うつ病などの労災認定 608人過去最多 “過労自殺”も81人

仕事の強いストレスなどが原因でうつ病などになったとして昨年度、労災と認められたのは608人と、これまでで最も多くなったことが厚生労働省のまとめでわかりました。

厚生労働省によりますと、昨年度、長時間労働や仕事の強いストレスが原因でうつ病などの精神疾患になったとして労災と認められたのは608人でした。

これは、前の年度より99人増えて1983年度に調査を始めてから最も多くなっています。

このうち「過労自殺」に追い込まれたのは未遂も含めて81人となっています。

認定の理由は「上司などからのパワハラ」が99人と最も多く、「悲惨な事故や災害の体験」が83人、「職場でのいじめや嫌がらせ」が71人、「仕事量や内容の大きな変化」が58人などとなっています。

認定された人を年代別でみると最も多かったのは40代の174人で、全体の29%に上ったほか、30代は169人と前の年度より37人増えて増加が目立っているほか、20代は132人と前の年度より16人増加しました。

新型コロナウイルスの関連では、感染したことで職場で嫌がらせを受けるなど7人が労災と認定されたということです。

また精神疾患になったとして昨年度、労災を申請したのは2051人に上り、前の年度の2019年度に次いで2番目に多くなっています。

一方、長時間労働などによる過労が原因で脳出血や心筋梗塞などを引き起こし労災と認定されたのは昨年度、194人でした。

このうち「過労死」と認められたのは67人で、20代や30代の若い世代も合わせて11人が認定されました。

厚生労働省は「新型コロナウイルスの影響で残業時間が減少した一方で、うつ病などの労災申請の件数は高止まりしている。長時間労働の防止や、メンタルヘルス対策の徹底に向けて企業などへの周知や指導をしていきたい」としています。

専門家「新型コロナ影響か 申請さらに増える可能性」

過労死などの問題に取り組む川人博弁護士は「新型コロナウイルスの影響が続く中、テレワークで仕事とプライベートの区別がつきにくくなり、長時間労働になったり、業績が悪化した企業でノルマの達成を強いられたりしてうつ病などを発症するケースが増えているとみられる。また、医療や介護などで働くいわゆるエッセンシャルワーカーの中でも長時間労働などで体調を崩す人が相次いでいる。今後、労災の申請はさらに増える可能性があり、働く人たちの健康をどう確保していくのか、社会全体で真剣に考えなければならない」と話していました。

働く環境の変化でうつ病に

都内の不動産会社で働く50代の男性は去年4月からテレワークを始めて、職場に出勤するのは月に2日ほどになりました。

男性が働く会社では、個人向けの不動産売買を主な業務としていましたが、新型コロナウイルスの影響で見学会などのイベントができなくなったことから、売り上げがおよそ9割減少しました。

このため男性は、法人向けの不動産売買やテレワークのための個人向けの賃貸など、これまで経験していない業務をしています。

しかし、テレワークのためこれまでのように顧客と会って交渉することや、ほかの従業員と相談することができず、なかなか思うように成果が得られないことから、先行きへの不安を感じるようになったといいます。

こうした中で、集中力がなくなって疲れやすくなり、食欲がわかず夜も眠れなくなるなど、体調に異変があらわれました。

また、一緒に暮らす妻や小学生の子どもに大声でどなるなど強くあたるようになってしまい医療機関を受診したところ「軽度のうつ病」と診断されたということです。

男性は「悩んでいても誰に話せばいいのかわからなくて、自分がもっと頑張らなければと、思っていました。また、家族にあたってしまったあと、さらに落ち込むということもあって、どうすればいいのかわかりませんでした。現在は治療を受けていて症状は改善してきていますが早めに医師に相談することが大事だと思いました」と話していました。

うつ病を防ぐための企業の取り組みは

新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、従業員のうつ病を防ぐために、取り組みを始めた企業もあります。

都内の大手食品メーカーが去年、テレワークを導入した際、通勤などの負担がなくなることから多くの従業員が好意的に受け入れたといいます。

一方で一部の従業員からは「コミュニケーションがとりにくい」とか「仕事とプライベートの区別があいまいになる」などの声が出たということです。

このため、この会社ではテレワークを続ける中でストレスで体調を崩すことがないよう、社内にチームを立ち上げ取り組みを進めています。

従業員がストレスをどの程度感じているかを把握するため専用の機器を使い、心拍から疲労度やストレス度を計測します。

およそ1300人の従業員のうち、同意が得られた900人が実際に機器で計測したところ、およそ2割が疲労度やストレス度が高かったことから、看護師による面談や、睡眠の質を高める研修の案内などを実施したということです。

実際に計測した従業員の男性は「自分がストレスを感じているとは自覚していなかったので、『要注意』という結果が出て、何かの間違いではないかと驚きました。アドバイスを受けて、睡眠の質を高めるために寝具を買い替えたり、辞めていたジョギングを再開したりしました。対策ができてよかったです」と話していました。

日清食品ホールディングス健康経営推進室の三浦康久さんは「従業員からの相談を待っているだけでは、ストレスに気づかず手遅れになってしまうかもしれない。従業員が健康に働けることは本人にとっても企業にとってもプラスなので、長く健康に働けるよう、予防的な取り組みを続けていきたい」と話していました。