路線価 6年ぶり前年下回る コロナで観光地 商業地で下落

相続税などの基準となる「路線価」が1日、公表されました。
新型コロナウイルスの影響で観光地や商業地で下落が目立ち、全国の調査地点の平均は6年ぶりに前の年を下回りました。

路線価は国税庁が1月1日時点で算定した、主な道路に面した土地の1平方メートル当たりの評価額で、相続税や贈与税を計算する基準となります。

ことしの路線価は1日、公表され、調査対象となった全国およそ32万地点の平均は去年に比べて0.5%下がり、6年ぶりに前の年を下回りました。

都道府県別にみると、最も下げ幅が大きかったのは静岡の1.6%で、次いで岐阜と愛媛の1.4%でした。

また、東京が1.1%、大阪が0.9%下がって、いずれも8年ぶりの下落に転じるなど39の都府県で去年を下回りました。

上昇したのは都市部の再開発などが進んだ、北海道、宮城、千葉、福岡、佐賀、熊本、沖縄の7道県で、前の年より高くなった都道府県の数は、去年の3分の1となりました。
また、地点別で全国で最も高かったのは、東京 銀座5丁目の銀座中央通りの4272万円でした。

36年連続での全国最高額ですが、去年に比べて7.0%下がり、9年ぶりの下落となりました。
このほか下げ幅が大きかった地点は、大阪市中央区の心斎橋筋の26.4%、岐阜県高山市の上三之町下三之町線通りの12.7%、奈良市の大宮通りの12.5%、東京 台東区の雷門通りの11.9%などで、各地の観光地や商業地で下落が目立ちました。

国税庁は新型コロナウイルスの影響を受けて外国人を中心に観光客が減り、飲食店の閉店が増えたことなどが原因だとしています。

観光客依存エリアは大きなダメージ

不動産調査会社「東京カンテイ」の井出武上席主任研究員は「新型コロナウイルスの感染拡大で、道頓堀や浅草、奈良など観光客に依存しているエリアは大きなダメージを受けて、下げ幅が大きかった。飲食店を中心とした店舗が撤退し、代わりに入る店も出てこないという状況が原因と考えられる」と話しています。

一方、住宅地は比較的影響が小さく「宇都宮や福岡など長期間再開発を行ってきた地域では上昇している。千葉の市川市や船橋市、さいたま市などではマンションの建設などが進み、東京に比べて価格が安いため需要があり、強含んでいる」と指摘しています。

また、今後の動向については「新型コロナウイルスのワクチン接種も進み、今回のように大きく下落することはないと考える。海外からの観光客はすぐには戻らないかもしれないが、やがて回復するだろう。商業地もオフィス需要が戻りつつあり、全体の傾向としては上向いてくるだろう」と話しています。

高級リゾート地への影響は…北海道 ニセコ地区

北海道でも高級リゾートとして知られるニセコ地区の不動産を扱っている会社は、感染拡大で海外投資家の来日が難しくなったことが、土地取り引きの減少につながっているとみています。

ニセコ地区を中心に不動産の売買や仲介をしている小樽市の会社は、感染拡大に伴って顧客の海外投資家の来日が難しくなったと実感しています。

海外投資家は、不動産を購入する前に周辺の環境などの視察を欠かさないことから、去年2月からこれまでの1年余りの間に、海外投資家との契約はほとんどなかったといいます。

会社の石井秀幸社長は「ほぼ新規の取引はゼロの状態になった。北海道に入ってくることができないというのが最大の理由だ。不動産という高額のものを買うとするならば、現地の視察は必要になってくるので、そのためにゼロになった」と話しています。

一方で、感染の拡大が収束したあとには、ニセコ地区を中心とした北海道の不動産の取り引きは再び注目されると見ています。

石井社長は「『密』にならない、豊かな自然資源がある、四季がはっきりしているなど、魅力があるのはアジアの中で北海道だとアジアの投資家が言い出した。とにかく今『安かったら、下がったら投資したい』と言っている」としたうえで、情報発信を続けて将来的な取り引きにつなげたいとしています。

加藤官房長官「経済立て直しの中 動向注視」

加藤官房長官は午後の記者会見で「新型コロナウイルスの影響などにより、地価は全般的に弱含みとなっている。これまで国内外の訪問客の増加に伴う店舗やホテルの需要で上昇してきた地域や、飲食店が集積する地域が、新型コロナウイルスの影響により、比較的大きな下落となっている」と述べました。

一方、加藤官房長官は「地方の主要都市では、住宅などの需要が堅調な中、進行中の都市再開発への期待なども相まって、地価の上昇が継続している所もあると承知している。今後も、ワクチン接種をはじめ感染防止対策に全力を挙げていくと同時に、経済の立て直しも進めていく中で、地価の動向も、引き続き、注視していきたい」と述べました。