ワクチン接種 1人暮らしの高齢者など地域で支援 東京 葛飾区

高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種が進むなか、東京 葛飾区では周りの協力がえられず、1人で接種の予約が取りにくい高齢者などを、地域のネットワークを活用して支援する取り組みを始めました。

葛飾区は6月から、ワクチン接種の予約が取りにくい1人暮らしの高齢者などを支援するため、およそ400人いる区内の民生委員や、介護サービス事業者などに協力を依頼する通知を出しました。

通知を受けた葛飾区の民生委員の寺田恵子さん(61)は、ワクチンの予約で困っていないか高齢者の自宅を訪ねて話を聞いてまわっていて、11日は、1人暮らしの75歳の男性の自宅を訪れました。

寺田さんは、区の広報誌などを示しながら、かかりつけではなくても接種を受けられる診療所を紹介したり、近く予約が再開する予定の集団接種会場について丁寧に説明したりしていました。
男性は2か月前に引っ越してきたばかりで、周りに相談する人がおらず、近くの病院に問い合わせたところ予約が埋まっていて、困っていたということです。男性は、集団接種会場への予約を決めましたが、地理に不案内なため、1回目の接種は寺田さんが付き添うことになりました。

男性は「みんな接種しているのに自分だけしていないから焦っていました。本当に安心しました」と話していました。
このほか、寺田さんは接種を受けられるか不安を抱えていた72歳の女性の自宅も訪れ、ケアマネージャーに確認して、すでに予約が完了していることを伝えていました。

寺田さんは「1人では予約ができず、ワクチンのことさえよく分からずに暮らしている人もいます。まだまだ苦労している人がいると思うので、少しでもお手伝いできればと思います」と話していました。

区では、高齢者が自分で予約できるかどうかまでの把握は難しいことから、こうした地域のネットワークの活用を始めたということで、民生委員などから連絡を受けた場合は、保健所に連絡して予約が空いている医療機関を紹介しているということです。

葛飾区福祉管理課の吉田峰子課長は「予約枠は随時拡大に努めていますが、予約に困っている人を把握するのは難しい。接種したいという人を誰1人取りこぼさないように、さまざまな人たちの協力をえながら取り組んでいきたい」と話していました。

困っている人たちを取り残さないために

区は、多くの高齢者が家族や、かかりつけ医の支援を受けてワクチン接種の予約を行っているとみていて、家族などからの支援を受けられず、インターネットなどで自分で予約をすることも難しい高齢者に対しては、これまで区役所など、区内7か所で職員らが予約をサポートする取り組みを行ってきました。

ただ、まわりに知り合いがいないうえに、1人で体を動かすことが難しいなど、さまざまな事情で区役所などにも来ることができていない高齢者もいることから、区では、こうした人たちへの支援策として、日頃から地域でつながりのある民生委員などから情報を集約する方法をとることにしたということです。

約40%の高齢者 1回目の接種終える

葛飾区では、区内およそ200か所の医療機関の個別接種会場と、地区センターなど、7か所の施設での集団接種会場を中心に、高齢者のワクチン接種を進めています。

対象となる区内の高齢者は、およそ11万9000人で、
▽4月下旬から高齢者施設の入所者への接種を始めたあと、
▽5月11日からは、今年度中に75歳以上になる人たちへの個別接種を開始し、
▽5月21日には、その対象を65歳以上に広げました。

区によりますと、11日時点の速報値で、区内のおよそ40.2%の高齢者が1回目の接種を終えたということで、当初の計画を上回る早さで接種が進んでいるとみています。

7月末までの高齢者接種完了 課題は

区は、高齢者のワクチン接種を、当初、8月末をめどに終える予定でしたが、7月末までの高齢者の接種完了を目指すという政府の方針を受けて、計画を1か月前倒しできるよう調整を進めてきました。

このうち、集団接種については、地元の医師会と連携して、6月は接種回数を当初の計画のおよそ3倍に増やすなど、7月末までに接種を終えられる態勢が整ったとしています。

一方で、希望する高齢者全員の接種を終えるためには、トラブルなくスムーズに接種を進めていくとともに、地域の支援者などともつながりのない人たちをいかに把握し、予約につなげられるかが課題となっています。