札幌 市街地でクマが出没 襲われた4人けが クマは駆除

18日朝早く、札幌市東区の市街地にクマが出没し、警察によりますと、4人が襲われて重軽傷を負いました。
クマは午前11時すぎに同じ東区内で猟友会によって駆除されました。

18日午前3時半ごろ、札幌市東区北31条東19丁目の路上で「クマが南の方向に走っていた」と近くの住民から警察に通報がありました。

付近ではクマを目撃したという通報が午前10時までに30件以上相次いだということです。

警察によりますと、午前6時前、最初に目撃された場所から南へおよそ1キロほど離れた札幌市東区北19条東16丁目付近で70代の男性と80代の女性が次々に襲われて軽いけがをしました。

ほかにも、40代の男性2人がそれぞれ別の場所で襲われ、このうち1人はろっ骨を折るなどの大けがだということで、けがをした人は合わせて4人となりました。

警察などが追跡を続ける中、クマは半径2キロ余りの範囲を8時間近くにわたって歩き回りましたが、午前11時すぎ、東区の丘珠空港付近の茂みにいたところを猟友会のハンターに駆除されました。

駆除されたクマは、体長がおよそ1メートル60センチで体重は158キロあり、5歳から6歳のオスだということです。

今回、出没した現場はいずれも札幌市営地下鉄東豊線沿線の住宅や商業施設が建ち並ぶ市街地です。

この影響で、一部の学校は休校などの措置をとったほか、丘珠空港を発着する8便が欠航しました。

札幌市によりますと、市内でクマによるけが人が出たのは、平成13年に南区の山中で起きた死亡事故以来、20年ぶりだということです。

丘珠空港のNHKカメラにクマの姿

18日午前8時すぎ、札幌市東区の丘珠空港に設置されたNHKのカメラでは、クマが滑走路の周辺をゆっくりと歩いたり、突然、走り出す様子が確認できました。

クマは、その後、敷地内の柵を乗り越え、姿が見えなくなりました。

襲われた男性「クマがのしかかってきた」

札幌市東区北19条東16丁目に住む70代の男性は18日朝6時前、ごみ出しをしようとしたところ自宅前でクマと鉢合わせになり、背中などを爪でひっかかれて軽いけがをしました。

クマは建ち並ぶ住宅の隙間をすり抜けるようにして突然、現れたということで、男性は「クマが自分の体を踏み越えようとのしかかってきて、爪を立ててきた。病院で手当てを受けたが、出血がまだ止まらない」と話していました。

目撃した男性「自分が襲われていたかも」

クマを目撃したという男性は「外を見たら庭にクマがいて驚いた。正面から家に向かってきたら、窓を割られるんじゃないかと思ったが逃げていった。クマの体長は2メートルなかったと思う。ゴミを捨てに外に出ていたら、自分が襲われていたかもしれない」と話していました。

クマが駆除も今後の出没を心配する声

クマが駆除された札幌市東区丘珠町の住民からは安どする声のほか、今後の出没を心配する声も聞かれました。

このうち、クマの出没を受けて規制線の外に避難していたという80代の男性は「知り合いから心配する電話がたくさんありました。駆除されたと聞いてほっとしています」と話しました。

近所の50代の男性は「駆除の際に流れ弾が来るかもしれないと警察が注意を呼びかけていました。今回の1頭だけで済む話ではなく、今後どうすればいいのか」と話していました。

また70代の男性も「近くには小さい子どもがいる家もあるので心配でした。ここはクマが共生できる場所ではないのに、どうして出てきてしまったのだろう」と話していました。

札幌市 小中学校などで臨時休校も

札幌市教育委員会によりますと、児童や生徒の安全を確保するため札幌市東区にある小学校9校と北区にある中学校1校の合わせて10校で臨時休校の措置をとったということです。

市によりますと、休校を決めた学校にすでに登校した児童や生徒については迎えに来た保護者や、教員に見守られながら下校しているということです。

丘珠空港 計8便が欠航

国土交通省東京航空局丘珠空港事務所によりますと、札幌市東区でクマが出没し、空港の敷地内にも進入した影響で丘珠空港では午前8時半からおよそ3時間滑走路の運用を制限しました。

この影響でHAC=北海道エアシステムによりますと、丘珠空港と函館空港や釧路空港それに青森県の三沢空港を結ぶ合わせて8便が欠航となりました。

クマの出没 昨年度は過去最多 6月は多くの情報

環境省によりますと、クマの出没に関する情報は昨年度1年間に速報値で全国で2万870件、寄せられたということです。

全国の統計を取り始めた平成21年度以降で最も多く、2万件を超えたのは初めてです。

ただ、北海道については出没件数は公表されておらず、この統計には含まれていません。

また、昨年度までの5年間をみますと、全国でのクマの出没情報は1月から3月までは月に数十件から100件ほどですが、4月は500件前後、5月は1600件から2000件ほどと急増し、6月になると3000件前後に達しています。

6月は、1年を通してみても、冬眠前の10月や11月より多くの出没情報が寄せられている年が目立ち、注意が必要です。

北海道大学 金川名誉教授「クマの生活圏との境界線があいまい」

ヒグマの生態に詳しい北海道大学の金川弘司名誉教授は「市街地に出没したことから、好奇心の強い若いヒグマだと思う。山の近くまで住宅が建ち、クマの生活圏との境界線があいまいになっているが、クマがいる場所に住んでいるという自覚を持つことが大切だ」と注意を促しました。

そのうえで「人に危害を与えるクマは一度山に返してもまた戻ってきてしまうので、駆除はやむを得ない。対策としては、クマの餌となる放置された果樹を伐採したり、生ゴミを放置せず荒らされないようにすることだ」と話しています。

道立総合研究機構 間野専門研究主幹「今に始まった話でない」

ヒグマの生態に詳しい北海道立総合研究機構の間野勉 専門研究主幹は、今回のヒグマについて、映像から判断して若いオスと見られ、札幌市から北東に数十キロほど離れた山から石狩川を越え、水路などを伝ってやってきたと推測しています。

そのうえで「札幌市では5月末から6月はじめに北区の茨戸公園でクマが確認されていたが、その個体が南下して市街地までやってきたのではないか」と述べ、このクマが、すでに半月前から札幌市内に入り込んでいた可能性を指摘しています。

そして「重要なことは、クマが市街地の周辺までやってくるようになったのは、今に始まった話ではないということだ。ヒグマの個体数は増加し、生息域は年々拡大していて、今回の事態は、住宅地でもヒグマの侵入があり得ることを突きつけた」と警鐘を鳴らしました。

間野主幹は、もし市街地でヒグマと出くわしてしまった場合、背を向けず、刺激しないようにして静かに離れてほしいとしたうえで「市街地に侵入してからでは駆除などの対処が難しいので、そうなる前にリスクを減らす必要がある。生ゴミの管理や、ゴミステーションをクマが壊せないものにするといった対応を進める必要がある」と予防策の重要性を強調しました。