“やがて40代や50代に広がるのでは…”感染再拡大へ懸念 東京

新型コロナウイルス対策として東京都や関西圏などに出されていた「緊急事態宣言」が解除され、「まん延防止等重点措置」に移行されてから28日で1週間。
政府が設置したワクチンの大規模接種センターでは2回目の接種が本格化し、東京都中野区は16歳以上を対象にした接種を始めました。
しかし、都内では29日、新たに476人の感染が確認され、10日連続で前の週の同じ曜日を上回っています。
専門家は「首都圏では、20代や30代の感染者が増えているが、それがやがて40代や50代に広がっていくとみられる。感染が広がれば、多くの方が重症化したり、病床がひっ迫したりする状況が生まれかねない」と警鐘を鳴らしています。

2回目の接種が本格化 大規模センター

政府が東京と大阪に設置した設置した大規模接種センターは、先月24日の開設以降、段階的に接種対象が拡大され、現在は自治体から届いた接種券を持つ全国の18歳以上を対象に接種が行われています。

28日からは、2回目の接種が本格化しています。

東京 81歳女性「ジムに行くなど運動の機会増やしたい」

東京会場で2回目の接種を終えた渋谷区の81歳の女性は「スムーズに接種が終わってほっとしました。これまでは感染が心配で外に出る気になりませんでしたが、今後は、ジムに行くなど、運動の機会を増やしたい」と話していました。
一方、政府が大阪市に設置した大規模接種センターでは、1日およそ5000人に接種が行われています。

大阪 79歳女性「2回の接種が終わって一安心」

接種を終えた大阪 北区の79歳の女性は「2回の接種が終わって一安心ですが、今後も友達と話す時は距離をとり、長話をしないなどの感染対策を続けたいです」と話していました。
また、大阪 東住吉区の75歳の女性は「周りにも、うつしづらくなると思うので、安心しています。今後も人混みを避けるなど行動には気をつけたいです」と話していました。

予約枠増やすも 今週分はすでに埋まる

防衛省は、2回目の接種が本格化することで1人当たりの接種にかかる時間が短くなると見込まれることから、今週から1日当たりの予約枠を東京会場で300人、大阪会場で75人増やしましたが、今週分についてはすでに予約が埋まっています。

また、従来の東京・大阪を合わせて1万5000人の予約枠については、来月末まで2回目の接種を受ける人でほぼ埋まっているということです。

予約がない人 28日からは接種できず

一方、大規模接種センターではこれまで、予約をせずに会場を訪れる人がいたことから、28日から予約がない人には接種を行っておらず、防衛省はホームページなどで注意を呼びかけています。

「重点措置」移行後 増え続ける東京

「まん延防止等重点措置」に移行してから1週間余りがたった東京都内。
29日は新たに476人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されました。
1週間前の月曜日より41人増えました。
都内の感染者数は、ことし4月に3度目の緊急事態宣言が出されたあと、先月8日の1121人をピークに減少に転じました。
しかし、今月中旬からは下げ止まり、その後、徐々に増え始めています。具体的には、今月20日以降、前の週の同じ曜日を上回るのは、29日で10日連続です。
特に、26日までの4日間は、前の週の同じ曜日から100人以上増え、増加の幅が顕著になっています。

7日間平均は

また、7日間平均をみますと、27日時点では477.4人で、「まん延防止等重点措置」の期間に移行してから27日までに90人近く増えました。
7日間平均は、緊急事態宣言下で、先月13日に933.9人とピークを迎えたあと減少傾向となり、先月18日からは前の週の7日間平均を下回る日が続きました。

しかし、重点措置に移行する前日の今月20日からは前の週を上回る日が続いています。ことし4月に3度目の緊急事態宣言が出されたころと比較すると、今とほぼ同じレベルなのは4月12日の476人です。

