摂食障害 コロナ禍で症状悪化の報告

全国で数十万人の患者がいるとされている摂食障害、コロナ禍での影響を医療機関などが調べたところ、子どもの受診が増えたり、症状が悪化する人が増えたりしていることがわかりました。

コロナ禍の摂食障害については、さまざまな機関が調査を結果をまとめていて、このうち獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センターが、患者数の動向を調べました。

それによると去年、摂食障害の疑いで初めてセンターを受診した小中学生は70人で、前の年1.6倍になっていました。

センターの作田亮一教授は「去年のコロナによる休校明けから、明らかに初診が増えた」と話し、ほとんどが、休校中に食事の量を極端に減らす「ダイエット」を始めていたということです。

環境変化のストレスや、“コロナ太り”を強調する大人向けのダイエット情報を目にする機会が増えたことなどが拒食の引き金になったとみていて、「子どもたちは、繊細で素直で影響されやすい。どんな状況でも、適切な食事と睡眠、適度な運動が大切だと伝え続けてほしい」と話しています。

また「日本摂食障害協会」は今月、オンラインイベントを開き、協会の理事で明治学院大学心理学部の西園マーハ文教授が、新型コロナが摂食障害に及ぼす影響について去年、インターネットで行った当事者へのアンケートの結果を報告しました。
去年4月から5月にかけて行われた1回目のアンケートには278人が回答し、仕事が減って経済的な困難を抱えたり、家族との関係に問題が起きたりするなど、何かしらの「影響を受けている」と答えた人は9割に上りました。

環境変化にともない、過食の症状がある人のうち7割以上が「過食が増えた」と答えていて、症状の悪化が伺えました。

また、2回目の調査は、去年8月から9月にかけて行われ、192人が回答しました。

この中で、摂食障害の症状の背景にある精神的な状況についてたずねていて、不安や憂うつな気持ちを感じたり、不眠を訴えたりしている人が半数を占めていました。

西園マーハ文教授は「感染そのものへの不安よりも、外出自粛などの生活環境の変化が、症状の悪化に影響しているとみられる」と分析しています。
イベントでは、大学生の時に「過食おう吐」の症状を発症した女性が意見を発表し、友人から「最近食べ過ぎで過食症かも」と言われ、傷ついたと訴えました。

摂食障害の症状は、自分の意思でコントロールするのが難しいのが特徴で、食べ過ぎとは異なることから、病気への正しい知識を広めてほしいと伝えました。
また、高校生の時に摂食障害を発症した女性は、母親が症状を止めようと、生活や治療を懸命にサポートしてくれたが、症状の回復よりもまず、つらい気持ちに寄り添ってほしかった話しました。

女性は「まず、つらかったねなどと、今の状態を肯定することばをかけてほしかった」と話していました。
福岡県摂食障害拠点病院の高倉修医師は「摂食障害の症状の背景には、寂しさや切なさ、不安な気持ちがある。家族や支援者など身近な人たちは、まずは、その気持ちに耳を傾けてほしい」と話していました。