東京都のモニタリング会議 “感染再拡大の予兆が見られる”

東京都のモニタリング会議で、専門家は都内の新規陽性者数の増加比が大きく上昇していて、感染の再拡大の予兆が見られると指摘しました。そのうえで、変異ウイルスの影響を踏まえると急激な感染拡大の可能性があると危機感を示しました。

会議のなかで専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、23日時点でおよそ418人となり、およそ376人だった1週間前・今月16日時点の111%でした。

新規陽性者数の増加比は先々週が80%、先週が97%と100%を下回っていたのが、今週は111%となり2週続けて大きく上昇していて、専門家は「感染の再拡大の予兆が見られる」と指摘しました。

そのうえで、年末から年明けにかけての「第3波」では、新規陽性者数の7日間平均が今回とほぼ同じ400人前後でおよそ3週間推移したあと、爆発的に感染が再拡大したとして、変異ウイルスの影響を踏まえると第3波を超える急激な拡大の可能性があると危機感を示しました。

そして、これまで以上に人の流れを抑え感染防止対策を徹底し、急激な再拡大を阻止しなければならないと指摘しました。

一方、23日時点で入院患者は1301人、重症の患者は44人と、いずれも減少しました。

ただ、専門家は医療機関はおよそ1年半にわたり治療に追われているうえ、現在は多くの人材をワクチン接種に充てていて負担が増しているとして、新規陽性者の急激な増加で医療提供体制のひっ迫が危惧されると指摘しました。

総括コメント 「感染状況悪化に強い危機感」

都のモニタリング会議では都内の感染状況と医療提供体制について専門家が評価・分析し、その結果を「総括コメント」として毎週公表しています。

このうち、感染状況は去年11月19日に4段階のうち最も高い警戒レベルに引き上げられました。

「総括コメント」では、今月4日の会議から「再拡大の危険性が高いと思われる」と指摘されています。

さらに「総括コメント」を補足する具体的なコメントでは、2週間前、今月10日の会議で「新規陽性者数が十分に下がりきっていない」、1週間前、今月17日は「新規陽性者数は下げ止まっている」と指摘されていました。

そして、24日「感染の再拡大の予兆が見られる」と指摘され、都内の感染状況が悪化していることに強い危機感が示されました。

東京都医師会 猪口副会長「医療提供体制 全く余力なし」

モニタリング会議のあと、東京都医師会の猪口正孝副会長は「入院している患者数などはまだ増えてきてはいないが、今の感染の状況を考えるとこれからまた増えていくだろうと危惧している。重症患者の数もそれほど減っているわけではなく、医療提供体制が非常にひっ迫したまま折り返し地点となり、増えていくことが考えられる」と述べました。

そのうえで、「通常医療は、大変な状況なうえに、今、一生懸命ワクチンを打っているので、医療提供体制は全く余力はない。感染者数が増えてくることを考えると非常に心配している」と述べ、懸念を示しました。

多羅尾副知事「非常に厳しい状況 今が正念場」

東京都の小池知事は過度の疲労で静養が必要となり公務を離れていることから今週のモニタリング会議は欠席し、代理の多羅尾副知事が会議後の記者団の取材に応じました。

この中で、多羅尾副知事は「新規陽性者数の増加比が2週連続で大変上がっていて、重点措置期間には入ったものの、非常に今、厳しい状況だと認識している」と述べました。

そのうえで、「これ以上、何としても拡大をさせないために感染防止対策の改めての徹底が必要だ。不要不急の外出自粛のほか、テレワークや時差出勤などを改めて徹底していただき、飲食店などの皆様には本当に長い期間、苦労をおかけしているが、現在のルールを必ず守っていただきたい。本当に今が正念場だ」と述べました。

夜間の繁華街人出 再び増加に

モニタリング会議で、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長は、都内7つの繁華街の人出は緊急事態宣言の解除後に再び増加に転じているとし、「増加が続くと数週間後には感染者数が急増するリスクがあり、強い警戒が必要だ」と指摘しました。

西田センター長によりますと、緊急事態宣言が解除されてから23日までの3日間の都内7つの繁華街の人出は、夜間が7.1%、昼間が1.3%、それぞれ増加したということです。

都内の繁華街の人出は、ことし4月に緊急事態宣言が出された直後の2週間は、夜間で50%以上減少していましたが、先月の大型連休のあと5週間にわたって増加が続きました。

緊急事態宣言が解除される前の先週1週間は、人出は一時横ばいでしたが、解除後は再び増加に転じたことになります。

西田センター長は「増加が続くと数週間後には感染者数が急増するリスクがあり強い警戒が必要だ。繁華街での夜間の人出の増加をできるかぎり抑えていくことが必要だ」と指摘しました。

専門家「インドで発見 変異ウイルス 都内で増加の兆し」

モニタリング会議に出席した専門家は、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスの感染について、専門家が「都内で今後かなり増えてくる兆しがうかがわれる」と述べ、危機感を示しました。

モニタリング会議では変異ウイルスごとの感染割合が報告されました。

それによりますと、インドで見つかった「L452R」の変異があるウイルスへの感染割合は今月13日までの1週間で変異ウイルスへの感染が確認された人全体の3.2%で、人数では32人でした。

それが、今月20日までの次の1週間では速報値で45人、割合は8.2%に上昇しました。

依然として「N501Y」の変異があるウイルスの割合がおよそ80%を占めているものの、さらに感染力が強いとされる「L452R」の変異があるウイルスの占める割合が、1週間で5ポイント増加しています。