このころ、7日間平均は上昇していて、4月25日に緊急事態宣言が出された日は727.1まで上昇しました。およそ2週間で1.5倍、250人あまり増えたことになります。

「感染の再拡大の可能性 より高まる」東京都

東京都は「少しずつ増えてきている状況で感染の再拡大の可能性はより高まっている」として、対策の徹底を呼びかけています

入院患者も増加に転じる

都内で新型コロナウイルスに感染し入院している人は「まん延防止等重点措置」の期間に入ってから、増加に転じています。

27日時点では1449人で、重点措置の期間に入る直前より179人増加し、病床に占める割合も3ポイント余り上昇しています。
都内で新型コロナウイルスに感染して入院している人は、先月16日の2431人をピークに減少傾向に転じました。

今月1日は2000人を超えていたのが、中旬には1200人台まで減少していましたが、その後、まん延防止等重点措置の期間に入ってから、増加に転じています。

27日時点では1449人で、「まん延防止等重点措置」の期間に移行する直前の今月20日の1270人より179人増加し、1.14倍になりました。

現在確保している病床に占める割合は27日時点で25.9%で、重点措置の移行後に3.2ポイント上昇しています。

重症患者は

一方、重症の患者は4月下旬に50人を超えるとその後、増加傾向となり、先月12日には86人で第4波のピークとなりました。

その後、増減を繰り返しながらも減少していき、27日時点では37人になりました。

重症者用の病床の使用率は9.9%で10%を切りました。

しかし、都の専門家は「重症患者の数は新規陽性者数の増加から少し遅れて増える。急激な重症患者数の増加は、医療提供体制の逼迫を招くため厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

20代と30代の感染割合 今月に入り高まる

東京都内で新型コロナウイルスの感染が確認された人のうち、20代と30代を合わせた割合が今月は49.5%と、月別でみると今年に入って最も高くなっています。
都内で今月に入って27日までに感染が確認された人は1万1472人です。

このうち、20代と30代を合わせて割合は今月に入って27日までに49.5%となりました。
先月より2.2ポイント増えていて、2人に1人は20代から30代の若い世代です。
年代別では
▽20代は27日までに3434人で、率にして29.9%です。
先月より1.7ポイント増えました。

▽30代は2248人で19.6%となり、先月より0.4ポイント上回っています。

20代と30代のいずれも月別で今年に入ってから最も高くなりました。

専門家「やがて40代や50代に広がっていくとみられる」

東京都内では感染確認の増加が続いている状況について、厚生労働省の専門家会合のメンバーで、公衆衛生学が専門の国際医療福祉大学の和田耕治教授は「首都圏では、20代や30代の感染者が増えているが、それがやがて40代や50代に広がっていくとみられる。ワクチンの効果は、オリンピックが始まるころまでは限定的で、イギリスで確認された変異ウイルスのアルファ株の例でもわかるように、40代から60代であっても10人に1人くらいは治療で酸素が必要になり、そのうち半分程度は人工呼吸器が必要になることがある。感染が広がれば、多くの方が重症化したり、病床がひっ迫したりする状況が生まれかねない」と指摘しました。

そのうえで、「感染力が強いとされるインドで確認された変異ウイルスのデルタ株が増える中では、油断すれば、4月に大阪で起きたような感染拡大が東京でも起きる可能性があり、再び飲食店に酒類提供をやめてもらうなどより厳しい対策が必要となってしまう」と述べました。

また、来月11日までの期間となっている重点措置の解除の見通しについて、「今後の方針は、期限の数日前の七夕のころの感染状況を見ながら、決定していくことになるが、まさに今の人々の動きが感染の広がりとして表れてくるので、繁華街で人が増えている現状を見れば、今よりも多い感染者の報告が想定される」と措置の解除は厳しいという見方を示しました。

そのうえで、「感染者が多くなっていけば、療養施設の確保も厳しくなる。一人ひとりが感染を抑えるという意識を持たなければ、いざ自分が感染したときに入る施設がないということが起きてしまう」として、感染対策の徹底を継続する必要性を訴えました。

