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東京五輪観客数の上限決定 収容定員の50%以内で1万人を原則に

来月開幕する東京オリンピックについて、大会組織委員会などは会場の収容定員の50%以内で1万人を上限とすることを原則に観客を入れて開催することを決めました。
一方で、8月に開幕する東京パラリンピックについては来月16日までに観客の扱いを改めて決めることになりました。
東京大会の観客をめぐり組織委員会と政府、東京都、IOC=国際オリンピック委員会、IPC=国際パラリンピック委員会の5者はことし3月、海外からの観客の受け入れ断念を決め、残された焦点となっていた国内の観客の扱いを決めるため21日、改めて5者による会談を開きました。

会談では、新型コロナウイルスの感染対策にあたる専門家の有志が先週、無観客での開催が望ましいなどと提言したことを踏まえて議論された結果、東京オリンピックは会場の収容定員の50%以内で1万人を上限とすることを原則に観客を入れて開催することを決めました。

ただ、学校連携のチケットは別扱いとしています。

これによって、チケット保有者が観客の上限を超えている会場についてはチケットの再抽せんが行われることになりました。

一方で、現在のまん延防止等重点措置の期限を超えて来月12日以降、緊急事態宣言や重点措置が出された場合は無観客も含めて対応するとしています。

また、8月に開幕する東京パラリンピックについては、開幕まで時間があり新型コロナの感染状況が見通せないため、オリンピックの開会式の1週間前にあたる来月16日までに決定するとして結論を先送りしました。

今後の感染状況などによっては再度、5者による会談を開いて対応を検討するとしていて、実際に観客を入れて開催できるかどうかは今後の新型コロナの感染状況に左右されることになります。

橋本会長「国民の理解得られるよう努力」

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本会長と武藤事務総長は、観客を入れてオリンピックを開催することを決めたIOC=国際オリンピック委員会など5者との会談のあと記者会見しました。

21日午後5時すぎから記者会見した組織委員会の橋本会長は、すでに販売している観戦チケットの中で再抽せんが必要になるものがあることを明らかにしました。

そのうえで橋本会長は「大会を楽しみに待っていたチケット保持者にはご不便をかけるが、理解して欲しい。公式リセールの開設はとりやめ、観戦の都合が付かなくなった希望者には払い戻しを行う」と述べて理解を求めました。

また、チケット販売で想定していた900億円の収入が半分を下回るという見通しを示し減収額の埋め合わせについては、東京都と政府、組織委員会との間で協議したいという考えを示しました。

さらに、オリンピックの開会式での観客や大会関係者などの規模について武藤事務総長は「一部報道に2万人という数字があることは承知している。精査中なので具体的な数字は申し上げられないが、それよりは明らかに少ない数字になるだろう」と述べました。

その一方で、大会関係者は観客でないとして観客の上限となる1万人には含まれないという考えを示しました。

コロナ禍で無観客での開催を求める声もある中、観客を入れてオリンピックを開催する意義を問われた橋本会長は「8年前に開催を約束し、その時とは状況が変わる中でやる必要がないという指摘もしっかりと受け止めている」とした一方で「課題解決を先進国として見せることで次の社会での生活を取り戻すことができる状況にしていくためにも大会は意義があると確信している。国民の理解を得られるように努力する」と話しました。

各競技会場の収容定員と上限は

会場の収容定員の50%以内で1万人を上限とすることを原則に、観客を入れて開催することを決めたことで、各会場では具体的に次のようになる見通しです。

▽国立競技場は、収容定員6万8000が、上限1万となり、収容定員のおよそ15%。

▽競泳などの東京アクアティクスセンターは、1万5000なので、半分の7500。

▽柔道の日本武道館も、1万1000が半分の5500です。

▽野球・ソフトボールが行われる横浜スタジアムは、3万5000が、1万で約29%となり、こうした上限1万の会場は、野球やサッカーの会場を中心に11の会場となります。

大会組織委員会が公表している各競技会場の収容定員は、次のとおりです。

▽国立競技場…6万8000
▽東京体育館…7000
▽国立代々木競技場…1万200
▽日本武道館…1万1000
▽東京国際フォーラム…5000
▽国技館…7300
▽馬事公苑…9300
▽武蔵野の森総合スポーツプラザ…7200
▽東京スタジアム…4万8000
▽武蔵野の森公園…なし
▽有明アリーナ…1万5000
▽有明体操競技場…1万2000
▽有明アーバンスポーツパーク…5000から7000
▽有明テニスの森…1万9900
▽お台場海浜公園…5500
▽潮風公園…1万2000
▽青海アーバンスポーツパーク…7100から8400
▽大井ホッケー競技場…1万5000
▽海の森クロスカントリーコース…1万6000
▽海の森水上競技場…1万2800から1万6000
▽カヌー・スラロームセンター…7500
▽夢の島公園アーチェリー場…5600
▽東京アクアティクスセンター…1万5000
▽東京辰巳国際水泳場…4700
▽札幌大通公園…なし
▽幕張メッセ Aホール…1万
▽幕張メッセ Bホール…8000
▽幕張メッセ Cホール…5500
▽釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ…6000
▽さいたまスーパーアリーナ…2万1000
▽陸上自衛隊朝霞訓練場…800から3000
▽霞ヶ関カンツリー倶楽部…2万5000
▽江の島ヨットハーバー…3600
▽伊豆ベロドローム…3600
▽伊豆MTBコース…1万1500
▽富士スピードウェイ…2万2000
▽福島県営あづま球場…1万4300
▽横浜スタジアム…3万5000
▽札幌ドーム…4万1000
▽宮城スタジアム…4万9000
▽カシマスタジアム…4万
▽埼玉スタジアム…6万4000
▽横浜国際総合競技場…7万2000