都の「専門家ボード」の座長で東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「今後かなり増えてくる兆しがうかがわれる。『N501Y』に置き換わるまでに2か月ほどかかったが、『L452R』はもう少し早く拡大するのではないか」と述べました。

そのうえで「特定の年代に多いということではなくて、比較的、各年代で感染が確認されていて、地域もさまざまだ。今後しっかりと注意していく必要がある」と指摘しました。

モニタリング会議 専門家の分析結果

24日のモニタリング会議で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

感染状況

新たな感染の確認は、23日時点の7日間平均が418.0人となり、1週間前今月16日時点の376.3人よりおよそ41人増加しました。

前の週のおよそ111%となり、専門家は「2週連続で大きく上昇し、感染の再拡大の予兆が見られる。新規陽性者数は十分に下がり切らないまま、高い値で推移している」と強い警戒感を示しました。

今月21日までの1週間に感染が確認された人の年代別の割合は、20代が最も多く32.0%で、2週連続で30%を超えています。

次いで30代が18.9%、40代が16.6%、50代が12.2%、10代が7.9%、60代が4.6%、10歳未満が3.1%、70代が2.5%、80代が1.5%、90代以上が0.7%でした。

20代から40代をあわせると全体のおよそ67%を占める一方で、65歳以上の高齢者は、今週は170人で前の週より11人減り、割合も減少して6.3%でした。

感染経路が分かっている人では同居する人からの感染が49.7%と最も多く、次いで職場が16.8%、高齢者施設や病院、保育園や学校といった施設での感染が11.4%、会食が8.5%でした。

今週は、施設での感染が前の週と比べて倍増し、特に80代以上では19ポイント余り増えて60.6%でした。

10代でも18ポイント余り増えて29.7%になりました。

専門家によりますと「病院や老人ホームなどの介護施設でのクラスターが複数発生している。さらに、保育園や高校などでの感染例も散見されている」と指摘しています。

また、職場での感染では、先週から横ばいの16.8%でした。

「感染の広がりを反映する指標」とされる、感染経路が分からない人の7日間平均は23日時点で260.6人で、前の週から22人増えました。

増加比は、23日時点で109.2%と前回から9ポイント上昇しました。

専門家は「感染経路が追えない潜在的な感染拡大が危惧される。第3波では100%を超えて緩やかな上昇傾向のあと急激に感染が再拡大した」と分析しました。

そのうえで「再拡大を回避するためにはさらに増加比を低下させる必要がある。これまで以上に人の流れの増加を抑制するとともに、感染防止対策を徹底することが必要だ」と警戒を呼びかけました。

感染経路が分からない人の割合はおよそ63%と、前の週と比べて横ばいでした。

年代別では、10代以下と80代以上をのぞくすべての年代で感染経路の分からない人が50%を超えています。

特に、20代と30代、それに50代では60%台後半、40代では70%を超える割合となっています。

専門家は「保健所の積極的疫学調査による接触歴の把握が困難な状況が続いている。その結果、感染経路が分からない人とその割合も高い値で推移している可能性がある。学校や高齢者施設などで新規の陽性者が発生すると同じ地域内に感染者が集積し、さらに周辺にも拡大するおそれがある」と指摘しています。

医療提供体制

検査の陽性率の7日間平均は23日時点で4.6%となり、前の週・今月16日時点と比べて0.5ポイント上昇しました。

入院患者は23日時点で1301人と今月16日時点より45人減少しましたが、専門家は「減少傾向にあるものの、N501Yよりもさらに感染力が高いとされるL452Rによる感染拡大が懸念され、急激な新規陽性者数の増加による医療提供体制のひっ迫が危惧される」と指摘しています。

入院患者を年代別にみると、60代以下が全体のおよそ75%を占めています。

最も多いのは、50代でおよそ19%、次いで、40代のおよそ18%などとなっています。

ただ、30代以下も全体のおよそ26%を占めていて、専門家は「あらゆる世代が感染によるリスクを持っている意識を強く持ち、人との接触の機会を減らし基本的な感染防止対策を徹底するよう啓発する必要がある」と呼びかけています。

都の基準で集計した23日時点の重症患者は今月16日時点より1人減って44人でした。

男女別では、男性33人女性11人です。

また、年代別では、70代が最も多く22人、次いで60代が10人、50代が5人、80代が4人、40代が2人、30代が1人でした。

60代以下の割合はおよそ41%で、専門家は「依然として高い」と指摘しています。

このほか、人工呼吸器やECMOの治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は23日時点で205人で、今月16日時点と比べて10人減りました。

ただ、専門家は「重症患者数の新たな発生が続いており、いまだ警戒すべき水準にある。増加の予兆を見逃さないよう、厳重に警戒する必要がある」と指摘しています。

また、23日時点で陽性となった人の療養状況を今月16日時点と比べると、自宅で療養している人は31人増えて712人、都が確保したホテルなどで療養している人は103人増えて881人、医療機関に入院するか、ホテルや自宅で療養するか調整中の人は99人増えて696人でした。

「療養が必要な人」全体の数も188人増えて23日時点で3590人となり、専門家は「依然として高い水準で推移している」と指摘しています。

また、今月21日までの1週間では、新型コロナウイルスに感染した39人が亡くなりました。

前の週より9人減りました。

死亡した39人のうち、70代以上が36人を占めています。