変異ウイルス 世界で相次ぎ感染者増加傾向 感染対策の徹底を

世界の新型コロナウイルスの感染状況は、一時、感染者が爆発的に増えたインドで減少傾向が続く一方、ほかのアジアや南米、ヨーロッパなど、変異ウイルスが確認された国では、感染者が増加傾向にあります。専門家は、マスクの着用や人どうしの距離をとるなどの感染対策を改めて徹底することが必要だと指摘しています。

このうち1日の感染者が一時、40万人を超えるなど感染が爆発的に拡大したインドでは、厳しい外出制限などを行った結果、新たな感染者数が大幅に減少し、6月16日には、世界遺産のタージマハルの公開が2か月ぶりに再開されるなど、制限が緩和され、経済活動を再開させる動きが広がりつつあります。

感染が急拡大した要因の1つとみられているのが、デルタ株と呼ばれる変異ウイルスで、インド国内では、これにもう1つ変異が加わったものも確認されていて、保健当局は、この変異ウイルスを“デルタ・プラス”と呼んで、警戒しています。

世界では、このほかにも、変異ウイルスが次々と確認されていて、WHO=世界保健機関は6月29日の時点で、警戒または感染状況を注視するものとして、合わせて11の変異ウイルスを挙げています。

南米のペルーでは、「ラムダ株」と呼ばれる変異ウイルスが、4月以降に詳しく調べた感染者の81%から検出され、同じく確認が相次いでいるアルゼンチンやチリでは、感染の拡大が続いています。

このほか、インドネシアやバングラデシュなどアジアの国々や、感染者が一時減少傾向にあったイギリスやロシア、それに南アフリカなどでは、感染者が増加傾向にあります。

インド公衆衛生財団のスリナット・レッディ会長は「国内や世界で感染の連鎖を断たなければならない。そのためには、マスクを着用したり、人どうしの距離をとったりするなど、公衆衛生上の対策を守りつつ、ワクチンの接種を進める必要がある」と述べ、ワクチンの接種とともに、改めて感染対策の徹底が必要だと指摘しています。

専門家 「対策すべて守りつつワクチン接種を」

インド公衆衛生財団のスリナット・レッディ会長は、デルタ株について、イギリスで見つかった変異ウイルスよりも50%ほど感染力が高いという分析結果が出ているとしたうえで、「現在、世界で最も広がっているウイルスはデルタ株だということに疑いはない。一部の地域では、まだ最大の脅威となっていないが、急速に増加している」と指摘しました。

一方で、“デルタ・プラス”と呼ばれるデルタ株に別の変異が加わったウイルスについては、「南アフリカで最初に確認された変異ウイルスにみられる特徴があり、ワクチンの効果に影響があるのではないかと懸念されているが、サンプルが少なく、結論を出すのはまだ早い」と述べ、さらなる調査が必要だとしています。

また、レッディ会長は、ウイルスは常に変異し、感染力が高まるおそれがあるとしたうえで、「国内や世界で感染の連鎖を断たなければならない。そのためにはマスクをしたり、距離をとったりするなどの公衆衛生上の対策をすべて守りつつ、ワクチン接種を進める必要がある。また、ゲノム解析の技術を高め、新たな変異ウイルスをできるだけ早く検出し、ワクチンの効果を検証することが重要だ」と述べ、ワクチンの接種とともに、基本的な感染対策の徹底と変異ウイルスに関する研究が重要だと強調しました。