東京 中野区での取り組み

東京 中野区では、28日から16歳以上のすべての区民を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。
基礎疾患などがない16歳以上のすべての区民を対象にした接種は東京23区で最も早いスタートとなります。

16歳以上の接種開始 23区で最も早い

中野区では、16歳から64歳のすべての区民に今月10日に接種券を発送し、
▽基礎疾患のある人などは15日から、
▽保育士や幼稚園の教諭など、一部の職種の人には22日から接種を始めていましたが、
▽28日からは、こうした条件にかかわらず、すべての人を対象に、予約の受け付けと接種を始めました。
一般の16歳以上の人を対象にした接種は、東京23区の中では最も早いスタートとなります。
中野区では140余りのクリニックが個別接種を担っていて、このうち、中野区中央の「かねなか脳神経外科」には予約した人たちが続々と訪れ、医師の問診のあとで接種を受けていました。

40代女性「気持ちが楽になりました」

接種を終えた40代の女性は、「いろんな不安を抱えながら生活をしていたし、もやもやしながら自分たちの順番待っていたので早く仕組みを整えてもられて接種できたのはありがたいし、気持ちが楽になりました」と話していました。

また、この女性は「群馬県に住む父に持病があり、東京から行くのを控えて1年ほどちゃんと会えていなかったので、次に2回目の接種を終えたら、8月ごろに会えたらいいなと思っています。みんなが安心して生活できるように基本的な対策は続けていきますが、元の生活とまではいかなくても制約された状態から解放される日が近づいたような気持ちにはなりました」と話していました。

30代男性「早く皆さんへの接種環境が整うことが重要」

基礎疾患があるという30代の男性は「やっと1回目を打てたなという気持ちです。自分だけが打っても安心ではないので、早く皆さんが接種できる環境が整うように何とか進んで欲しいし、ここから先が重要になると思います」と話していました。
中野区では、都内のほとんどの区が高齢者施設に入所している人から接種を始めた中、施設に入所しているか否かに関係なく、75歳以上のすべての高齢者を対象にことし4月28日から接種を始め、先月21日からは、65歳以上のすべての高齢者に対象を広げました。
また、中野区では、140あまりのクリニックでの個別接種以外に、集団接種を区の医師会館や15か所の区民活動センターを3か所ずつ巡回する形式で行ってきたことで、「早く打ちたい」とか「近くで打ちたい」などといった高齢者のニーズに応えることができたのではないかと見ています。

中野区「適切な方法をその都度考えて しっかり周知 」

中野区の高村和哉広聴・広報課長は「早く接種したい人は中野駅近くの医師会館で、近くで接種したい人は巡回形式を待つなど、結果として多様なニーズに対応できたのかと思う。巡回での集団接種は派遣会社に委託して外部の医師に対応してもらい、区内の医師は医師会館や個別接種に専念できたことも早い接種につながった。ワクチン供給の状況は刻々と変わっているので、適切な方法をその都度考えてしっかり周知していきたい」と話していました。

中野区では、ことし9月までに60%の区民への接種が終わる見込みだということです。

夜間の接種も受け付け

「かねなか脳神経外科」では、日中のワクチン接種に加え、仕事帰りの人なども接種が受けられるように、午後7時から10時まで夜間の接種も受け付けていますが、午後7時以降の夜の部については1日当たり180人受け付けている予約が、来月半ばまで埋まったということです。

院長「来やすい時間を選べるよう いろんな時間帯を設定」

院長の金中直輔医師は「働いている人たちや部活動をしている高校生や大学生などの予約も多く寄せられました。日中はなかなか来にくい人もいるので、いろんな時間帯を設定して来やすい時間を選べるようにしています。需要があることがよく分かったので、とにかく早くワクチンを提供できるようにできることを進めたいと思います」と話していました。