「観天望気」 見て 感じて 予測する

「観天望気」 見て 感じて 予測する
今回のテーマは「観天望気」。天を見るという漢字のとおり、雲や風など身のまわりの自然現象を見たり感じたりして天気を予測することです。

受け継がれてきた観天望気

まだ天気予報がなかった時代、観天望気は、昔の人たちの経験によってことわざのように受け継がれてきました。
例えば、こんなものがあります。
「ツバメが低く飛ぶと雨」
「夕焼けの翌日は晴れ」
「山に笠雲がかかると雨」
耳にしたことがありますよね?
実際に目で見て感じる観天望気の方法は、今の天気予報にも生かされている部分があるそうです。

今も通じる観天望気

三重大学大学院で気象の研究をしている、立花義裕教授に話を聞きました。
立花さん
「昔は専門家がいないので、生きるために気象を予知することが大事だったことは間違いない。空にあるものを見て、地面にあるものを見て、それが、いろいろな観天望気の技術につながったと思います」
特に、天候に左右されやすい漁業や農業に携わる人たちは、日々の経験を積み重ねた観天望気を活用して生きてきました。
その多くは、現在の気象学を当てはめても、科学的な根拠があるといいます。
立花さん
「“強い南風が吹くと、その場所で雨が降っていなくても川が氾濫する”。温かい海から風が吹くと、海は温かいので水蒸気がいっぱい入っている。それが強い風で山に当たり、山に空気が上がっていくので、山の中で大雨が降る。山には川が流れているので、下流に大雨の影響が来るから川があふれる」

観天望気は「秘伝書」にも

立花さんによると、かつては意外な人たちも、活用していたそうです。
立花さん
「忍者です。有名な忍者のバイブルに『万川集海』というものがあります。そこに、ちゃんと『忍者の世界では気象予測します、できます』と書いてあります」
江戸時代につくられた忍術の秘伝書「万川集海」。
このなかには、星のまたたきを観察した観天望気など「16か条」が残っていて、忍者が天気を予測していたことがうかがえるそうです。
立花さん
「例えば、雨が降っていたら、音がかき消されるから忍び込みやすい。あるいは自分が逃げるために、霧があれば逃げやすい。忍者の戦略にとっては、気象は極めて大事だったんです」
なぜ昔の人たちは、ここまで予測ができたのでしょうか。
立花さん
「自然を見ると、いろいろな関係が見つかってきます。そういうことを1000年やっていて、人口をかけ算したら、何億人どころではない。何十億人の人たちによる検証があった。それによって培われているので、今で言うところのビッグデータに対応しますよね」

今なお生きる観天望気

では、現在のような天気予報に変わったきっかけは何だったのでしょうか。
立花さん
「気圧というものを発見したのが大きいです。その次に、気圧が変化すると天気が悪化したり、よくなったりすることがわかった。第3の発見は、気圧の分布図、今の天気予報でいう天気図を書くと、悪天と、いい天気がわかる。つまり、低気圧が天気が悪くて、高気圧が天気がいい、ということがわかった。これは、気象学の大発見です」
一方で、全国の気象台では雲の様子などを「目視観測」して、天気の判断や予想に役立ててきました。
立花さんによると、気象衛星やレーダーなどによる観測技術の向上があっても、狭い範囲で正確に気象の変化を予測するのは、難しいということです。
このため、人が直接観察したものや経験則を判断材料に加えることは、今も変わらず大切だと言います。
立花さん
「気象台には、蓄積された知識がある。コンピューターの予測に対して、予報官が観天望気のような知識をうまく使って、少し変えて天気予報を出す部分がある。最後の最後のピンポイント予測には絶対効くので、やっぱり自分の目で見ることが大事なんです」
立花さんに、防災に役立つ観天望気を聞きました。
「突然の、冷たい強風、積乱雲、豪雨が迫る」
黒い雲が見えているときに、急に冷たい強い風が吹き始めれば、まもなく豪雨になるということです。風が強ければ強いほど、積乱雲も発達しているため、豪雨になるきざしなんだそうです。
このきざしを感じたら、避難行動が大事です。外にいる人はすぐに屋内に逃げましょう。
「週刊まるわかりニュース」(土曜日午前9時放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を、鎌倉キャスターと考えていきましょう!

コーナーのホームページでは、これまでのおさらいもできます。
下のリンクからぜひご覧ください!