コロナ影響 小学校の運動会の4割近くが中止や延期 東京23区内

新型コロナウイルスの影響で東京23区の小学校では今年度、今月までに行う予定だった運動会について、40%近くの学校で延期や中止の対応をとったことが分かりました。
専門家は「延期や中止の理由を丁寧に説明し、運動会に代わる発表などの場を設けてほしい」と指摘しています。

4月に東京都などに出された3度目の緊急事態宣言が続く中、NHKでは東京23区の区立小学校合わせて823校について、今年度の運動会の実施状況をそれぞれの区の教育委員会に取材しました。

今年度の運動会を今月までに実施する予定だった区立小学校は458校で、このうち感染拡大への懸念から延期や中止を決めた学校は176校と、38%を占めることがわかりました。

一方、6月までに運動会を予定通り実施したのは62%に当たる282校でしたが、密集を避けるために学年ごとに分けたり、体が接触する種目はなくしたりしたほか、開催時間の短縮や保護者や来賓を呼ばず児童だけで行うなど、すべての区で感染拡大前と比べて、規模を縮小したり、制限したりする形で実施するよう求めたということです。

また、昨年度の同じ時期に予定した運動会の実施状況についても聞いたところ、全体の60%を占める少なくとも495校が延期や中止にしていて、2年度にわたり多くの学校で新型コロナの影響を受けていることが分かりました。

新宿区教委「感染拡大防ぎたい面もあるが非常に苦しい」

新宿区では、29の区立小学校のうち20の学校で、今年度の運動会を今月までに行う予定でしたが、実施したのは3校にとどまり、17校は延期しました。

区内では、学校でのクラスターは起きていないものの、家庭内での感染が確認された児童もいる状況で、区の教育委員会は緊急事態宣言が出されている中での運動会などの学校行事の実施について、すべての学年が一堂に集まる開催はせずに分散させ、宣言の期間中は保護者の参観を行わないよう文書で各学校に通知しました。

新宿区教育委員会 教育指導課の荒井亮宏課長は、「本来は、子どもたちがいちばんいい形で日ごろの活動を発表できる形が望ましかった。保護者や地域の方にも見ていただきたい思いもあったが、何としても感染拡大を防ぎたい面もあり、運動会の実施に制限があることは非常に苦しい思いだ」と話していました。

また、昨年度も6月までに行う予定だった25の小学校で運動会が中止になるなど影響が長期化していることについては、「子どもたちにとって、学校行事を通して学ぶことはかなり大きく、影響がないとは思っていない。さまざまな行事を出来る限り行うよう努力することも大切だと思っている」と話していました。

専門家「中止や縮小について丁寧な説明も」

学校運営に詳しい宮城教育大学の本図愛実教授は、「運動会は、子どもにとっては、ほかの児童と競い合う中で達成感を得たり、悔しさを感じて、乗り越えていく力を養ったりする貴重な場であるとともに、保護者や地域の人から認めてもらう場でもある学校行事であり、2年連続でなくなれば影響は大きいと思う」と指摘しています。

そのうえで、「子どもたちの安全を考えて運動会を中止したり、縮小したりするのは理解できるが、子どもにとっては『なんでオリンピックはあるのに運動会はないんだ』と感じても当然だし、直接声を上げなくても行き場のない、もやもやとした気持ちはあると思う。認識の差が出やすいところなので、教育委員会や先生たちはそうした思いに寄り添い、子どもたちの発達段階に応じて、丁寧に説明をしたり、運動会に代わる発表や活動の場を設けたりと工夫してあげてほしい」と話していました。