世界で広がる“ESG投資”

世界で広がる“ESG投資”
「環境・社会・企業統治」の頭文字を取った「ESG投資」。環境や社会的な課題への取り組みを重視して投資先を選ぶことで、いま注目が高まっています。

問題に挑戦!

「ESG投資」に関わる入試問題がこちらです。
問題
安定的な電気の供給は、現代生活を送るうえで不可欠ですが、どのような資源をどのような割合で電源として活用しているかは、世界各国の事情によって異なります。下のグラフ中のア~エは、日本・カナダ・アメリカ・フランスが2017年にどのような資源を電源として活用しているかを示しています。このうち、日本を示しているものを、ア~エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
(開智中学校 2021年 改題)
国によって、かなり違いがありますね。
答えは「イ」です。
グラフのいちばん左、赤色が石炭です。日本はおよそ3割と、アメリカとほぼ並んで石炭の活用が多いんです。

では、この石炭とESG投資がどうつながるのしょうか?

ESG投資と石炭火力発電

いま温室効果ガスの排出を減らす「脱炭素社会」への取り組みが進んでいます。
その中で、石炭の消費をどう減らすのかが課題になっています。
そこで国内の大手金融グループは一部の例外を除いて、「石炭火力発電」向けの融資を行わないなどの方針を明らかにしました。
これが「ESG投資」です。
環境や社会的な課題への取り組みを重視して投資先を選ぶ。
今回はそのESG投資について学びましょう!

世界で広がるESG投資

東京大学の高村ゆかり教授です。
ESG投資はいま、世界で急速に伸びているといいます。
高村さん
「(ESG投資は)全体の民間の投資額からすると、まだまだ割合が小さいけれども、伸び方がすごくて、特にクリーンエネルギー分野に、すごく大きなお金が流れています」
ESG投資の規模は年々増え、2018年には世界でおよそ3200兆円に達したといいます。
その背景は何でしょうか。
高村さん
「こうした流れは世界的にも強くなっていて、これにうまく企業が対応できないと、市場も変わり、社会の評価も変わる中で、企業が稼ぎ続ける、収益を上げ続けることが難しくなるのではないか、そういう認識が金融や投資家の中に生まれてきているということだと思います」

気候変動とESG投資

そもそもESG投資が世界で広がり始めたのは2006年。
当時の国連のアナン事務総長が、ESGを考慮した「責任ある投資」を提唱したことがきっかけでした。
そして2015年には、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が採択され、脱炭素社会に向けた動きが加速。ESG投資にはずみがついたといいます。
実際に投資の流れにどんな変化が起きているのでしょうか。
高村さん
「ノルウェーの政府の年金基金が石炭火力発電を含む石炭関連の事業が30%以上を占めている企業については、持っていた株式をすべて売却。将来のよりよい社会を作るための年金だと思いますから、そうした年金基金などが、化石燃料、とりわけ石炭関係の事業に大きく依存している企業から株式を売却するというのがひとつあります」
このESG投資は、日本でも2016年からの2年間でおよそ4倍と伸びています。
「りそなホールディングス」や「日本生命」がESG投資に力を入れるなど、多くの企業で広がっています。
さらに今後、国内では、多発する自然災害への対策を進める企業への投資が増えるのではないかと高村さんはいいます。
高村さん
「洪水で工場が操業停止になったり、人の命が失われたりして、気候変動の影響が、事業や資産に実際に影響を与えるようになっていて、さらに今後の予測では、もっと影響を与えるようになるかもしれないとすると、企業にしっかり気候変動の将来の影響も考えて準備してもらう。例えば、洪水がよく起こるような場所に工場を立地しているとすれば、次に工場を建て替えるときには、違う場所に移すという経営方針が必要じゃないかとかですね」

社会を変える!?ESG投資

ESG投資は、社会をどのように変えていくのでしょうか?
高村さん
「社会経済の活動のいちばん大きな担い手である企業に、事業の中にしっかり変わっていくべき目標を認識してもらって、それを織り込んで経営してもらう。それが最終的には社会にとっても、温暖化の影響のない持続可能な社会の実現になると同時に、金融や投資家の人たちにとっても、安定的な、常に稼げる、中長期的に見ても稼げる企業を作っていく、ということになると思います」
ESG投資は今後も伸びていくことが予想されますが、課題もあります。
ひとつは新しい分野のため、国際的に統一した評価基準がまだありません。ESGをうたっていても、本当に環境や社会に配慮している企業や事業なのかを見極めることが大切です。
また個人で投資を行う場合は、損失のリスクも考えて自己責任での判断が必要です。
ESG投資による経済活動が、私たちが暮らす環境や社会をどのように変えていくのか、注目したいと思います。
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