と被災者支援に全力を尽くしてほしい」と関係閣僚に指示しました。

そして菅総理大臣は「今回の梅雨前線は、引き続き各地で大雨をもたらす可能性がある。地盤が緩んでいることから雨が収まっても土砂災害が発生するおそれがある」と指摘し、国民に対し土砂災害に厳重に警戒し、地域のハザードマップを改めて確認して危険な場所には近づかないことや気象情報や避難情報などに十分注意し、早めに命を守る行動をとるよう呼びかけました。

官房長官「安否確認に取り組む」

加藤官房長官は、午前の記者会見で「現時点で死者3名が確認されているほか、熱海市によると、安否について確認作業中の方が113名いると聞いている。警察、消防、自衛隊、海上保安庁を中心に1500名を超える態勢で救命救助活動を行っており、安否を含めて確認作業にしっかり取り組む考えだ。引き続き、2次災害に注意しつつ、救命救助活動や安否不明者の捜索、被災者の支援に全力を尽くしていく」と述べました。

そして「現地では、今後も雨の降りやすい状態が続く見込みだ。これまでの雨で地盤が緩んでいるところもあるため、引き続き、住民の皆さんには、厳重な警戒をお願いをしたい」と呼びかけました。

また加藤官房長官は、避難している人たちへの対応について「熱海市の避難者は、昨夜の時点で、公民館や小中学校などの避難所から、全員、ホテルに移動していると聞いている。新たな避難先でも、静岡県や熱海市などと連携し、コロナ対策などを十分実施するとともに、避難所の生活環境の整備や生活必需品の確保などに万全を期す」と述べました。

一方「土砂の崩壊が確認された箇所で人為的に盛り土が行われていたことが報道などで指摘されているが、どのような工事が、どのような目的で実施されたかなどについて、現在、静岡県において調査中であると聞いており、現時点で原因を特定することはできない状況にある。土砂災害の専門家の派遣や監視装置の設置などの支援も行っており、静岡県と緊密に連携しつつ、必要な支援を行っていく」と述べました。