中国共産党創立100年で式典 習主席 一党支配の正統性アピール

中国共産党の創立から100年となるのに合わせ1日、北京で大規模な祝賀式典が開かれ、習近平国家主席は一党支配の正統性をアピールするとともに、人権問題などをめぐる国際社会の批判を受け入れない姿勢を強調しました。

中国共産党は、1921年の創立から今月で100年となり、1日午前、北京の天安門広場で大規模な祝賀式典が開かれ、習近平国家主席がおよそ1時間にわたって演説しました。

この中で習主席は「われわれは党創立100年の目標である貧困問題を解決した」と述べて実績を強調し、一党支配の正統性をアピールしました。

また「台湾問題を解決し、祖国の完全な統一を実現することは、中国共産党の揺らぐことのない歴史的な任務だ」と述べ、台湾統一に強い意欲を示しました。

そのうえで「国家の主権と領土を守り抜くというわれわれの断固とした決意を見くびらないほうがよい」と述べ、このところ台湾との関係を深めているアメリカなどをけん制するねらいもあるとみられます。

そして、香港については「国家安全法制と執行メカニズムを着実に実行する」と述べ、締めつけを緩めない姿勢を示しました。

また、習主席は「共産党と中国の人民を引き離したり対立させたりしようとする企ては絶対に実現しない。傲慢な態度で説教することは絶対に受け入れられない」と述べ、香港や台湾、それに新疆ウイグル自治区の人権問題などをめぐる国際社会の批判は受け入れない姿勢を強調しました。
式典では天安門広場を埋め尽くすように特設の席が設けられ、7万人余りが参加し、香港メディアはすべての参加者に新型コロナウイルスのワクチン接種や、PCR検査が義務づけられたと伝えています。

中国は共産党による一党支配体制のもとで社会主義を掲げながらも、市場経済への移行を進め、2010年には世界第2の経済大国となりました。

しかし、経済の減速や少子高齢化、アメリカとの激しい対立など国内外にさまざまな課題を抱え、習主席としてはこうした課題に対応するためにも、共産党の指導が重要だとアピールするとともに、長期政権も見据え、みずからの権威づけにつなげたいねらいがあるとみられます。

式典取材は異例ずくめ

今回の祝賀式典では、事前に新型コロナウイルスのワクチンを接種した人しか現場での取材が認められませんでした。

さらに、指定されたホテルでの前日からの隔離や事前のPCR検査も義務づけられるなど、徹底した感染対策がとられました。

取材陣は、式典が始まる5時間前の現地時間の午前3時ごろに隔離先のホテルをバスで出発し、天安門広場に到着するまでに持ち物検査が2回行われました。

カメラやパソコン、携帯電話などの持ち込みは認められましたが、無線での中継設備は認められませんでした。

取材陣が天安門広場に到着したのは午前5時ごろで、その時にはすでに参加者が続々と広場に集まっていました。

軍の音楽隊や合唱団などが、最後のリハーサルを念入りに行う中、式典開始30分前の午前7時半ごろ、取材対応の担当者が取材陣にマスクを外すよう呼びかけました。

同じころ、一般の会場席にいた参加者もマスクを外していて、国営テレビが現場の中継を交えた特別番組を開始した時間と重なっていたため、テレビ映りを考慮したものとみられます。

式典開始直前には、会場の上空に、共産党創立100年にちなんで「100」という数字を形づくったヘリコプターの編隊が飛行しました。

その後、李克強首相が式典の開幕を宣言すると100発の礼砲が打ち鳴らされました。

そして習近平国家主席の演説が始まると一時、小雨がぱらつき、会場にいた人が急に雨具を身につける一幕もありましたが、演説の終わりには雨は上がっていました。

江沢民 元国家主席は欠席

1日の式典には中国共産党最高指導部のメンバーが顔をそろえたほか、胡錦涛 前国家主席や温家宝 前首相など、引退した指導者の姿も見られました。

また、香港政府トップの林鄭月娥行政長官も出席しました。

1日は、香港が中国に返還された日で、林鄭長官は例年、香港で行われる返還を記念する式典に出席していますが、今回は、中国共産党創立100年の祝賀式典を優先した形です。

一方、おととし天安門広場で行われた建国70年の祝賀行事に出席した江沢民 元国家主席は欠席しました。

加藤官房長官「大国としての責務を」

加藤官房長官は1日午前の記者会見で「日中関係全般に関して申し上げれば、安定した日中関係は、両国のみならず、地域と国際社会の平和と繁栄のために重要だ。中国は世界第2位の経済大国で、地域と国際社会の諸課題に大国として取り組んでもらう責務を有している。国際社会のルールにのっとり、期待に応えていくことが重要だ」と述べました。

そのうえで「中国と日本との間には、さまざまな懸案が存在しているが、引き続き、ハイレベルの機会を活用し、率直な意見交換と対話を通じて一つ一つ解決していきたい。中国側に具体的な行動を強く求めていく基本方針には何ら変わりはない。人権問題に関しては、自由、民主主義、人権、法の支配といった国際社会における普遍的価値は、中国を含むどこの国であっても保障されることが重要だ」と述べました。

また午後の記者会見で「中国共産党の式典における発言で、政府としてのコメントは差し控えたい」と述べました。

そのうえで「台湾をめぐる問題が、当事者間の直接の対話により、平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した、わが国の立場だ。先般のG7サミット=主要7か国首脳会議でも、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸関係の平和的解決を促すことで一致したところで、引き続き、両岸関係の推移をしっかり注視していきたい」と述べました。

