改正国民投票法成立「最低投票率」「広告規制」専門家の見方は

憲法改正の国民投票で商業施設に投票所を設けることなどを柱とした、改正国民投票法は、参議院本会議で、自民 公明両党と立憲民主党などの賛成多数で可決され、提出からおよそ3年を経て成立しました。憲法学の2人の専門家に、今回の法律成立についての受け止めや、審議の過程で議論された「最低投票率」や「広告規制」などの課題について聞きました。

九州大学 南野教授「必要な法整備と評価 課題残されている」

憲法学が専門で九州大学の南野森教授は「憲法改正に向けた一歩になると警戒する声があるのは理解できるが、改正と手続きの議論は分けて冷静に考える必要があり、法的な観点から見れば必要な法整備であると評価できる。一方で、今の段階では手付かずのテーマもあり、課題は残されている」と話しています。

また、広告規制などについて「施行後、3年をめどに法制上の措置を講じる」と付則に盛り込まれたことについて南野教授は「規制がなければ、資金のある人や団体が一方的に意見を広めることができてしまう。憲法改正の賛否について国民の判断がゆがめられてしまう危険性があり、ゆゆしき問題だ」と指摘しています。

最低投票率の導入「検討に値する」

一定の投票率を満たすことを条件とする「最低投票率」制度を設けるべきかどうかについては「憲法学者の間でも賛否両論があり、一概にどちらが正しいとは言えない難しい問題だ。それでも、あまりに低い投票率で国民投票が成立するのは非常に問題があり、最低投票率の導入は検討に値すると思う」と話しています。

そのうえで南野教授は「広告規制の問題は10年以上前から指摘されてきたにもかかわらず議論が進んでおらず、このまま憲法改正を国民投票で決めることは非常に危険だと懸念している。国会が必要な検討をきちんと行うのか、しっかり見ていく必要がある」と話していました。

関西学院大 井上教授「投票機会拡大 非常によい改正」

憲法学が専門で関西学院大学の井上武史教授は、「国会は、主権者である国民が直接、意思表明できる国民投票がいつ行われてもよいよう、法律を整理しておく責任を負っている。改正まで3年かかったことは問題だが、投票の機会を拡大するものであり、内容としては非常によい改正だ」と話しています。

また、広告規制などについて「施行後、3年をめどに法制上の措置を講じる」と付則に盛り込まれたことについて井上教授は「国民投票は候補者の競争である一般の選挙とは違うので、表現の自由はできるかぎり保障されなければならない。規制が国民の適切な意思表明に役立つかどうか、慎重に検討されるべきだ」と指摘しています。

最低投票率の導入「国民の意思表明の結果制約 慎重に議論を」

一定の投票率を満たすことを条件とする「最低投票率」制度を設けるべきかどうかについては、「低い投票率で改正の是非が決まるのは大きな問題だが、こうした制度の導入は国民による直接の意思表明の結果を制約することになり、相当慎重に議論する必要がある」と話しています。

そのうえで井上教授は「手続き法である国民投票法が障害になって憲法改正が制約されることはあってはならない。改正が必要なのであれば3年という期限にとらわれず、直ちに審議していつ国民投票が行われてもよいように準備しておくのが、憲法改正を発議する国会の責務だ」と話していました。