ワクチン接種 さいたまの病院 独自工夫で目安の2倍以上に

新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、さいたま市の病院では高齢者を誘導する専門のスタッフを置くなどさまざまな工夫で、1時間当たり国の目安の2倍以上の人数の接種を行っています。

さいたま市の埼玉精神神経センターは、先月31日から、高齢者を対象にワクチン接種を始めました。

この病院では、1か月およそ6000人の患者が訪れますが、通常の診療を行いながら、効率的にワクチンの接種を進めるためさまざまな工夫を行っています。

具体的には、ワクチンの原液を薄めるなど接種の準備に専従の薬剤師を配置することや、通常の診療に影響が出ないよう接種を担当する医師は1時間ごとに交代するシフト勤務を組んで対応しています。

また、案内専門のスタッフを配置し、問診から接種会場などに案内します。

医師1人が1時間当たりに接種する人数について国は、集団接種では20人を想定しているとしていますが、この病院では最大50人に接種しています。そして、病院全体で1日300人に接種できているということです。

接種を受けた70代の男性は「とてもスムーズで満足しています。早く接種したかったので安心しました」と話していました。

埼玉精神神経センターの丸木雄一センター長は「通常のワクチンよりも相当なマンパワーが必要だが医療の使命と考えてやっている。ことしいっぱいは続くと思うがコロナの流行が抑えられるのは間違いないので、効率化の取り組みが、今、前線で頑張っている病院の助けになればいいです」と話していました。

ワクチン接種効率化 4つの工夫

さいたま市の埼玉精神神経センターのワクチン接種では、効率化のために主に4つの工夫をしています。

1つ目は、事前準備に専従の薬剤師を置くことです。
接種を行うにはワクチンの原液を生理食塩水で希釈して人数分の注射器に入れて用意する必要があります。接種を行う月曜から土曜まで3人から4人の薬剤師が、5時間かけて300人分のワクチンを用意しているということです。薬剤師は、「国や県から届く注射器は届くたびに仕様が異なることもあり、間違いのないように複数で確認しながら慎重に作業している」と話していました。

2つ目は、受け付けの効率化です。
接種を受ける人は、病院の敷地内で、接種に必要な書類を、バインダーにまとめてもらいます。複数の看護師を配置し、書類に不備がないか手分けしてチェックすることで、1人ずつ窓口に並ぶ場合に比べスピードアップを図りました。

3つ目は動線の効率化です。
受け付けを済ませた人は、病院内の接種会場に向かいますが、迷わないよう動線は最短距離で1本にしています。さらに、足が不自由だったり、耳が聞こえづらかったりする高齢者には専従のスタッフを配置して、案内しています。

4つ目は、接種にあたる医師のローテーションです。
常勤の医師21人の中で、接種を担当するのは1人、時間は1時間以内としています。通常、病棟を回っている時間などをうまく接種に充てることで、診療に影響が出ないようローテーションを組むことができています。

この日、担当していた医師は1人で1時間以内に予定どおり50人の接種を手際よく行っていました。