ワクチン職域接種 専門の学会が事業者向け注意点まとめる

新型コロナウイルスのワクチンの職域接種が始まったのに合わせて、専門の学会が、事業者向けに職域接種を行う際の注意点などをまとめました。

この手引きは日本渡航医学会と日本産業衛生学会がまとめたもので、21日、学会のウェブサイトで公開しました。

手引きは、多く寄せられる質問に答える形で、企業などが新型コロナウイルスのワクチンを職域で接種する際の注意点や副反応への対応方法などについて説明しています。

このうち副反応については、まれに起こるとされる激しいアレルギー反応「アナフィラキシー」は若い世代の方が起こりやすいとして、会場に薬を準備するなど体制を整えておくことが重要だとしています。

また、発熱などの副反応は多くは1日から2日で消えるものの、2回目の接種後は症状が強く、仕事を休む人が出るとみられることから、同じ業務グループの人は別々の日に接種するなど欠勤に備えることが求められるとしています。

このほか、接種した従業員の個人情報の取り扱いや、従業員に接種を強要しないよう啓発することなども盛り込まれています。

手引きをまとめた東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「職域接種が広がれば流行が収束するいちばんの手立てになるが、副反応への対応などもあり、緊張感を持って進めていくことが重要だ。接種を始める企業には手引きを読んで、慎重に進めてもらいたい」と話しています。

大手私鉄 パート従業員含めワクチン接種

首都圏の大手私鉄は、新型コロナウイルスワクチンの職域接種をグループ会社のスーパーマーケットなどのパート従業員も含めて始めました。

東京 渋谷に本社がある東急グループでは、直営の病院で職域接種を21日から始め、東急電鉄の駅員らが医師の問診を受けたあと、ワクチンの接種を受けていました。

東急グループには鉄道以外にもスーパーマーケットや介護施設、学童保育施設などがあり、接種は雇用形態にかかわらず進めることにしています。

このうちパートやアルバイトが多いスーパーマーケットの職場では、各店舗の店長が従業員に、ワクチンを職場で打ちたい、かかりつけ医で打つ予定、ワクチン接種を希望しないといった聞き取りを書面で行って接種しているということです。

介護施設で働く看護師の40代の女性は「高齢者と日々接するので、感染に気をつけながら仕事をしています。まだ接種券が届いていないので、職場で接種ができてありがたいです」と話していました。

学童保育施設で働く30代の男性は「施設で感染者が出ると、“エッセンシャルワーカー”として働く親の子どもも預かれなくなってしまうので、ワクチンの接種がより早く進むとよいです」と話していました。

東急グループは「従業員から“希望者”を募り接種を推進していきます。希望しない人にも配慮し、引き続き定期的にPCR検査を実施するなど、お客さま、従業員の安全・安心の確保に努めてまいります」とコメントしています。

医師「若い世代は接種に伴う反応起きやすい」

新型コロナウイルスの重症患者の治療にあたってきた医師は、職域接種によって若い世代にも接種が進むことで、重症者だけでなく感染者数が減る効果を期待しています。

一方で、若い世代では接種に伴う痛みや緊張によって心臓の鼓動が激しくなるといった反応が比較的起きやすいため、リラックスして接種を受けてもらう対応が必要だとしています。

国立国際医療研究センターの忽那賢志医師は、新型コロナウイルスの感染拡大は若い世代から始まることが多く、職域接種で若い世代にも接種が進むことで感染者を減らせると期待しています。

忽那医師は「若い人の場合は重症化リスクが低く、接種する意義はあまりないのではないかと思うかもしれないが、いま広がっている変異ウイルスでは重症化するリスクが高くなっているとされる。また、後遺症が残る可能性もあり、周りに感染を広げないためにも、ぜひ接種を検討してほしい」と話しています。

一方で忽那医師は、ワクチンは接種の翌日以降に発熱やけん怠感などの副反応が出やすいため、職域接種では勤務上の配慮が必要だとしています。

さらに若い世代では、新型コロナウイルスのワクチンに限らず、ワクチン接種そのものに伴う痛みや緊張によって、心臓の鼓動が激しくなったり、息切れやめまい、過呼吸になったりする「血管迷走神経反射」が比較的起きやすいため、職域接種が行われる場所ではリラックスして接種を受けてもらう対応が必要だとしています。

極めてまれに起こる重いアレルギー症状の「アナフィラキシー」と似ている部分がありますが、異なるもので、忽那医師によりますと、国立国際医療研究センターで以前にワクチンを受けた人で調べたところ「血管迷走神経反射」は200人から300人に1人ほどの割合で起きていたということです。

忽那医師は「決してまれな反応ではなく、リラックスできる環境で横になって楽な姿勢で接種するなどの工夫をすると、ある程度防ぐことができる。これまでの予防接種で反応が出たことがある人は、事前に申し出てもらえれば、できる対応はある。適切に対応すれば、あまり時間はかからずにもとに戻るので、気にしすぎて接種をためらう必要はない」と話しています。

「血管迷走神経反射」とは 対処法は

一般的にワクチンの接種では注射の際の痛みや緊張によって、めまいや息切れなどの症状が出る「血管迷走神経反射」と呼ばれる反応が起きることがあります。

新型コロナウイルスのワクチン接種で実際にこうした症状の対応にあたった医師は「適切に対処すれば治まるので、接種後すぐに帰らずに、しばらく様子をみることが大切だ」と話しています。

千葉市稲毛区のクリニックでは、これまでに高齢者を中心におよそ5000人に新型コロナウイルスのワクチンを接種してきました。

接種にあたっている河内文雄医師によりますと、5月、接種した60代の女性が接種後、待機スペースで座って様子をみていたところ、気分が悪いと訴えたということです。

女性は脈が遅くなる「徐脈」がみられ、意識がもうろうとしていましたが、アレルギー反応を示す症状はなく、痛みや緊張によって血圧が低下するなどしてめまいなどの症状が出る「血管迷走神経反射」と判断したということです。

すぐにベッドに寝かせるなどの対処を行ったところ、5分ほどで改善し、その後、帰宅したということです。

河内医師によりますと、こうした症状は若い世代の方が出やすいということです。

「稲毛サティクリニック」の河内医師は「インフルエンザのワクチンでもこうした反応が出ることがある。適切に処置すれば症状は治まるので、接種後はすぐに帰らずに、様子をみることが大切だ。当日の体調も影響するので、十分睡眠をとり、体調を整えてほしい」と話しています。