陸上 山縣亮太 1000分の1秒差でつかんだ五輪切符 男子100m

25日に行われた陸上日本選手権2日目の男子100メートル決勝。105回目を迎えた今大会は歴史に残る「史上最も熱い戦い」となりました。
オリンピックの切符をつかむには3位以内が条件。
9秒95の日本記録を持つ山縣亮太選手は、ぎりぎりの3位でその切符をつかみました。4位の小池祐貴選手とのタイム差は、わずか1000分の1秒。
距離にして1センチの差を勝ちきったそのプロセスこそ「ミスター逆境」、そして「オリンピック男」と言われた男の真骨頂でした。

レース直後のミックスゾーンで「率直な気持ち」を問われた山縣選手が答えました。

「安堵ですね」

ケガや病気のため日本選手権の出場は3年ぶり。日本新記録をマークしてから3週間足らずで迎えた今大会に向けては「悔いのない準備が出来た」といいます。
決勝のレース、優勝した多田選手のスタートでの飛び出しは、同じくスタートを得意とする山縣選手にとっても「予想以上」でした。
追いつこうと思った中盤、走りのペースを乱してしまいました。

「このレースは自分にとってすごく気合いが入った一本。気合いが空回りするとこういう形になってしまう」

何をやっても冷静にこなす山縣選手が空回りするほどの気合い。この1本のレースにかける思いの強さがありました。
10秒00の自己ベストを最初にマークしてから4年で、ようやくたどりついた9秒台。中学時代から意識し続けてきたという新たな世界は「ケガがあったからこそ、ケガがあってそこからいろいろ積み上げてこられたからこそ、出せた記録」でした。

いつも隣り合わせだったケガや病気という「逆境」。それをオリンピックシーズンのたびに乗り越えてきたという「オリンピック男」としての自負が山縣選手にはあります。
決勝のレースの最終盤、なんとか粘ってフィニッシュした山縣選手。
電光掲示板に映し出されたタイムは10秒27、小池選手も同じ10秒27でした。
同タイムの場合、ふだんより一つ下の桁、1000分の1秒単位のタイムで順位が決まります。
そのタイムは山縣選手が10秒264、対する小池選手は10秒265。
その差はわずか1000分の1秒、距離にするとわずか1センチの差でした。
今大会で内定を得るための前提条件は3位以内に入ること、3位と4位では天と地ほどの差があります。
その勝負を分けたのが1000分の1秒の差だったのです。

記者が「その差には、ここまで積み上げてきたものが何かあったのでは」と尋ねました。感慨深い表情を見せながら山縣選手が口にしたのは、やはり逆境を乗り越えてきた「力」の存在でした。

「本当にたくさんの人の支えの中で、ケガの時期も頑張ってこられた。そういった力が最後に背中を押してくれたんじゃないかなと思います」

オリンピック本番まで残り1か月。
100メートルで決勝に残る8人の「ファイナリスト」、そして、400メートルリレーでの金メダル獲得に向けて、山縣選手は「まだまだ完成形じゃない」という言葉でインタビューを締めくくりました。

オリンピックの舞台となる国立競技場、その舞台に立つ1か月後、さらに輝きを増した自分の姿を思い描いているようでした。