五輪・パラ学校観戦「別枠」扱いに 都内の小学校は戸惑いも

東京オリンピック・パラリンピックで競技会場のある自治体などの児童・生徒たちに割り当てられている「学校連携観戦チケット」について、大会組織委員会などは観客の上限とは「別枠」での取り扱いにすることを決めました。東京都教育委員会は予定どおり観戦に行くかどうか今後、学校ごとに意向を集約するとしていますが、現場からは戸惑いの声も上がっています。

東京 葛飾区の白鳥小学校では、全校児童492人が「学校連携観戦チケット」でパラリンピックの競技を3つの会場で観戦する予定です。

会場への移動は原則、公共交通機関を利用することが求められているため、今月19日、副校長の新保崇文さんが実地調査に向かいました。

向かったのは、1年生と6年生が「ボッチャ」の競技を観戦することになっている江東区の有明体操競技場です。

小学校からは鉄道を3本乗り継いで行く必要があり、新保さんは駅のホームで児童が密になったり、線路に落ちたりしないか、写真を撮りながら確認していました。

また、電車に乗り降りするたびに点呼をとる必要があるため、トイレ休憩などを含めると、往復で4時間近くかかることが分かりました。

一方で会場内を視察したところ、担当者からは建物内で密にならないように点呼できる集合場所はなく、児童がどこに座るのかもまだ決まっていないと説明を受けたということで、感染リスクがどの程度あるのか具体的には分からなかったとしています。

実地調査を終えた新保さんは「会場では大勢ではすれ違えないところもあり、どういった形で密を避け感染予防ができるか分からない部分もある。熱中症対策は、持ち込める水の量が決まっているので飲ませすぎないようにしないといけない。予測できないことが多く、当日になってみないと把握できない難しさがあります」と話していました。

21日には、3つの会場への実地調査を踏まえ、子どもたちを安全に観戦に連れて行けるのか、会議を開いて話し合いました。

その中では、児童が座る席が決まっていないことや移動に4時間近くかかるうえ、密を避けるために一般の観客と入退場をずらすと観戦できる時間が30分ほどしかないといった課題が報告されました。

これに対し、教員からは「長年続けてきたオリパラ教育の集大成として一生に1度の機会になるかもしれないので経験させたい」とか、「重点措置が解除されたとしても保護者に安全だと説明できるか疑問だ」などと意見が交わされました。

そのうえで、校長は、観戦に行く前提で準備を続けるものの、許容できないリスクが残る場合や感染状況によっては中止する場合もあるとしました。

白鳥小学校の田代淳校長は「安全の確保と子どもたちの一生の思い出、このてんびんで、非常に判断に苦しんでいます。判断できる情報が少なく、どうなるか分からないけれど、どういう場合でも対応できるようにしなければならない。リスクがどうしても残ってしまった場合、行かないという判断もしなければならないかもしれません」と話していました。

専門家「テレビ観戦など検討を」

学校運営の危機管理に詳しい東京学芸大学の渡邉正樹教授は「特に低学年の児童はマスクの着用で熱中症のリスクが高まるうえ、会場などの感染対策がはっきり見えない中で、学校側が短期間に安全かどうか確認し観戦に行くかどうか判断するのは大変難しいことだと思います」と話しました。

そのうえで、「会場に行かなくてもテレビなどで観戦して教育のねらいを達成できないか検討するべきで、もし会場に行く場合も感染状況や天候などを考慮し当日まで慎重に判断する必要がある」と指摘しました。