地方でタワマン建設ラッシュ! その理由は?

地方でタワマン建設ラッシュ! その理由は?
コロナ禍にもかかわらず、いまタワーマンションの売れ行きが好調です。都心の話ではありません。人口数十万の地方都市でです。民間の不動産調査会社によりますと、去年、3大都市圏を除く地方で完成したタワーマンションの部屋数は、この10年で2番目に多くなりました。地方の不動産市場で何が起きているのか、その実態に迫ります。(山形局記者 堀征巳)

山形で相次ぐタワマン建設

舞台は人口およそ25万の山形市。
いまタワーマンションの建設が相次いでいます。

市役所に近い中心部のエリアに、ことしだけで20階建てのタワマンが2棟完成しました。

来年と再来年にも15階建てのマンションが1棟ずつ完成する予定です。
こちらは、ことし4月に完成したばかりのマンションです。

場所は去年1月に閉店した老舗デパートの目の前。

当初は閉店の影響が懸念されましたが、売り出された144戸のうち7割以上がすでに売却済みだと言います。
建物の1階部分にはコンビ二が出店し、7月には生鮮食料品を販売する商業施設もオープンする予定です。

こうした利便性から人気が高まっているということです。
同じ山形市の中心部には、ことし2月にもタワマンが完成しました。

こちらの部屋数は171、平均価格は3LDKから4LDKでおよそ4200万円と、周辺の相場より高めですが、それでも完成前の去年12月までに完売しました。

建設ラッシュの理由は

なぜ地方都市の山形で、タワマンの需要が高まっているのか。

マンションを販売した不動産会社「タカラレーベン東北」の原忠行社長に話を聞きました。
原社長は「コロナ禍で自宅にいる時間が長くなったことで、中心部でより快適に過ごしたい、リモートワークに取り組める書斎的なスペースが欲しいという客が増えてきた」と話しています。

マンションを購入した人の70%あまりが山形市民で、その4割程度は、持ち家から住み替える人だということです。

その上で、山形特有の理由として、▽高速バスを利用すれば、仙台に1時間で行くことができ通勤通学に便利なこと、▽山形新幹線で首都圏にも行きやすいことなどを挙げていました。

進む中心部への人口回帰

郊外の持ち家から中心部にあるマンションへの人口シフト。

実は高齢化社会の進展と相まって、地方で急速に進んでいます。
山形市の中心部にある「七日町1丁目」では、この10年間に人口が3倍以上に増えました。山形市全体で3%近く減少したのとは対照的です。

この間に建設されたマンションが、人口回帰の呼び水となっていました。

不動産調査会社の「東京カンテイ」に話を聞いたところ、▽病院や市役所が近くにあって生活しやすいこと、▽将来の運転免許の返納に備え、車が不要な場所に移り住むニーズがあること、▽一戸建てよりも光熱費が安くすみ、雪国では欠かせない除雪をしなくてすむことなどから、高齢者を中心に中心部に住むニーズが高まっているということです。

不動産会社の戦略

こうした地方のニーズの変化に、マンションを建設する不動産会社は早くから目をつけてきました。

今回取材した会社では、いまから6年前に東北地方に進出。
それ以降、県庁所在地だけでなく、県内第2・第3の都市でも、マンションの建設を進めてきました。

豪雪地帯として知られる秋田県横手市でも、去年6月に10年ぶりとなるマンションを完成させました。この物件は、除雪しなくていいと人気が高まり、この冬に完売したということです。

原忠行社長は「東北でもマンションに住み替える需要はまだあるのではないか」と話していて、今後も10万人以上の都市を中心に、新たなマンションを建設していく考えです。

ほかの地方都市でも

地方都市におけるマンション人気は全国的に高まっています。

民間の不動産調査会社「不動産経済研究所」によりますと、ことし3月末時点の調査で、建設中または建設が計画されているタワマンの部屋数は、▽福岡県で3000戸あまり、▽北海道ではおよそ2300戸、▽岡山県でも800戸あまりと、3大都市圏以外でも供給が増えています。

価格も上昇していて、去年の新築マンション1戸あたりの平均価格は全国で4971万円と、4年連続で過去最高を更新しました。

不動産経済研究所の担当者は「タワマンの需要は新型コロナの影響をあまり受けていない。地方でのマンション需要は今後も堅調に推移していくのではないか」と話しています。
高齢化の進展とともに地方都市で高まる中心部に住むニーズ。
タワマンの建設ラッシュは、そのニーズを反映したものと言えます。

地方都市では長年、中心市街地の空洞化が課題となり、大規模な商業施設の撤退などが相次いできました。

タワマンの建設で定住人口が増えることによって、そうした流れを変えることができるのか、地方都市のあり方を変える動きとして注目していきたいと思います。
山形放送局記者
堀 征巳
2004年入局
国際部、ヨーロッパ総局を経て2018年から現所属