小池知事「感染防止対策の徹底 引き続きお願い」

会談のあと東京都の小池知事は都庁で記者団に対し「国民・都民の不安があり、医師会から提言もある。都民の命と健康を守る立場から、オリンピックはもとよりパラリンピックまでの期間を通して安全な環境で開催する必要がある。引き続き、安心安全な大会の開催に向けて関係者と緊密に連携していくことを確認した」と述べました。

大会をめぐっては、政府の分科会の尾身会長など専門家の有志が「無観客が望ましい」とする提言を出しているほか、東京都医師会などは感染状況によっては無観客や中止とすることも考えるべきだなどとする意見書を出しています。

これについて小池知事は「感染状況や医療の状況について急激な変化があった場合には、速やかに5者協議を開催して無観客も含めて検討する。尾身先生をはじめとする有志の方や東京都医師会が言っていることと重なると思う」と述べました。

そして、大会に向けて感染をどう抑え込むかについては「また逆戻りになることは誰も望んでいない。医療提供体制は確保しているが感染防止対策の徹底を引き続きお願いしていく」と述べました。

「無観客開催望ましい」提言まとめた専門家の1人は

東京オリンピックについて「無観客開催が望ましい」などとする提言をまとめた専門家有志の1人、国際医療福祉大学の和田耕治教授は「感染状況がある程度落ち着いている今の段階で、厳しい制限を行う判断が難しかったということなのかと思う。ただ、今後、東京などでは人流の増加に伴って、7月以降に感染が急拡大するおそれがある。状況が悪化すれば無観客を含めて対応を検討するとしたところについては、私たち専門家の提言を受け入れてもらった部分だと考えている」と述べました。

そのうえで「感染状況は1週間から2週間で大きく変わってしまう。状況がどう悪化すれば開催の在り方をどうするのか、どう対策を行うのか、事前に具体的な検討を行ってほしい。対応の遅れは感染拡大や亡くなる人の数の増加に直結してしまう。とにかく状況に応じて判断が遅れることのないよう対応を徹底してもらいたい」と訴えました。

都医師会長「無観客 聞き入れてもらえず残念」

東京都医師会の尾崎治夫 会長は診療の合間にテレビのニュースで確認し「無観客ということを聞き入れてもらえず、残念だ。1万人を上限とすると聞いてできるような気分になるかもしれないが、オリンピックにはいくつもの競技会場があり相当数の人が動き回ることになる。観客を入れることについては慎重に判断すべきだったのではないか」と述べました。

東京都医師会や都内の地区医師会などは、開催都市の医療を守る立場から開催するのであれば無観客での開催を求めるなどとする意見書を提出していました。

尾崎会長は「今後、緊急事態宣言が出された場合は無観客を含めて対応するとあるが、そもそも緊急事態宣言が発動されるタイミングには幅があり、感染者数など具体的な数字を示して検討していくべきだ」と話していました。

丸川五輪相「安全安心な大会の実現に準備進める」

丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は記者団に対し「私からは感染防止のためのルールをまとめた『プレーブック』に示された水際対策の強化などについて、すべてのアスリートと大会関係者がしっかり理解し順守するよう改めて周知徹底をお願いした。大会まで残り1か月となったが引き続き5者で緊密に連携し、安全安心な大会の実現に向けて準備を進めていく」と述べました。

そのうえで「大会期間中に緊急事態宣言が発令されるような場合には無観客とすることも含めて検討するということで、東京都と組織委員会からはその際には5者協議を開きたいという要望があった。組織委員会からは宣言発動時や、まん延防止等重点措置を適用した際の措置の内容を踏まえた対応を基本とすることが示された」と説明しました。

また、観戦チケットに再抽せんが必要になるものがあることについて「楽しみにしていた方には本当に申し訳ない。コロナ禍で開く非常に厳しい状況で限られたキャパシティーの中で大会を開催することに、ご理解をいただきたい。ネットなどを通じた応援でアスリートを励ましていただければと思う」と述べました。

上限に達しているチケット 再抽せんに

組織委員会によりますと、東京オリンピックの国内の一般向け観戦チケットは、大会の1年延期に伴って払い戻された分を除き364万枚が販売されています。

これに学校連携観戦チケット59万枚やスポンサーなど関係者向けのチケットを合わせると500万枚近くが販売されているということです。これはすべての競技会場の収容人数の42%にあたります。

チケットの販売状況は「セッション」と呼ばれるチケット販売の単位ごとに販売状況にばらつきがあり、組織委員会は今回決定した観客の上限となる1万人や収容定員の50%に達するセッションは全体の1割余りで、8割以上は上限に達していないことを明らかにしました。

そのうえで組織委員会は、1万人や収容定員の50%に達するセッションは再抽せんを行うことを決め、これによって一般向けチケットは364万枚から272万枚まで減る見通しだということです。

対象となるセッションについては今月23日に公表するということです。

また、開幕が来月に迫っていることから上限に達していないセッションを含めてチケットの追加販売は行わないことも決め、観戦に行けなくなったチケット購入者が正規のルートで転売できる「公式リセールサービス」も断念するということです。

チケットを持っている人で希望する場合は払い戻しにも応じます。

さらに武藤事務総長は、パラリンピックを含めた東京大会でのチケット収入を去年12月公表の予算でおよそ900億円と見込んでいましたが「パラリンピックがまだ決まっていないので厳密には計算できないが、おそらく半分を下回る状態になる」という見通しを示しました。

一方で、東京パラリンピックについては国内の一般向け観戦チケットが77万枚販売されていて、これに学校連携観戦チケットやスポンサーなど関係者向けのチケットを合わせた全体の販売数は、競技会場の収容人数の42%に上っているということです。

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