CDC 心筋炎「接種と関連の可能性」“恩恵はリスク上回る”声明

アメリカのCDC=疾病対策センターは、ファイザーなどが開発した新型コロナウイルスワクチンとモデルナのワクチンを接種した、主に若い世代で、心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」などの症状が報告されていることについて「ワクチンの接種と関連している可能性がある」とする見解を明らかにしました。一方で、CDCやアメリカ厚生省などは、ワクチンでもたらされる恩恵はリスクを上回るとする声明を共同で出し、引き続き若い世代も接種するよう呼びかけました。

CDCは23日、外部の専門家による委員会で、接種後の健康への影響を自主的に報告するシステムを通じて、ファイザーとモデルナのワクチンの接種後に「心筋炎」や心臓を包む膜に炎症が起きる「心膜炎」の症状を示したという暫定的な報告が、今月11日までに1226人から寄せられたと公表しました。

これらの症状はワクチンを接種していなくても起きることがありますが、主に10代から20代の若い世代で通常想定されるよりも報告数が多いことがわかり、特に女性より男性で、2回目の接種のあとに多いということです。

一方、報告のうち、CDCの基準で症状が確認できた29歳以下の323人について経過を調べたところ、入院した309人のうち9人は今月11日の時点でも入院中でしたが、295人はすでに退院し、このうち79%の218人は回復したことを確認したということです。
ファイザーとモデルナのワクチンはこれまでにアメリカで合わせて3億回以上接種されていて、CDCは、39歳以下での2回目の接種後の心筋炎などの頻度は100万回当たり12.6例程度だと分析しています。

CDCの専門家は「ワクチンの接種と関連している可能性があるが発生はまれだ」との見解を示し、今後もデータの収集と分析を進めるとしています。

今回の発表に合わせてCDCやアメリカ厚生省、それに複数の医療の専門団体は「こうした症状は極めてまれで、若い世代ではほとんどが軽い症状にとどまっている。ワクチンは自分と周囲の人間を守り、その恩恵はリスクを上回る」とする声明を共同で出し、引き続き若い世代も接種するよう呼びかけました。

国内の状況は

厚生労働省によりますと、国内では、今月13日の時点で、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人のうち25歳から72歳の男女11人に心筋炎や心膜炎の症状が確認されています。

接種を受けた人は1714万人余りで、およそ156万人に1人の割合となっています。

このうち72歳の女性が死亡し、接種との因果関係については「評価不能」としています。

11人のうち、9人は2回目の接種のあとに発症し、8人は男性だということです。

一方、モデルナのワクチンの接種を受けた人で、今月13日までに症状が報告された人はいませんでした。

厚生労働省は「現時点では接種による重大な懸念は認められず、メリットが上回る」として、国内外の情報を注視しつつ、接種を進める方針を決めています。

一方で「正確な比較は困難だが、若年の男性では接種を受けた人のほうが発症する頻度が高い可能性がある」として接種後に胸の痛みや息苦しさなどを感じた場合は積極的に医療機関を受診するよう呼びかけています。

専門家「メリット考えると接種控えるようなものではない」

アメリカで新型コロナウイルスのワクチンを接種した主に若い世代で心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」などの症状が報告されていることについて、ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は次のように話しています。

「CDCの発表では、39歳以下での心筋炎などの頻度は100万回当たり12人程度と頻度はわずかに高いように思う。免疫の反応によって炎症を起こすたんぱく質が多く出ている可能性がある。

ただ、心筋炎はインフルエンザなどのウイルス感染症でも起こることがあるが、ウイルスに感染して心筋炎が起こる場合よりも重症化はせず、軽い症例が多いと考えられる。

深刻な副反応かどうかは今後も注意して見ていかなければならないが、重症化や感染を予防するワクチンのメリットを考えると現時点では接種を控えるようなものではないと考えられる。

ワクチンの接種自体は個人の意思に委ねられるべきだが、正しい情報が一人ひとりにきちんと伝わるようにする必要がある」。