公明 山口代表「一層、世界の平和と発展、安定に力を」

公明党の山口代表は東京都内で記者団に対し「1つの政党が100年を迎えること自体、なかなかないことだ。公明党は日中国交正常化以来、ずっと交流を重ねてきたので、100年を機になお一層、世界の平和と発展・安定のために力を尽くしてもらいたいと望んでいる」と述べました。

北朝鮮 キム・ジョンウン総書記が祝電

北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1日、キム・ジョンウン(金正恩)総書記が中国共産党の創立から100年となるのに合わせて、習近平国家主席に祝電を送ったと伝えました。

この中でキム総書記は「中国が成し遂げた、あらゆる成果を自分のことのようにうれしく思っている。朝鮮労働党と中国共産党は長い闘争の過程で、生死と苦楽をともにしてきた同志であり、戦友だ」として、北朝鮮と中国の友好関係を強調しました。

そのうえで「中国共産党に対する敵対勢力の悪辣(あくらつ)な非難は悪あがきにすぎず、中国の人民の前途を阻むことはできない」としています。

北朝鮮としては、中国との団結を改めて示すことで、アメリカのバイデン政権をけん制するとともに、新型コロナウイルスの影響で経済が打撃を受ける中、最大の後ろ盾である中国の役割に期待しているとみられます。

香港市民からは冷ややかな声

中国共産党の創立100年や香港の中国返還24年を祝うさまざまな行事が行われていることについて、香港の市民からは冷ややかな声も聞かれました。

このうち、20代の女性は「お祝いの行事は私たちには関係ないです。香港の自由はどんどん狭くなっていて残念に思います」と話していました。

また、別の女性は「最近の香港の状況には、失望しています。去年はまだ希望があったが、今はもうないです」と話していました。

台湾「主権を堅く守り抜く」

習近平国家主席の演説について台湾で対中国政策を担当する大陸委員会はコメントを発表し「民主と自由、人権と法治は台湾社会が堅持する中核的な価値であり、中国の独裁体制と非常に大きな違いがある」と指摘しました。

そのうえで「2300万の台湾の人たちは中国共産党の一方的な『1つの中国の原則』をとっくに拒絶しており、主権を堅く守り抜くというわれわれの決意は不変だ。台湾海峡両岸の現実を直視し、台湾の民意を尊重するよう、北京当局に呼びかける」としています。

大陸委員会はさらに習近平指導部に対し「早期に政治改革を推進して政治参加の権利を人民に返すとともに、対外的には弱い者いじめの主張や行いをやめ、地域の平和に真に責任を持つようになるべきだ」と要求しました。

“毛沢東に並ぶ存在” 印象づけの見方も

習近平国家主席をめぐっては「建国の父」とされる毛沢東に並ぶ存在になったと印象づけようとしているとの見方も出ています。

1日の祝賀式典では、歴代の指導者や党の幹部の多くがスーツ姿で出席する一方、習主席は天安門に掲げられている肖像画の毛沢東と同じ色の人民服を着て、肖像画のちょうど真上の位置に現れました。

そのあと習主席が演説した場所は1949年に毛沢東が中華人民共和国の建国を宣言したときとほぼ同じでした。

このほか、共産党の創立100年を前に先月オープンした党の歴史を紹介する展覧館では、習主席と毛沢東の功績をたたえる内容が目立っていました。

2018年の憲法改正では、毛沢東に続いて、前文に習主席の名前を冠した指導思想が書き込まれました。

絶大な権力を握る習主席としては長期政権も見据え毛沢東に並ぶ存在になったと印象づけようとしているとの見方も出ています。

専門家「“共産党は偉大”というアピールに集中」

中国の現代政治が専門の東京大学公共政策大学院の高原明生教授は、習主席の演説について「中国共産党と習主席個人の威信を高めることが大事な課題だったので、毛沢東と全く同じ服を着て視覚的に自分が毛沢東と並び立つ指導者だと印象づけようとしたのではないか。5年に1度開かれ、重要な人事が決められる党大会を来年に控え、ライバルをどう抑え込んで地位を維持し続けるかという時期になってくるので、習主席はそのためにも創立100年の機会を活用したのだろう」と分析しました。

そして「中国共産党は歴史を勉強させることで支配の正統性をアピールしているが、今の国民はそれだけでは納得しない。そこで経済発展で貧困をなくしたと主張するとともに、ナショナリズムにも訴えている。ナショナリズムを強調した部分では、天安門広場を埋めた何万人もの聴衆がワーと喜び、人々の間で大変共感を呼ぶのだと思った」と述べました。

その一方で「演説はそれほど習主席を前面に出す感じではなかったと思う。これまでの政治運動や教育活動でアピールは十二分にしているので、同じ調子でやるとやりすぎになると少し抑えたのではないか。しかし、われわれが聞くとまだ激しい表現があり、今の中国とわれわれの常識の間にずれが出ているのかもしれない」と指摘しました。

そのうえで高原教授は「『歴史をもってかがみとし、未来をひらく』ということばが今回のキーワードだが、演説は成功の歴史ばかりでいかに共産党が偉大であるかというアピールに集中している。文化大革命や天安門事件など失敗の歴史もたくさんあるが、そこから学ぼうという姿勢を示すだけの余裕や自信はまだないと思った。基本的に自分たちが選挙で選ばれていないことに後ろめたさがあり、いつか政権が転覆されるのではないかという不安感を常に持っているのだろう。こういう機会を利用して宣伝を強く行うことが必要だと指導者たちは思っているのではないか」という見方を示しました。