密集しない避難の実現 “車中避難”も選択肢に 神奈川 綾瀬

ことしも大雨や台風の季節を迎えましたが、新型コロナウイルスの感染が広がるなかで、自治体は人が密集しない避難をどう実現するか、頭を悩ませています。

神奈川県綾瀬市では、車が市民の主な移動手段となっていることから、安全に車の中で過ごす「車中避難」を、選択肢の1つに加えようと取り組みを進めています。

人口8万3000人余りの綾瀬市では、災害発生時の避難所として合わせて32か所が準備されています。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、避難者どうしの距離を取ることを考えると、避難所で受け入れられる人数は最大でおよそ1万5000人。

これまでの半分程度に減らさざるをえないといいます。

こうした中、実は綾瀬市では、以前から車の中で過ごす避難「車中避難」に注目していました。

市内に鉄道の駅がなく、市民の主な移動手段が車であることや、5年前の熊本地震で、現地に派遣された職員が、車中で避難生活を送る人が多かったと報告したことなどから、一定のニーズがあると判断し、どうすれば安全な「車中避難」を実現できるか考えてきたのです。

いま、市は「車中避難」が避難所の密集対策にもなると考え、取り組みを進めています。

その一つが車をとめる場所の整備です。

水や食料などの支援を行き届かせるため、なるべく同じ場所で避難してもらおうと、市内の公園や公共施設の駐車場、3か所を避難場所として用意しています。

このうち、24時間使えるトイレがない市民文化センターの駐車場では、災害時用のトイレの整備を進めていて、この秋にも完成する予定です。

また「車中避難」で最も心配されるエコノミークラス症候群への対策も進めています。

エコノミークラス症候群は、狭い場所で長時間、同じ姿勢で過ごすことで足に血の塊ができ、肺などの血管に詰まる病気で最悪の場合、死に至ることもあります。

市は強めの締めつけで足の血の流れをよくする、特殊なストッキングを配布することにしていて、熊本地震のよくとしから毎年1000足ずつ備蓄を増やしています。
さらに、避難している人が手足を伸ばしてリラックスできる環境を整えようと、1度に12人が利用できる仮設風呂を2基用意しました。

車が集まる場所に設置する計画で、定期的に設置の手順を確認するための訓練も行っています。

市によりますと、現時点で受け入れることができる「車中避難」の車は600台余り。

さらに避難ができる場所を増やそうと、2つの民間企業と災害時に駐車場を使えるようにする協定を結んだほか、国有地を活用できるよう、防衛省とも調整を進めています。
綾瀬市の古塩政由市長は「今の避難所では、希望する避難者を受け入れたうえで密集を避けることが難しい。また、災害時には、車で過ごす避難を選ぶ人も多いと想定している。行政として、安全を確保する対策を講じたうえで、『車中避難』を選択肢の1つにしていきたい」と話していました。