英 インド型変異株拡大でコロナ対策規制撤廃 約1か月延期

イギリス政府はインドで確認された変異ウイルスによる感染が国内で急速に拡大しているとして、新型コロナウイルス対策の規制をほぼ撤廃する計画をおよそ1か月延期すると発表しました。

イギリスでは首都ロンドンのあるイングランドで新型コロナウイルス対策として続けてきた規制をことし3月から段階的に緩和していて、6月21日にはナイトクラブの営業などほぼすべての規制が撤廃される見通しでした。

しかし5月以降、インドで確認された変異ウイルスのデルタ株が急速に拡大し、ここ1週間ほどは一日の感染者が7000人を超える日が続いています。

これを受けてジョンソン首相は14日、規制の撤廃を7月19日に延期すると発表し「規制を撤廃すれば、ウイルスがワクチン接種のスピードを上回り、数千人が犠牲になる事態が現実に起こりうる。ウイルスは根絶できず共生しなくてはならない」と述べて理解を求めました。

イギリスの保健当局はこの変異ウイルスの感染力はイギリスで確認されたアルファ株よりも強いとしていて、現在、新たな感染の90%以上を占めていると分析しています。

一方でインドで確認されたデルタ株に対してはワクチンの2回接種は有効だという見解を示していて、7月19日までに18歳以上の国民のおよそ3分の2に2回の接種を完了させるため、接種の間隔を短縮するなど対応を急ぐ方針です。

デルタ株に置き換わり進む

イギリスでは新型コロナウイルスの1日の感染者数がことし初めには一時、6万人を超える深刻な状況になりましたが、外出や経済活動の厳しい制限を続けた結果、4月から先月にかけては日によっては1000人台となるところまで減少しました。

ところが、今月に入ると増加傾向が強まり、ここ数日は一日に7000人を超える日が続いています。

背景にあるのが、インドで確認された変異ウイルス、デルタ株の感染拡大です。

イギリス政府は、ロンドンを含むイングランドでは、4月初めまでは新規感染者のほとんどがイギリスで確認されたアルファ株でしたが、4月後半から徐々にデルタ株が増え始めたとしています。

そして、先月半ばにはアルファ株の割合を上回り、今月の初めには96%がデルタ株になったとしていて、ほぼ置き換わった形になっています。

専門家「2回のワクチン接種を急ぐ必要」

海外の感染症に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、ワクチンの接種が進むイギリスでインドで確認された変異ウイルスのデルタ株が広がりつつあることについて、「インドはかつてイギリスの植民地だったこともあり、両国の交流は深く、大勢の人の入国によって感染が広がった可能性がある。ただ、このデルタ株に感染して重症になった人は、ワクチンを打っていない人か1回のみの接種の人が多いと聞いている。イギリスの医学雑誌に最近、掲載された論文でもファイザー社製のワクチンを2回接種すれば、デルタ株に対しても7割から8割近くで有効性があったとされているので変異ウイルスへの対策には2回のワクチン接種を急ぐ必要がある」と話していました。

日本での注意点について、「2回のワクチン接種が完了するまでは、入国者に対する水際対策が重要となるが、すでに国内でもこの変異ウイルスの小規模なクラスターが確認されている現状もあり、どこまで広がっているのか、監視を強化する必要がある」と指摘しました。

また、東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据えた対策として、「開催時には国内でもデルタ株がすでに広がっている状況も想定され、人の流れが増えるとさらにクラスターが起こりやすくなることも考えられる。開催期間中もできるだけ人の流れを減らす対策が重要だ」と話していました。