余ったワクチンをむだにしないために フランスの取り組みは

新型コロナウイルスのワクチンの中には、開封すると長期間保存するのが難しいものもあり、予約のキャンセルが相次ぐと、破棄せざるを得ないケースもでています。去年12月からワクチン接種が始まっているフランスでは、余ったワクチンをむだにしないための取り組みが行われています。

パリで取材を続けているヨーロッパ総局・古山彰子記者の解説です。

フランスのワクチン接種 どこまで進んでいる?

(記者)
フランスでは、去年12月からワクチンの接種が始まり、1回目の接種を終えた人が国民の45%を超えています。

ワクチン接種の対象者も、5月31日以降、18歳以上のすべての国民が対象になり、6月15日からは12歳から17歳も接種の対象となりました。

フランスのワクチン接種 どのような方法で?

(記者)
原則、予約制です。

それなのでフランスでも当日、都合が悪くなるなどして、予約をキャンセルする人も一定数いると言われています。

一方で、新型コロナウイルスのワクチンの中には、開封すると長期間保存するのが難しいものもあり、キャンセルが相次ぐと、ワクチンが余ってしまい、破棄せざるを得ないケースがでています。

余ったワクチンをむだにしないため、どうしている?

(記者)
当初フランス政府は、ワクチン接種会場の責任者に対して、ワクチンをむだにせずすべてを使い切るよう指示しました。

これを受けて、各会場では、ワクチンが余った場合は、予約をしていない人たちにも接種するようになりました。

すると、今度は、予約をしていない人たちが会場でキャンセル待ちをするようになり、現場では混乱も起きました。

希望者に対して、ワクチンが足りなくなるという事態になってしまったのです。

実際、私が、ことし4月中旬ごろに会場を取材した際には、順番待ちのために、何時間も待つ人の姿も珍しくなく、接種を受けられなかった人の中には、泣きだしてしまう人の姿もありました。
こちらの写真は、パリ市内の病院内に設けられたワクチン接種会場の前で、余ったワクチンを求めて並ぶ人たちの様子です。

接種会場での混乱を避ける取り組みは?

(記者)
接種会場での混乱を避けるため、政府は、ことし5月に、当日と翌日の予約枠に空きがある場合のみ、18歳以上のすべての市民がインターネットで予約できる対策を打ち出しました。

フランスには、もともと全国のほとんどの医療機関での診察の空き状況が調べられるサイトがあります。

自分のいる場所から一番近い医療機関、最短で予約が取れる医療機関などさまざまな条件で検索できて、とても便利で、私自身もパリで暮らすようになってから日常的に活用しています。

このサイトを使って、キャンセル待ちの予約ができるようになりました。
こちらはそのサイトの画面です。「当日」と「翌日」のボタンが緑色になっていて、いま予約できる状態であることを示しています。

予約サイト 具体的にはどう使う?

(記者)
このサイトには5月から「18歳から49歳までの優先的ではない市民(※基礎疾患がない、医療従事者などではないという意味)」というボタンが表示されるようになりました。

そこをクリックすると、住んでいる地域やその周辺で、予約枠に空きがある会場が表示されるようになりました。

最初の数日間は希望者が殺到して、空きができても数秒後には埋まってしまう状況が続きましたが、1週間も経つと比較的、予約ができるようになりました。

つまり、このサイトの導入で、余ったワクチンと希望者のマッチングがスムーズにできるようになったのです。

サイトの導入で 余ったワクチンの廃棄は減らせた?

(記者)
最初の1週間でキャンセル待ちをしていた人のうち、24万人がワクチンの接種を受けることができました。

フランス政府は、余ったワクチンの廃棄を大幅に減らすことができ、さらにその後、接種対象となる、より若い世代への接種も進めることもできたとしています。

新たな予約サイト 若いエンジニアによって次々に

(記者)
若いエンジニアたちが新たに予約サイトをたちあげる動きもでています。

フランスでは薬局でもワクチンの接種が受けられますが「Covidliste」というサイトは、薬局とワクチンを接種したい希望者をマッチングするというものです。

ことし3月にサイトが立ち上がったあとわずか3か月で3700件あまりの薬局などと、140万人を超える人たちが登録し、瞬く間に市民に広く活用されるサイトになりました。

また、4月に立ち上がった「ViteMaDose」というサイトでは、自分のいる場所の近くで、どの種類のワクチンの接種に空きがあるか表示され、予約を取ることができます。

いずれも若いエンジニアが立ち上げたサイトです。

政府もこれらのサイトを通じてワクチンの予約を行うことを推奨し、今では若い世代を中心に多くの人に知られ、活用されています。

フランスでは、余ったワクチンをむだにしないように、インターネットを積極的に使って、接種希望者とつないでいるのがとても印象的です