40年超の美浜原発3号機が再稼働 原発事故後 全国初

運転開始から40年を超えた福井県にある関西電力の美浜原子力発電所3号機が23日午前、原子炉を起動して再稼働しました。10年前の福島第一原発の事故のあと40年を超えた原発が再稼働するのは全国で初となります。

東京電力、福島第一原発の事故のあと、国内の原発は法律で運転期間が原則40年に制限されていますが、国の審査に通ると例外的に最長60年まで運転延長が可能となります。

運転開始から44年が経過した関西電力の美浜原発3号機ではことし4月に福井県が再稼働に同意したことを受けて原子炉の起動に向けた準備が進められてきました。

そして、国の検査などが終わったことから23日、中央制御室で関西電力の運転員がパネルを操作して核分裂反応を抑える制御棒の引き抜きを開始し、午前10時に原子炉を起動して美浜原発3号機は再稼働しました。

福島第一原発の事故のあと国内で40年を超えた原発が再稼働するのは全国で初めてです。

関西電力によりますと作業が順調に進めば24日未明に原子炉で核分裂反応が連続する臨界状態に到達し、今月29日には送電を開始する見通しです。

美浜原発3号機はこの10年間停止していたことから関西電力は起動にあたって現場の要員を通常の倍に増やしているほか、福井県や地元自治体も職員を派遣して監視態勢を強化しています。

関西電力社長「約10年ぶりの運転再開 慎重に作業」

美浜原子力発電所3号機が再稼働したことを受けて、関西電力の森本孝社長は「全国で初めて40年を超えて運転する原子力発電所であるとともに、およそ10年ぶりの運転再開となることから、トラブルの未然防止のための総点検を実施するなど慎重に作業を進めています。引き続き安全最優先で慎重に作業を進めていきます」とコメントしています。

美浜町長「あくまで通過点にすぎず」

美浜原発3号機が再稼働したことを受けて、原発が立地する美浜町の戸嶋秀樹町長は「再稼働はあくまで通過点にすぎず、これから必要な作業や工程を経て今後の16年間にわたる運転につながっていくので、引き続き事業者には緊張感を持って安全最優先で取り組んでいただきたい」と話しました。

福井県知事「無事起動でき安ど 安全な運転に監視を強化」

美浜原発3号機が再稼働したことを受けて、福井県の杉本達治知事は「無事に起動できて安どしている。関西電力には安全で安定な運転に努めていただき、県としても監視を強化したい」と述べました。

そのうえで「久しぶりに美浜町で原発が運転するので、地元経済に継続してプラスの効果が及ぶことを期待したい」と話していました。

一方で、再稼働によって増える原発内の使用済み核燃料を搬出するための「中間貯蔵施設」について「重要な問題なので、関西電力と国が一緒になって建設候補地の確定に向けて、最大限の努力をしてもらいたい」と話していました。

原子力規制委「士気を高め よりよい姿勢で運転を」

美浜原発3号機が再稼働したことについて、原子力規制委員会の更田豊志委員長は「長期間の停止は、技術的なことだけでなく、意識などにも影響が及ぶ可能性がある。関西電力は、大飯原発や高浜原発を持っているので、経験の共有に努めて士気をきちんと高め、よりよい姿勢で運転に臨んでほしい」と述べました。

また、運転延長を認めるかの規制委員会の審査に関連し「審査では、高経年化の影響などについて極めて厳しく見たつもりだ。ただ、年数にかかわらず、新しい炉であったとしても、原発を運用するものが高い緊張感や高い士気を持つことが必要なのは言うまでもない」と述べました。

専門家「絶対安全という保証はどこにもない」

アメリカのGE=ゼネラル・エレクトリック社で原子炉の設計などに携わっていた佐藤暁さんは、40年を超えた原発が50基近く稼働しているアメリカでは経年劣化を検知する仕組みを重点的に整備しているといいます。

そのうえで、日本もそうした仕組みを導入すべきだとしています。

「例えばケーブルであれば、放射線のレベルが高いとか温度が高いとか、あるいは温度変化が激しいとかあれば、だんだんこの被覆材にヒビが入ってそういうことがあるわけですね。劣化の傾向が、例えば電気測定をやっても全然何も異常が出てこないと言う事はあります。なかなか経年劣化というのは見つけにくい現象なので、今アメリカでやっているようにデータ的な分析にも力を入れないといけない。基本は重大事故に至らしめないということが大事なところなので、事故が起こったあとの部分を強化したということで慢心してはいけない」と指摘しています。

そのうえで、現場での検査が確実に実施されているかをきちんと監視すべきだとして「これからの20年間は絶対安全ですというような保証はどこにもない。これからやっていかないといけないのは約束された経年劣化管理を事業者が気を抜かないで実行していく。一方、規制機関がそういう事業者の活動を問題ないかというのを検査制度をもってしっかり監視していく、これ以外にない」と話しています。

運転延長の背景に”脱炭素社会とコスト”

国や電力会社は脱炭素社会の実現やコストの点から、既存の原発についてはできるだけ長く利用していきたい考えです。

資源エネルギー庁は、建設中を含む国内の36基の原発について、運転期間が40年の場合と60年の場合で将来、発電電力量に占める割合がどのように変化するか推計してまとめています。

それによりますと、すでに運転延長の認可を受けている4基を除く32基がすべて運転開始から40年で運転をやめたと仮定した場合、2050年の時点で動いているのは3基のみ、発電量としては290億キロワットアワーと推定される総発電量の2%程度にとどまるとしています。

一方、仮にすべての原発が60年まで延長して運転するとした場合、2050年の時点で動いているのは23基で、発電量は1663億キロワットアワーと総発電量の10%程度になると見込んでいます。

政府は、3年前に策定したエネルギー基本計画で原発への依存度を「可能なかぎり低減させる」としていて、現時点で、原発の新設や増設を想定していません。

一方で、2050年までの脱炭素社会の実現という新たな目標も掲げられ、国や電力会社にとっては、既存の原発を長く利用しようとする動きにつながっています。

再稼働反対の市民団体がデモ行進

美浜原発3号機の再稼働にあわせて福井県美浜町では、県内外から集まった再稼働に反対する市民団体がデモ行進を行い、運転を中止するよう訴えました。

主催者側の発表で300人余りが参加し「老朽原発動かすな」などと書かれた、のぼり旗を手に関西電力の原子力事業本部に向かいました。

事業本部では、団体の代表者らが再稼働の中止や廃炉を求める申し入れ書を関西電力の広報担当者に手渡しました。

主催した「老朽原発うごかすな!実行委員会」の木原壯林代表は「原発というのは万が一にでも事故を起こしてはいけない装置だ。事故が起これば取り返しがつかないので運転は中止すべきだ」と話していました。