驚異の日本新記録誕生 男子110mハードルは世界レベルへ進化

105回目となった陸上の日本選手権。大会最終日に驚異的な記録が生まれました。
男子110メートルハードルの決勝、泉谷駿介選手の優勝タイムは13秒06の日本新記録。このタイムは今シーズン世界3位にランキングされるもので、東京オリンピックの決勝どころかメダルへの現実味も帯びてきました。
日本の男子110メートルハードル界は世界に誇る種目へと変貌しつつあります。

ライバルたちが切磋琢磨

泉谷選手がマークした13秒06の日本新記録。今シーズン世界3位にランキングされる記録で、2016年リオデジャネイロオリンピックでは金メダルまで0秒01まで迫る銀メダル相当のタイムとなります。

この記録が生まれた背景には、これまで切磋琢磨してきた男子ハードル界の歴史があります。

【男子110メートルハードル 日本記録の変遷】
2004年8月 アテネ五輪:谷川聡 13秒39
2018年6月 日本選手権:金井大旺 13秒36
2019年6月布勢スプリント:高山峻野 13秒36
2019年6月 日本選手権:泉谷駿介 13秒36
2019年7月 実業団学生対抗:高山峻野 13秒30
2019年8月 福井アスリート:高山峻野 13秒25
2021年4月 織田記念:金井大旺 13秒16
2021年6月 日本選手権:泉谷駿介 13秒06

2018年に金井選手が動かした日本記録の時計の針は、その後、激しく回り始めます。13秒36と14年ぶりに0秒03縮めると、それを追うように今回代表に内定した高山選手と泉谷選手が並びました。

一時は日本記録保持者に3人が名を連ねる戦国時代に。その後は高山選手が抜け出しましたが、ことしに入って金井選手が更新し、泉谷選手がさらにそれを上回りました。

こうしてしのぎを削ってきたライバルたちは、日本選手権の前にもそれぞれを意識していました。
▽高山峻野選手
「みんなで切磋琢磨してタイムを伸ばしているのはいい状態。なんとか食らいついていきたい」
▽金井大旺選手
「日本のレベルが上がってきているので、世界で勝つためにはまず国内のレースを勝っていくことが必要になる」
▽泉谷駿介選手
「金井大旺選手に勝てるように頑張っていきたい」

互いに高めあい記録を伸ばしていく好循環がいまのハードル界にはあり、その歴史が今回泉谷選手の記録を引き出したのです。

可能性を感じさせる日本選手権

日本選手権は、レベルの上がってきたハードル界を象徴するような大会となりました。
今後の期待を感じさせるという意味では、すい星のごとく現れた村竹ラシッド選手がインパクトを与えました。
予選でマークした13秒28というタイムは日本歴代3位。
決勝はフライングで失格となってしまいましたが、3強と呼ばれる内定者たちを今後脅かす存在になることは間違いありません。
「食らいついてきたい」と話していた高山選手は、背中の痛みを抱えながら最後は倒れ込むようにして3位フィニッシュ。予選後には、歩くのもやっとだった痛みをおして第一人者としての意地を見せました。

前の日本記録保持者の金井選手は2位。レース後「13秒0台というのは自分ではイメージできていなかったので一歩先を行かれた」と悔しそうにしていました。それでも「泉谷選手に追いつけるようにやっていきたい」と、東京オリンピックで時計の針をさらに回す決意を示しました。

そして驚異の記録をマークした泉谷選手。
「シニアの世界大会の経験がないので、そういった舞台で自分の力を発揮できるようにしていきたい。オリンピックでは決勝に進みたい」と夢の舞台をはっきりとイメージしました。

若手の台頭、第一人者としての意地、そしてオリンピックへの期待感、さまざまな要素がつまった日本選手権が幕を閉じました。

そのすべてが詰まった男子110メートルハードル、東京が舞台となるオリンピックにはどういうドラマが待っているのか、開幕まで1か月を切りました。